
東北の山奥にある東村で、狩人として静かに暮らす少年ユル。双子の妹アサは、村の掟で牢に入れられたままです。「黄泉のツガイ」は、その日常が武装集団の急襲によって一日で崩れる物語です。
この記事では、偽アサの正体と両親の生死を答えから先に書いています。影森ゴンゾウの死、黒谷アキオの裏切り、西ノ村の本当の狙いまで、13巻分の流れを追えます。急ぐ方はQ&Aへ、順を追って読みたい方はネタバレあらすじへ。ネタバレ部分はすべて折りたたんであります。
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「黄泉のツガイ」あらすじ・ネタバレ
作品名:「黄泉のツガイ」
作者:荒川 弘
出版社:スクウェア・エニックス(ガンガンコミックス)
ステータス:連載中
巻数:既刊13巻(2026年9月時点)
連載媒体:月刊少年ガンガン
メディアミックス
TVアニメ
TVアニメ「黄泉のツガイ」は、2026年4月4日からTOKYO MX・BS11・群馬テレビ・とちぎテレビほかで放送されています。連続2クールの編成で、第1クールは全12話、第2クールは同年7月4日にスタートしました。アニメーション制作はボンズフィルム、監督は安藤真裕さん、シリーズ構成は高木登さん、キャラクターデザインは新井伸浩さん、音楽は末廣健一郎さんが担当しています。
第1クールの主題歌は、オープニングがVaundyさんの「飛ぶ時」、エンディングがyamaさんの「飛ぼうよ」で、どちらもVaundyさんが作詞作曲を手がけました。第2クールのオープニングは音田雅則さんの「back shot」です。キャストはユル役に小野賢章さん、アサ役に宮本侑芽さん、デラ役に中村悠一さん、ガブちゃん役に久野美咲さん、ハナ役に島袋美由利さん、影森アスマ役に石田彰さん、影森ヒカル役に山口勝平さん、御陵役に黒田崇矢さんが名を連ねています。
あらすじ ー 村の外に、知らない日本がありました
東北の山奥に、結界で隠された東村という集落があります。少年ユルはそこで弓と罠を使う狩人として育ちました。双子の妹アサは村の奥にある牢に入れられ、「おつとめ」と呼ばれる役目を負っています。理不尽だとは思いながらも、それが村の掟なのだとユルは受け入れて生きてきました。
ところがある日、自動小銃を持った武装集団がヘリで村を襲います。時代劇のような暮らしの中に、突然、近代兵器が撃ち込まれる。読者が最初に殴られるのはこの場面です。村人が次々に倒され、牢にいたはずのアサも、眼帯をつけた見知らぬ少女の手で首を刎ねられてしまいます。
その少女こそが本物のアサでした。ユルが十年以上「妹」だと信じて世話をしてきた牢の中の存在は、別のものが化けた偽物だったのです。村の入口に祀られていた岩の神「左右様」と契約を結んだユルは、村の番小者デラに連れられて外へ出ます。
山を下りた先に広がっていたのは、ビルと電車とスマートフォンがある現代の日本でした。両親はどこへ消えたのか。村は何を隠していたのか。自分たちに宿るという「封」と「解」とは何なのか。答えを探す旅は、ここから始まります。
「黄泉のツガイ」のネタバレあらすじ ー 偽アサの正体から、ゴンゾウの死と沖縄行きまで
【ネタバレ注意】「黄泉のツガイ」の最新話まで読む(タップで開きます)
偽アサの首が落ちた日(1巻・東村崩壊編)
影森家が差し向けた部隊が東村を襲い、ガブちゃんらが村人を無差別に撃ち倒します。牢の前に立った眼帯の少女は、そこにいた「アサ」を偽物だと言い切り、ユルの目の前でその首を刎ねました。偽アサの中身は、東村のキョウカが使役するザシキワラシのツガイ「キリ」です。ユルを村に縛りつけておくための役者として、十年間ずっと妹を演じ続けていました。混乱の中でユルを引っ張り出したのは、東村と下界を行き来する番小者のデラでした。デラの導きで村の入口の岩に触れたユルは、1200年以上祀られてきた男女一対のツガイ「左右様」と主従契約を結びます。守り神を連れたまま、ユルはヘリで村を脱出しました。
下界で会えた本物の妹と、「解」の代償(2〜3巻・影森家編)
下界に降りたユルは、デラと段野ハナに匿われながら両親とアサの行方を追います。影森ジンの誘いに乗って向かった先は、裏社会を束ねる影森家の屋敷でした。そこで十年ぶりに再会した本物のアサは、右目に眼帯をつけていました。幼い頃に東村の刺客に一度殺され、死者の国との境である黄泉比良坂へ至り、万物を解く力を持つツガイ「解」と契約して蘇った、というのがその理由です。右目はそのときの代償として失われました。ユルのほうは万物を閉じる力「封」を授かる資格を持っていますが、覚醒には自分も一度死ぬ必要があり、まだ手にしていません。夜と昼を別つ双子として生まれた二人は、その力ゆえに複数の勢力から狙われ続ける立場にありました。
イワンの刃が奪ったもの(4〜8巻・倉庫街決戦編)
