漫画「BABEL」打ち切りの真相とスプライトとの繋がり|真の八犬士は誰だったのか

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BABEL
コミック・トライアル作成のイメージ画像

石川優吾先生が描く、戦国スペクタクル巨編「BABEL」。

古典「南総里見八犬伝」をベースにしながら、織田信長が悪魔ルシファーとして君臨し、未来から銃火器を持つ少年が舞い降りるという、想像を絶する歴史改変ダークファンタジーです。この記事では、完結後も議論が絶えない「打ち切り説の真相」、過去作「スプライト」との衝撃的なリンク、そして「真の八犬士は誰だったのか」という最大の謎まで、徹底的に解き明かしていきます。

ネタバレを含む深掘り考察と読者のリアルな評判もまとめていますので、本作の「答え」を探している方は最後までお付き合いください。

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もくじ

「BABEL」あらすじ・ネタバレ

作品名:「BABEL」
原作:曲亭馬琴「南総里見八犬伝」(原案)
漫画:石川優吾
ステータス:完結
単行本:全10巻
単話:全83話
連載媒体:ビッグコミックスペリオール

メディアミックス

本作は、アニメ化・実写映画化・テレビドラマ化のいずれも行われていません。原作「南総里見八犬伝」自体は過去に幾度も映像化されてきた古典ですが、本作については耽美で残酷な描写や人間蠱毒・ひえもんとりといった独自の表現を多く含むため、紙と電子書籍という漫画ならではの形でしか味わえない作品といえます。全10巻で完結しているため、結末まで一気に読み通せるのも魅力の一つです。

あらすじ ー 八つの宝珠が選ぶ、運命の戦士たち

時は戦国、永禄元年。南総里見領は妖婦・玉梓が引き起こす異常気象と、山下定包の侵攻によって滅亡の危機に瀕していました。領地と領民を救うため、里見家の姫・伏姫はただ一人、比叡山へと向かいます。

山中で待っていたのは、千日回峰行を成し遂げた「神の狗」八房。伏姫と契約を交わした八房は、敵将の首を捥ぎ取って里見家を救います。しかし玉梓の呪いに蝕まれた八房は怪物と化し、若き農民・犬塚信乃の手で介錯されることになるのです。

直後、伏姫の身体から飛び散る八つの宝珠。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字を宿したそれらは、選ばれし「犬士」の元へと向かいます。その一つ、「孝」の珠を授かった信乃は、僧侶ゝ大と共に、散逸した宝珠と仲間を探す旅に出ます。日ノ本を覆う闇、エウロッパから渡来した悪魔たちとの戦いの幕開けです。

「ネタバレ」あらすじ ー 古典が辿り着く、時空を超えた最終決戦

【ネタバレ注意】深掘りあらすじを見るにはここをタップ

呪われた里見家と犬士の覚醒

物語は南総里見領の崩壊から始まります。妖婦・玉梓の呪いを受けて怪物化した八房を、信乃は涙ながらに介錯。直後、伏姫の宝珠が飛散し、彼女自身は生死の狭間を彷徨う状態となります。村の少女・浜路を人質に取った玉梓を倒すため、信乃は単身で乗り込みますが追い詰められます。八房の御霊が呼び寄せた犬の群れと、降臨した伏姫の御霊によって、信乃は「孝」の宝珠を授かり犬士として覚醒。玉梓を退けたものの、宿敵は呪いで蘇り続け、戦いは終わりません。

佐倉城の人間蠱毒と現八の合流

宝珠を求めて辿り着いた佐倉城で、信乃は無敗の闘士・犬飼現八と出会います。現八は妹お駒を救うため戦い続けてきた男でした。城主の扇谷定正の正体は、人間の肉を喰らう悪魔「ベルゼブブ」。闘技場を舞台にした人間蠱毒が始まる中、現八は「信」の宝珠に選ばれて覚醒し、漆黒のハエの集合体である定正の本体を打ち砕きます。お駒は伏姫の導きで炎から脱出し、現八と共に比叡山へ合流します。

薩摩・屋久島の悲劇と小文吾の覚醒

場面は薩摩国へ。下男の小文吾は、矢傷を負った犬「ワンコ」を連れて屋久島へ流れ着き、隠れキリシタンの島民や宣教師フェルナン、琉球王国の王女・按司加那志と出会います。島津の役人によってフェルナンが火炙りにされ、追い詰められた小文吾はワンコから「悌」の宝珠を授かります。島津貴久の正体は悪魔「アモン」。圧倒的火力で犬士たちを苦しめる貴久に対し、按司加那志は自らの命を燃やして巨大な龍を喚び出し、軍艦を焼き尽くします。村雨丸とゝ大の真言で、ついに貴久は消滅しました。

諏訪に現れた未来人と玉梓の最期

桶狭間の戦いで信長が死人を操って勝利を収めた事実を知り、危機感を強めた犬士たちは「千里眼」を求めて諏訪へ向かいます。死人の徘徊する魔境で信乃たちを救ったのは、未来から来た童子・孫兵衛と相棒の対馬。銃火器を扱う彼らは「時間」と呼ばれる黒い水を渡って戦国時代へやってきた旅人でした。お市となって再来した玉梓との最終決戦では、急斜面から巨大な御柱を滑り落とす「神木落し」を実行。お市の軍勢を粉砕し、首を捥がれたお市に落雷が直撃して、宿敵との因縁に終止符を打ちます。

バベルの塔と魔王ルシファーとの最終決戦

淡海の対岸に出現した西洋建築の巨塔「安土城」。その正体は、信長が天へ挑戦するために築いた「バベルの塔」でした。座主の命で結成された信長包囲網。永禄3年11月3日、天下分け目の戦いが開戦します。孫兵衛を隊長とする犬士隊は、額蔵の手引きで城内へ突入。塔内では左母二郎が「智」の宝珠に、額蔵が「義」の宝珠に選ばれて覚醒します。一方、比叡山では浅井・浅倉軍の裏切りで焼き討ちが始まり、無の境地に達したゝ大と八房の御霊が囮となって伏姫の肉体を守ります。塔の頂上で、生き残った犬士たちは魔王ルシファーこと織田信長と対峙。時空を超えた最終決戦の結末は、ぜひご自身の目でお確かめください。

さいとうさん
八犬伝なのに、信長が悪魔で、未来から銃を持った子供が来るんですか…! 完全に予想外の展開ですね。
みさき
ふふ、そうなんです。でも、その「予想外」こそが本作の真骨頂です。古典の枠組みを保ちながら、聖書のモチーフとSF設定を大胆に流し込んだ石川先生の腕力は、この作品でしか味わえません。あらすじだけでも、本作がいかに常識破りかが伝わると思います。

ガチ評価・徹底考察

BABEL
画像
総合評価
( 3.5 )
メリット
  • 圧倒的な画力で描かれる、戦国の土臭さと悪魔の禍々しさが融合した美しいビジュアル
  • 古典「八犬伝」を西洋の悪魔とSFで再構築する大胆すぎる発想力
  • 過去作「スプライト」とのリンクで、石川優吾ワールド全体の壮大さを体感できる
デメリット
  • 9巻以降の急展開で、広げた風呂敷の畳み方に駆け足感が残る

「みさきの総評」 ー 古典×悪魔×SFを石川優吾の画力でねじ伏せた、賛否両論の問題作
8巻までの完成度は突出していますが、終盤の急加速に評価が分かれる怪作です。

完結後も議論が絶えない、三つの大きな問い

画像
「BABEL」© 石川優吾 / 小学館
(ビッグコミック https://bigcomicbros.net/work/6362/ より引用)

本作には、読者を悩ませ続ける三つの大きな問いがあります。なぜ終盤は駆け足になったのか、過去作「スプライト」とどう繋がっているのか、そして真の八犬士は誰だったのか。一つずつ正面から向き合っていきましょう。