デラの弟である田寺ケンとの衝突を経て仲間を増やす一方、影森アスマの伯父・新郷ハヤトが動き始めます。ハヤトの狙いは影森家の乗っ取りと、ユルに宿る「封」の力でした。彼が雇ったのが、空間を切り取って入れ替えるツガイ「マガツヒ」を操る与謝野イワンです。イワンは東村を蹂躙し、過激派と通じていた祈祷師ヤマの首を刎ね、子どものアザミや偽アサを人質に取りました。倉庫街での救出戦は、影森家当主ゴンゾウまで巻き込む大乱戦になります。ユルはイワンから両親の首を刎ねたと挑発されながらも耐えて戦いましたが、取り逃がしてしまいました。決着がついたのは別の場所で、口を封じるためにイワンが雇い主ハヤトを本尊の風神雷神ごと真っ二つに斬り捨てています。
影森家に潜んでいた内通者(9〜10巻・西ノ村始動編)
ハヤトの死後、影森家に仕える黒谷四姉弟の三男アキオが、実母である小野ミナセの連絡を受けてアサを強襲します。アキオの帰属先は、400年前に滅んだはずでダムの底に生き延びていた第三の勢力、西ノ村でした。拘束されたアキオのツガイ「ヤマノカミ」には粘菌の爆弾が仕込まれており、それが炸裂して庭師の川井が死亡し、アキオは逃走します。下界の東村勢力が集まった場には西ノ村の醍醐ヒデカツが襲いかかりますが、そこへ先代の番小者・田寺ロウエイが参戦して撃退しました。共通の敵が見えたことで、東村と影森家とデラたちは一時的な共闘関係を結びます。敵と味方の線引きが、この時点でもう一度引き直されました。
故郷との決別と、当主の死(11〜12巻・本家襲撃編)
西ノ村を探るためにユルたちが訪ねたのは、東村の長老ヤマハおばあでした。ヤマハは西ノ村の出身で、400年前から同じ姿のまま生き続け、東村の因習と双子の運命を裏で操ってきた張本人だったと明かされます。久しぶりに故郷へ足を踏み入れたユルが見たのは、双子を村を存続させるための兵器としか見ていない村人たちの視線でした。純然たる悪意を突きつけられたユルは、東村と完全に決別すると宣言します。その直後、西ノ村のリーダーである御陵がイワンを連れて影森本家を襲撃しました。ツガイ「天と地」を操る御陵との死闘の末、影森ゴンゾウは三男ジンをツガイの中に飲み込ませて逃がし、自身は命を落とします。
二度殺す、という計画(13巻の到達点)
当主を失った影森家で戦線を支えたのは、漫画家としても活動する長男ヒカルでした。ツガイ「黒白」を使った意表を突く攻めで、単身乗り込んできた御陵を追い返すことに成功します。市街地ではアサがツガイ「陰陽」の亜空間結界にイワンを閉じ込め、爆破工作員の椥辻らを拘束しました。この戦いの過程で西ノ村の狙いが明らかになります。運命の双子を一度殺して解と封に目覚めさせ、そのうえで二人をもう一度殺し、魂ころがしによって解と封を持つ新しいツガイを生み出す。それによってダムの底の結界を解き、西ノ村を完全復活させるという計画でした。東西の戦いは痛み分けで一区切りとなり、ユルとアサは人面蜘蛛のツガイに操られている母方の祖母・金城を頼って沖縄へ向かいます。物語は第2章の沖縄編に入りました。
この流れは1巻から13巻。ブックライブなら1巻から一気に読めます。
みさき疑問を解消(Q&A)
設定が細かい作品なので、読み始める前に確かめておきたいことも多いはずです。よく聞かれる疑問を先にまとめました。後半の3問はネタバレを含むため、たたんであります。
【⚠️ネタバレ注意】牢にいた「アサ」の正体は何だったのですか?
1巻でユルが妹として世話をしていたのは、東村のキョウカが使役するザシキワラシのツガイ「キリ」が化けた姿です。本物のアサは10年前に両親と村を脱出しており、牢の中身は最初から入れ替わっていました。ユルを村に留めておく人質役として据えられていたわけで、村ぐるみの嘘だったことになります。ユルの幼馴染だったダンジも同じくザシキワラシの身代わりで、東村がどれだけ徹底して双子を管理していたかが分かる仕掛けです。
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【⚠️ネタバレ注意】ユルとアサの両親は生きているのですか?
13巻の時点で生死は確定していません。父ミネと母ナギサは10年前にアサを連れて東村を脱出したあと消息を絶ちました。与謝野イワンは二人の首を刎ねたとユルに言い放っていますが、これは戦闘中の挑発として放たれた言葉で、裏付けはありません。イワンのツガイから両親の血の匂いがしたという描写もあり、失踪への関与は濃厚です。空間を切り取って入れ替えるマガツヒの能力を踏まえると、どこかへ飛ばされただけという読み方も残ります。ユルとアサが沖縄へ向かったのは、母方の祖母のもとに手がかりがあると踏んだためです。
→ 沖縄行きが決まるのは13巻。ブックライブで確認する
【⚠️ネタバレ注意】影森ゴンゾウは死亡したのですか?
12巻で死亡しています。西ノ村のリーダー御陵が単身で影森本家に乗り込み、ツガイ「天と地」による上空と地中からの挟撃を仕掛けました。ゴンゾウは百鬼夜行を操って正面から受けて立ち、三男のジンをツガイの中に飲み込ませて逃がしたうえで、自らは身を挺して倒れます。御陵はその後も生存していて、13巻では長男ヒカルの反撃を受けて撤退しました。当主を失った影森家は体制の立て直しを迫られ、逃がされたジンの安否も分からないままです。
→ この場面は12巻。ブックライブで確認する
みさきガチ評価・徹底考察