なぜ9巻から急加速したのか ー 「打ち切り説」の真相

7巻までの本作は、息を呑むほどの濃度で進行していました。延暦寺での千日回峰行から始まり、佐倉城の闘技場で繰り広げられる人間蠱毒、薩摩での島津貴久との激闘、屋久島での隠れキリシタンと宣教師フェルナンの悲劇。一つひとつのエピソードが、それぞれ単独でも長編になりうる重量感を持って描かれていたのです。

ところが8巻で孫兵衛と対馬の未来人ペアが登場した瞬間から、物語のテンポは明らかに変質します。諏訪での玉梓討伐、信長包囲網の結成、比叡山焼き討ち、安土城突入、ルシファーとの最終決戦。これだけの大事件が、残り3巻足らずで一気に消化されていきました。読者から「打ち切りとしか思えない」「強引にまとめた」という声が上がるのは、この温度差を体感すれば当然の反応といえます。

ただし、これを単純な「打ち切り」と断じるには、いくつか引っかかる事実があります。本作は2019年9月から電子版のみへと連載媒体を移行しており、この時点で商業誌としての掲載スタイルに変化があったのは確かです。とはいえ電子掲載へ移行した後も連載自体は継続し、最終話までしっかり描き切られているため、いわゆる強制的な打ち切りとは性質が異なります。

むしろ注目したいのは、本作の作風そのものです。残酷で耽美な描写、人間蠱毒やひえもんとりといった生々しい儀式、そして悪魔と未来人が交錯する独自の構造は、商業的な広がりを最優先するなら避ける選択肢もあったはず。それでも作者がこの方向を貫いたことは、本作が連載開始時から「描きたいものを描き切る」という覚悟で進められていた証ともいえます。8巻までの完成度に満点を付けたい読者ほど、最終巻の圧縮感に裏切られた感覚を抱く構造になっている。最終決戦の象徴的な描写を「説明不足」と感じるか「神話的な余白」と捉えるかで、読後感は大きく変わってきます。

過去作「スプライト」との衝撃のリンク ー 二作品を繋ぐ「時間」という設定

本作中盤、突如として戦国の戦場に現れる未来人・孫兵衛と対馬。タブレット端末を操り、拳銃GLOCK26やM4カービンを構える彼らは、明らかに本作の作風から浮いた存在です。実はこの二人、石川優吾先生の過去作「スプライト」のキャラクターであり、両作品が地続きの物語であることが明かされる瞬間でもあります。

両作を繋ぐ最重要の設定が「時間」です。本作で繰り返し描かれる「地表を覆う黒い水」。これは単なる演出ではなく、その正体が時間そのものであるという衝撃的な設定が物語の根幹に組み込まれています。特定の条件を満たす者だけが認識でき、津波のように流れる時間を渡れば別の時代へとタイムスリップが可能となる。この概念は「スプライト」で提示された「時間の波」とほぼ同じものといえます。

孫兵衛は江戸時代の信濃国高遠藩・第三代藩主の嫡子で、実年齢250歳超え。対馬は西暦2009年から戦国時代へ降り立った現代人。二人は信長による歴史改変を阻止するため、時間を遡ってこの時代へやってきました。さらに孫兵衛は日吉神社の宮司から「犬江新兵衛」の名を授かり、「仁」の宝珠に選ばれて犬士の一員となります。未来人が古典の犬士に組み込まれるという、本作のジャンル横断ぶりを象徴する展開です。

「スプライト未読だと楽しめないのか」という不安の声もよく見かけますが、結論からいえば本作単独でも問題なく読めます。孫兵衛と対馬の正体や時間の概念は、作中で必要十分に説明されているからです。ただし「スプライト」を読んでいると、二人の旅の重みや前作で未消化だった謎の補完など、読みの解像度が確実に上がります。本作を気に入った方は、ぜひ「スプライト」にも手を伸ばしてみてください。石川優吾ワールド全体の壮大なスケールを実感できるはずです。

真の八犬士は誰だったのか ー 原作と異なるメンバー構成の謎

「結局、八犬士のメンバーは誰なのか」これは完結後も読者の間で議論が続く、本作最大の謎です。原作「南総里見八犬伝」とは異なるメンバー構成、駆け足の終盤、そして犬士ではないと否定される対馬の存在。整理しないとモヤモヤが残るこの問いを、丁寧に解きほぐしていきます。