- 開始20ページで舞台が時代劇から現代日本へ反転する導入の切れ味
- 民俗学から取られたツガイごとに違う能力があり、戦い方が毎回変わる
- 三つ以上の勢力が動き、どの陣営も一枚岩ではない群像の作り
- 登場人物の精神的なタフさが徹底していて、感情の揺れを求める読者には淡々と映る
「みさきの総評」 ー 嘘の村を出た狩人が、消えた両親を探す旅。
設定の詰め方とキャラクターの立ち方が高い水準で揃った、荒川弘先生の現在地が見える一作です。
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「封と解」をめぐる三勢力の地図 ー 敵と味方が入れ替わり続ける理由

(ガンガンONLINE https://www.ganganonline.com/title/1327 より引用)
この作品で読者がつまずくのは、たいてい「誰が何を欲しがっているのか」の部分です。東村、影森家、西ノ村。三つの勢力が同じ双子を狙っていながら、目的も手段も食い違っています。関係を整理しておくと、途中の裏切りや共闘がすんなり飲み込めるようになります。
「封」と「解」は、なぜ一度死なないと手に入らないのか
百年に一度、日の出を境に生まれた男女の双子だけが、「封」と「解」の資格を持ちます。「解」はあらゆるものを解き放つ力で、結界を壊すことも、他人とツガイの契約を強制的に切ることもできます。「封」はその逆で、あらゆるものを閉じる力です。
問題は入手条件のほうです。この力を得るには、一度本当に死んで現世と死者の国の境である黄泉比良坂まで行き、そこで直接ツガイと契約して戻ってこなければなりません。アサはそれを済ませていて、代償に右目を失いました。ユルはまだ資格者のままです。
なぜ死ぬ必要があるのか。作中の描き方から読み取れるのは、この二つの力が生者の側に置かれた道具ではなく、黄泉の側にあるものだという線引きです。取りに行くには境界を越えるしかない。だから村は双子を殺したがるし、殺せる立場を確保するために牢に入れて管理してきました。
この条件が物語の緊張を作っています。ユルが「封」を手にする場面は、そのまま彼が一度死ぬ場面になる。読者はその瞬間を待ちながら、同時に来てほしくないとも思う。妙な引っ張られ方をする構造です。
左右様は天敵として造られ、そのまま最強の盾になりました
左右様は、東村の入口に1200年以上祀られてきた岩を本尊とする男女一対のツガイです。右様は豪快な男性形、左様は冷静な女性形で、二体そろって初めて機能します。
本来の役割は双子の抑え役です。右様はアサの「解」を、左様はユルの「封」を打ち消せます。暴走したときに止められる存在として置かれていたわけで、双子から見れば天敵にあたります。その天敵が、契約によってユル個人を守る側に回りました。
この逆転が効いています。もっとも危険な相手が、もっとも信頼できる護衛になる。ユルが無茶をすれば左右様は本気で止めにかかるし、危ないと思えば忠告もします。主従というより、対等に言い合える相棒として描かれているのが面白いところです。
読者からは「守り神のわりに苦戦が多い」という声もあります。マガツヒや手長足長のような搦め手に振り回される場面が実際に多いためです。ただ左右様の強みは真正面からの物理と耐久にあり、能力の相性で崩されるのは設計どおりだと考えると納得がいきます。
西ノ村が双子を二度殺したい理由
西ノ村は400年前に東村に滅ぼされたとされる勢力で、実際はダムの底の結界内で生き延びていました。御陵、醍醐、椥辻といった構成員の苗字が並ぶと、京都市営地下鉄東西線の駅名と重なることに気づく読者もいます。
13巻で明かされた彼らの計画は、単なる復讐より手が込んでいました。まず双子を一度殺して解と封に目覚めさせる。そのうえでもう一度殺し、魂ころがしという手法で解と封を持つ新しいツガイを生み出す。その力で結界を解き、村ごと現世に戻すという段取りです。
つまりユルとアサは、西ノ村にとって敵ではなく素材でした。この設定が判明したことで、それまで散らばっていた行動の意味がつながります。アキオを影森家に潜り込ませたのも、ヤマハおばあが400年かけて東村の因習を維持させたのも、双子を確実に生ませて確実に殺すための下ごしらえだったことになります。
登場人物・キャラクター分析
主要キャラクター
ユル