最終決戦の安土城へ向かった犬士隊と、その他の関係者を整理すると、宝珠の持ち主は以下のように描かれます。「孝」が犬塚信乃、「信」が犬飼現八、「悌」が小文吾、「智」が左母二郎、「義」が額蔵、「仁」が孫兵衛、そして犬士たちを導く僧侶・ゝ大も宝珠に選ばれた犬士の一人です。さらに「神の狗」八房自身も犬士の一角としてカウントされる描写があり、最終的に犬士として明言されているのは七人と一匹という独自の構成になっています。残る宝珠については、原作八犬伝に登場する犬村大角・犬山道節に相当する位置づけと示唆されてはいるものの、本編で十分に描かれないまま物語は最終決戦へ突入しました。ここに「全員揃ったのか」という疑問が生まれる一因があります。

本作の犬士構成で最も独創的なのは、犬の八房自身が犬士の一角としてカウントされる描写があることと、未来人の孫兵衛が「仁」の宝珠を受け取る点です。これは「徳を成した者」を宝珠が選ぶという作中ルールに基づいた展開といえます。原作の血縁関係や象徴的な役割よりも、本作では「魂の徳」を基準に再解釈されている。だからこそ、人間ではない八房や、別時代から来た孫兵衛、そして僧侶のゝ大が選ばれるのは設定上は矛盾しません。古典の解釈を独自の倫理で書き換える、本作の野心が最も表れた部分でしょう。

最大の議論を呼ぶのが、孫兵衛の相棒・対馬の立ち位置です。伏姫の宣託では「千里眼の従者は犬士」と示唆されていたにもかかわらず、作中で孫兵衛は「対馬は犬士ではない」と明言する場面があります。この矛盾の答えは、おそらく本作が原作の枠組みから意図的に外れた瞬間にあるのでしょう。対馬は宝珠を持たず、現代兵器だけで戦う「異物」。彼の存在は、八犬伝という古典の構造を完全には踏襲しないという作者の宣言だったと読み解けます。安土城の最上階で起きる出来事に対馬がどう関わるかは、ぜひ本編でその目で確かめてみてください。彼の立場こそが、本作という再解釈作品の到達点を象徴しています。

登場人物・キャラクター分析

主要キャラクター

犬塚信乃(いぬづかしの)

犬塚信乃

南総里見領で暮らす青年です。元は里見家に仕えた家柄の武士でしたが、現在は百姓に身を落としています。正義感が極めて強く、無益な殺生を嫌い、戦いの前にはまず対話で解決を試みる生真面目な性格です。物語の主人公であり、「孝」の宝珠に選ばれた最初の犬士。祖父の代から伝わる妖刀「村雨丸」を振るい、犬士たちの先頭に立って悪魔との戦いに挑みます。

伏姫(ふせひめ)

伏姫

安房国の武将・里見義実の嫡女です。領地と領民を救うために自らの身命を投げ出す、強い覚悟と責任感を持つ女性として描かれます。神の狗・八房と契約を交わしたことで、八つの宝珠が日ノ本各地へ飛散することになりました。肉体は生死の狭間を彷徨いながらも、御霊として犬士たちの旅を見守り、最終決戦では浜路の身体を依代として安土城の最上階に降臨します。

ゝ大(ちゅだい)

ゝ大

延暦寺の僧侶です。普段は生真面目ですが、困窮すると神仏に縋って念仏を唱え始める、人間臭い一面も持ち合わせています。八房の後見人にして、犬士たちの精神的な指導者であり、自身も宝珠に選ばれた犬士の一人。真言で悪魔にダメージを与え、全国を旅して犬士たちを導き集めます。物語終盤では断食・断水・断眠・断臥を伴う荒行「堂入り」を完遂し、生と死を超越した「無」の境地に至っています。

八房(やつふさ)

八房

ゝ大の千日回峰行に同行し、「神の狗」として讃えられるようになった不思議な犬です。人に媚びない性格ですが、ゝ大には腹を見せて甘え、有事には狼のように獰猛に戦います。伏姫と共に物語の幕開けを作った犬士の一人。玉梓の呪いを受けて怪物化し、信乃の手で介錯されますが、御霊となって犬士たちの前に現れ続け、宝珠を授けたり神通力で敵の攻撃を逸らしたりと、物語全体を陰から支える存在です。

内藤吉十郎孫兵衛(ないとうきちじゅうろうまごべえ)

江戸時代の信濃国高遠藩・第三代藩主の嫡子です。「時間」の津波を利用して戦国時代へやってきた、未来からの旅人として描かれます。坊ちゃん刈りで常に鼻水を垂らした男児の姿をしていますが、実年齢は250歳を超えており非常に冷静沈着。ランドセルにタブレット端末を入れ、拳銃GLOCK26を使いこなします。伏姫の宣託で示された「千里眼」の正体であり、「仁」の宝珠を持つ犬士。本作と過去作「スプライト」を繋ぐ最重要人物です。

脇を固める重要人物たち

犬飼現八(いぬかいげんぱち)

佐倉城の闘技場で15年間勝ち続けてきた、無敗の闘士です。粗野な外見に反して心優しく、妹のお駒を溺愛し、彼女のためなら見境をなくすほどの愛情を持っています。「信」の宝珠を持つ犬士であり、信乃と互角以上に渡り合う高い戦闘力の持ち主です。

小文吾(こぶんご)

薩摩国の島津家家臣・犬田左衛門之介に仕えていた下男です。極めて不器用で力だけが取り柄と自嘲する一方、与えられた役目を愚直に遂行する誠実で優しい心の持ち主。「悌」の宝珠を持つ犬士で、覚醒すると体軀が数倍に膨れ上がり、刃物や砲撃すら通さない「神の鎧」を発現します。

左母二郎(さもじろう)

佐倉城の牢に囚われていた若い盗人の男です。手癖が悪く空気が読めないトラブルメーカーですが、「智」の宝珠に選ばれた犬士でもあります。盗みの技術と機転で犬士たちの窮地を間接的に救うトリックスター。妖刀・村雨丸を取り戻すなど、本人の意図せぬところで物語の鍵を握り続けます。

額蔵(がくぞう)

信乃の義兄弟です。武士に憧れる上昇志向の強い青年ですが、自分に利益のない戦いからは逃げ出すなど、節操のない現実主義な一面もあります。物語終盤では足軽大将に出世しており、「義」の宝珠を持つ犬士として安土城内で覚醒し、矢除けの加護を得ます。

浜路(はまじ)

南総里見領で暮らしていた百姓の少女です。天真爛漫で物怖じしない性格で、信乃に対して強い好意を抱き許嫁と自称する一方、左母二郎には容赦なく暴力を振るいます。宝珠を持たない生身の人間ですが、伏姫の御霊と極めて相性が良く、自身の体を依代として伏姫の神通力を発揮させる重要な器となります。

対馬(つしま)

孫兵衛の相棒として行動する男性です。「時間」を利用して西暦2009年から戦国時代へやってきた旅人として描かれます。Tシャツにジーンズ、スニーカーという現代の衣服を身につけ、M4カービンや手榴弾が詰まったタクティカルベストを装備。宝珠を持つ犬士ではないものの、現代の火器で死人軍団を圧倒する強力な戦力です。

玉梓(たまずさ)/お市(おいち)

エウロッパから来日した耶蘇教の悪魔です。引眉にお歯黒の妖婦の姿から、おかっぱ頭で蝶の着物を着た少女「お市」へと姿を変えます。極めて冷酷で、天変地異や呪いを操って犬士たちを執拗に苦しめる宿敵。序盤から中盤にかけて最大の脅威として立ちはだかります。