東村で育った金髪の狩人で、夜と昼を別つ双子の兄にあたります。弓と罠を扱い、戦いの場では感情より状況判断を優先する冷静さを見せます。電車やスマートフォンには戸惑う一方、初対面の相手の力量はすぐ見抜く、という妙なバランスの持ち主です。村人の悪意を知ってからは東村との決別を自分の口で宣言し、保護される側に留まらない道を選びました。
アサ

ユルの双子の妹で、右目に眼帯をつけた黒髪の少女です。幼い頃に東村の刺客に一度殺され、黄泉比良坂でツガイ「解」と契約して蘇りました。右目はそのときの代償です。兄への思い入れが強く、周囲が引くほどの独占欲を見せる場面もあります。影森家の保護を離れ、兄と二人で沖縄へ向かうことを自分の意志で決めました。
左右様(さゆうさま)

東村の入口に祀られていた岩を本尊とする、男女一対の最古参ツガイです。豪快な右様と冷静な左様がそろって力を発揮します。銃火器をものともしない耐久力と物理攻撃を備え、本来は双子の力を打ち消す抑え役として造られました。現在はユル専属のツガイとして、主戦力と護衛の両方を担っています。
影森ゴンゾウ(かげもりごんぞう)

裏社会に根を張る影森家の当主で、ツガイ「百鬼夜行」を操ります。柔らかい物腰の裏に、多数のツガイ使いを束ねてきた冷徹さと筋の通し方を持っていました。12巻で西ノ村の御陵に本家を襲われた際、三男ジンを逃がすために正面から立ちはだかり、命を落としています。
脇を固める重要人物たち
与謝野イワン(よさのいわん)

西ノ村に属する凄腕の剣士で、空間を切り取って入れ替えるツガイ「マガツヒ」を操ります。雇い主だった新郷ハヤトを口封じのために斬るなど、情に流されない冷たさが際立ちます。ユルの両親の失踪に深く関わっているとみられる人物で、13巻ではアサの結界に閉じ込められ、その後の消息が分かっていません。
デラ ー 田寺リュウ(たでらりゅう)

東村と下界をつなぐ番小者の家系、田寺家の現当主です。飄々とした行商人の顔で近づいてきますが、傭兵あがりの生身の戦闘力を持ち、銃器の扱いにも慣れています。ツガイを持たないまま最前線に立てる数少ない人物で、ユルが全幅の信頼を寄せる保護者役でもあります。
ハナ ー 段野ハナ(だんのはな)

デラと組んで動く番小者で、前髪がピンクのさばけた性格の女性です。犬と猫の姿をしたツガイ「前虎後狼」の追跡能力と、IT機器を組み合わせた索敵を得意としています。見た目に反してメリケンサックを握る武闘派でもあり、戦場でもほとんど動じません。
影森アスマ(かげもりあすま)