織田信長(おだのぶなが)/ルシファー

尾張国の武将であり、安土城の主です。エウロッパから来日した耶蘇教の悪魔の頂点「ルシファー」の正体を持ちます。脳を食べて相手の知識を奪い、死人を即座に自軍の兵士として使役する、圧倒的で無慈悲な力を行使する本作のラスボス。地上の支配を超えて天の神へ挑戦するため、巨大なバベルの塔を築いています。

「8巻までは星5、終盤で減点」 ー 読者の熱量と戸惑いが交差した10巻

本作のレビューを読み込んでいくと、ある明確なパターンが浮かび上がってきます。序盤から中盤までの圧倒的な熱量と、終盤への戸惑いが、同じ読者の中で同居しているのです。この感情の揺れこそが、本作が「忘れられない作品」として記憶される理由でもあります。

圧倒的な画力と古典のロックなアレンジに、ファンが熱狂

多くの読者が真っ先に絶賛するのが、息を呑むほど緻密で耽美な画です。「絵がめちゃくちゃキレイ」「妖しく艷かしくホラー要素もあり、絵がそれを際立たせている」「耽美過ぎず見やすい」という声が並び、戦国の土臭さと悪魔の禍々しさを同居させる石川優吾先生の画力に、強い支持が集まっています。

ストーリー面でも、千日回峰行から始まる重厚な導入、伏姫と八房の悲劇的な契約、佐倉城の人間蠱毒など、古典「南総里見八犬伝」を大胆に翻案した展開に「和製ファンタジーの力作」「解釈が新しくて面白い」と評価が集中。さらに過去作「スプライト」とのリンクが明かされた瞬間には、ファンから「思わずコーフンした」「もはや実質的な続編」と歓喜の声が上がりました。これまで「ちょいエロなgdgd展開」のイメージが強かった石川作品の中で、本作のシリアスさは「作家の変化を知るだけでも一見の価値がある」と高く評価されているのです。

9巻からの急展開には「打ち切りでは」と戸惑う声も

一方で、9巻以降の急加速には率直な戸惑いが寄せられています。「7巻までのテンポの6倍速くらいで、いきなり終わった」「駆け込み終了感が打ち切りとしか思えない」「ずっと面白い展開が続いていたのに、最後が物足りなかった」という、不完全燃焼を訴えるレビューが目立つのです。

ただし、こうした声の多くは作品自体への失望ではなく、むしろ「8巻まで面白すぎたからこその落差」から生まれている点に注目したいところです。「アニメ化も話題にもなっていないのが不思議」と思いながら読み進めた読者が、終盤で理由を察するという構造。広げた風呂敷が壮大すぎたゆえの畳みきれなさは、それだけ前半が読者を惹き込んだ証でもあります。グロテスクな描写が含まれる点も含めて、人を選ぶ作品ではあるものの、「8巻までで星3」と前半の評価だけで点を付ける読者がいるほど、序盤の完成度は突出していたのです。

疑問を解消(Q&A)

本作を読む前に多くの方が抱く疑問を、ここで一度に整理しておきましょう。ネタバレを含む質問は末尾にまとめていますので、安心してご覧ください。

漫画「BABEL」は完結していますか?

完結しています。単行本は全10巻、全83話で物語の最後までしっかり描かれており、未完で終わる心配なく一気に読み通せる作品です。

原作「南総里見八犬伝」を知らなくても楽しめますか?

問題なく楽しめます。原作の大まかな枠組みは踏襲されているものの、敵が西洋の悪魔だったり未来人が登場したりと、設定や展開には独自のアレンジが大胆に加えられています。むしろ予備知識がない方が、その斬新さを素直に味わえるかもしれません。

過去作「スプライト」を読んでいないと理解できませんか?

「スプライト」未読でも、一つの物語として完結しているため問題なく楽しめます。中盤から登場する未来人・孫兵衛と対馬の正体や「時間」という設定も、本作中で必要十分に説明されているのです。ただし「スプライト」を読んでいると、二人の旅の重みや前作との繋がりが深く理解でき、ニヤリとできる場面が増えるのは確かです。

残酷な描写やグロテスクなシーンはありますか?

かなりハードな描写が含まれます。生きた肝を奪い合う薩摩の奇習「ひえもんとり」、首を切断されても動き続ける死人、人間を喰らう悪魔の異形など、生理的な嫌悪感を催す可能性のあるシーンが各所にあるため、苦手な方はご注意ください。

【⚠️ネタバレ注意】最終的に八犬士のメンバーは誰ですか?

ネタバレ回答を見る(タップして開く)

宝珠の持ち主は以下の通りです。「孝」が犬塚信乃、「信」が犬飼現八、「悌」が小文吾、「智」が左母二郎、「義」が額蔵、「仁」が孫兵衛、そして犬士たちを導く僧侶ゝ大も犬士の一人。さらに「神の狗」八房自身も犬士の一角としてカウントされる描写があり、最終的に犬士として明言されているのは七人と一匹という独自の構成です。残る宝珠については犬村大角・犬山道節に相当する位置づけが示唆されますが、本編で十分に描かれないまま物語は最終決戦へ突入しました。原作とは大きく異なる、再解釈ならではの犬士構成といえます。

【⚠️ネタバレ注意】織田信長の正体は何ですか?

ネタバレ回答を見る(タップして開く)

織田信長の正体は、エウロッパから来日した耶蘇教の悪魔の頂点「ルシファー」です。脳を食べて相手の知識を奪い、死人を即座に自軍の兵士として使役する圧倒的な力を持ちます。地上の支配を超えて天の神へ挑戦するため、安土城に巨大な「バベルの塔」を築き、死人の軍隊を率いて日ノ本を蹂躙する本作のラスボス。桶狭間の戦いで今川義元を討ち取った際も、人間の亡骸を操る力で勝利を収めていました。タイトル「BABEL」は、旧約聖書で神に挑戦するために築かれた「バベルの塔」を踏まえた、彼の野望そのものを指しているのです。

さいとうさん
信長がルシファー、安土城がバベルの塔…。設定だけ聞くと突拍子もないのに、不思議と納得感があるんですね。
みさき
ふふ、そうなんです。一つひとつのピースは奇抜でも、石川先生の画力と構成力で繋ぎ合わせると、ちゃんと一つの神話として成立してしまう。そこが本作の凄みです。気になった謎は、ぜひ本編でご自身の目で答え合わせしてみてくださいね。

「BABEL」を一番お得に読む方法・まとめ

古典×悪魔×SFが交差する、石川優吾の到達点

「南総里見八犬伝」という古典の名作が、石川優吾先生の手によって、これほどスリリングで現代的な問いを投げかけるダークファンタジーへと生まれ変わるとは、誰が想像できたでしょうか。緻密で耽美な画力、信長=ルシファー、安土城=バベルの塔という大胆な仕掛け、そして過去作「スプライト」とのリンク。本作の魅力は、既成概念を壊して新たな物語を創造しようとする圧倒的な熱量に集約されています。

終盤の急展開に賛否が分かれる作品ではあるものの、それは8巻までの完成度がそれだけ突出していたことの裏返しでもあります。混沌とした世界で必死に生きる犬士たちの姿、理不尽な運命に抗いながら仲間と共に明日を切り拓こうとする彼らの覚悟。読み進めるほどに、この物語が「正解」を押し付けるのではなく、読者自身に何かを感じ取らせようとする作品であることが見えてきます。

歴史改変SFが好きな方も、古典文学の再解釈に興味がある方も、石川優吾先生の画力に惹かれる方も。全10巻という手に取りやすいボリュームで完結している今こそ、この「バベルの塔」が描く驚天動地の世界を体験する絶好のタイミングです。

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さいとうさん
終盤の駆け足感も含めて、これだけ語りたくなる作品って珍しいですね。逆に「賛否両論」だからこそ読みたくなってきました。
みさき
ふふ、その感覚は大切にしてほしいです。みんなが手放しで絶賛する作品も素敵ですが、「自分はどう感じるだろう」と確かめに行きたくなる作品にこそ、本当の出会いがあると思います。BABELは、間違いなくそういう一作ですよ。

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