影森家の次男で、ツガイ「金烏玉兎」を操る策略家です。常に薄い笑みを浮かべ、何を考えているのか読ませません。伯父の新郷ハヤトが起こした騒動では、黒幕を問い詰める側に回りました。西ノ村への対処と影森家の実権をどう握るかを同時に計算している、油断ならない立場にいます。
御陵(みささぎ)
中華料理店「西家」の店主にして、西ノ村を率いるリーダーです。上空と地中から挟み撃ちにするツガイ「天と地」を操り、影森本家を単身で壊滅させました。作中でも最強格に位置づけられる相手で、表情をほとんど変えないまま淡々と戦います。子どもには穏やかに接する一面もあり、単純な悪役の枠には収まりません。
黒谷アキオ(くろたにあきお)
影森家に仕える黒谷四姉弟の三男で、ツガイ「ヤマノカミ」の主です。実母である小野ミナセが西ノ村の側にいたことから、最初から潜り込まされた内通者でした。アサを強襲して寝返り、拘束された先で仕込まれていた粘菌爆弾が炸裂した混乱に乗じて逃走しています。
ガブちゃん
影森家に身を寄せる小柄な少女で、巨大な顎を持つ戦闘特化のツガイ「ガブリエル」の主です。1巻では東村を襲った側にいて、多くの村人を手にかけました。普段は明るく気さくですが、戦いに入ると痛みも恐れも消えたように振る舞います。アサとの友情は本物で、序盤の印象からもっとも大きく変わる人物です。
ヤマハおばあ
東村の長老として村人に敬われてきた老女です。その正体は西ノ村の出身で、400年前から姿を変えずに生き続けてきました。双子を兵器として管理する東村の因習も、彼女が長い時間をかけて根づかせたものです。物語の背骨に手を入れ続けてきた人物として、11巻で存在の重さが一気に増しました。
読者の評価と反響 ー 「面白いのに感情が平坦」の正体
緻密さと反転に手応えを覚えた声
もっとも多く挙がるのは、序盤の反転に驚いたという声です。時代劇のような村の暮らしが数十ページで現代日本に切り替わる展開に、鮮やかに騙されたと書き込む読者が国内外にいます。しかも、そのどんでん返しが一度で終わらず、しかも答え合わせが早いという点も好意的に受け止められています。
設定の詰め方への評価も高いところです。ツガイを複数契約できる理由も、能力の効き方も、作中できちんと理屈が用意されています。ファンタジーだから、で押し切らない姿勢が信頼につながっているようです。「二体で一対」という制約が戦術の幅を生んでいる点を、能力バトル好きの読者が細かく語っています。
キャラクターの描き方についても、1巻で村人を殺した側だったガブちゃんが愛される存在へ変わっていく過程を挙げる声が目立ちます。派閥の利益で動く場面と、個人の意志で動く場面が描き分けられているため、大人の社会を覗いているような手触りがある、という感想もありました。
「感情移入できない」と書き込まれる理由
一方で、面白いはずなのに感情が平坦なまま進む、という戸惑いの声もまとまった数あります。登場人物の大半が精神的に成熟しすぎていて、傷ついたり折れたりする描写が少ないためです。故郷を焼いた相手と平然と会話し、十年愛した偽アサを偽物と分かった瞬間に切り捨てる。その割り切りが人間らしくないと映る読者がいます。
ただ、この特徴は欠点というより読み方の分かれ目です。主人公の感情の爆発や挫折からの成長を期待して開くと肩透かしになりますが、強い者同士が裏をかき合う頭脳戦として眺めると噛み合います。実際、感情移入はできないと書いたうえで、一歩引いた娯楽として楽しんでいると続ける読者も少なくありません。
買う前にこの性格を知っておくと、失敗が減ります。人間ドラマで泣きたい方には向きませんが、勢力図の読み合いと伏線の回収に手応えを求める方なら、13巻を一気に読み通せるはずです。
「黄泉のツガイ」を一番お得に読む方法・まとめ
閉じた村から始まって、開いていく物語
結界に囲まれた東村から始まるこの物語は、進むほどに閉じていたものがひとつずつ開いていきます。ユルの常識は下界で覆され、家族だと思っていた相手の正体が変わり、敵だと決めつけていた人間に筋の通った理屈があることが見えてくる。そのたびに読者は、いま誰の言葉を信じているのかを確かめ直すことになります。
設定が緻密なのに息苦しくならないのは、荒川弘先生の呼吸のうまさです。左右様の軽口や、ツガイたちの妙に人間くさいやり取りが、殺伐とした場面の合間に必ず挟まります。ツガイが力の道具ではなく心を持った生き物として描かれている点も、この作品に温度を与えています。
13巻で舞台は沖縄へ移り、物語は第2章に入りました。アニメも第2クールが走っている今は、追いつくのにちょうどいい時期です。謎解きと勢力争いを腰を据えて読みたい方、そして前作のあと次の荒川作品を様子見していた方に、まず1巻を開いてみてほしい一作です。
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