「ケーキの切れない非行少年たち」ネタバレあらすじ ー 田町雪人の再犯から杉上剛志編の結末まで

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みさき読み返したくなる考察を、ていねいに。韓国Webtoonと少女漫画が好き。
ケーキの切れない非行少年たち
コミック・トライアル作成のイメージ画像

「ケーキの切れない非行少年たち」は、少年院に勤める精神科医・六麦克彦が、丸いケーキを三等分できない少年少女と向き合い、非行の裏に隠れた認知の弱さに迫っていく物語です。

この記事では、田町雪人のその後と杉上剛志が事件を起こした理由を、答えから先に書いています。最新13巻で描かれた杉上編の結末と、新章の入り口まで扱いました。急ぐ方はQ&Aへ、順を追って読みたい方はネタバレあらすじへ。ネタバレ部分はすべて折りたたんであります。

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もくじ

「ケーキの切れない非行少年たち」あらすじ・ネタバレ

作品名:ケーキの切れない非行少年たち
作者:原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ
出版社:新潮社(BUNCH COMICS)
ステータス:連載中
巻数:既刊13巻(2026年10月時点)
連載媒体:くらげバンチ

メディアミックス ー 新書・小説・ドラマで広がる物語

漫画の原作は、宮口幸治先生の新潮新書「ケーキの切れない非行少年たち」です。児童精神科医として医療少年院に勤めた経験をもとに、境界知能や認知の弱さを解説したノンフィクションで、続編の新書も刊行されています。架空の要鹿乃原少年院を舞台にした「ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ」もあり、漫画とは違う角度から少年たちの内面をたどれます。

原作新書・ドキュメント小説(新潮社)
宮口幸治「ケーキの切れない非行少年たち」シリーズ特設サイト | 新潮社 「すべてがゆがんで見えている」子どもたちの驚くべき実像。

2023年6月20日には、NHK BS1でドキュメンタリードラマが放送されました。境界知能の女子高生・小平恵を小林桃子さん、母の里美を工藤夕貴さん、精神科医の六麦克彦を平岡祐太さんが演じ、少年院への取材映像を交えた構成になっています。

ドラマ番組ページ(NHKアーカイブス)
ドキュメンタリードラマ ケーキの切れない非行少年たち|番組|NHKアーカイブス 都内の女子高校生が人知れず赤ちゃんを産み、捨てた。女子少年院に勤務する精神科医が、少女のある特徴を発見する。「ケーキを3等分できない」。衝撃の事件から1年、少年

漫画の一部エピソードは、YouTubeの公式チャンネルでボイスコミックとして公開されています。声がつくことで少年たちの戸惑いが伝わりやすく、作品の雰囲気をつかむ入り口として気軽に試せます。

あらすじ ー ケーキを三等分できない少年たちと、彼らを診る精神科医

舞台は、知的なハンディを抱える少年を受け入れる要鹿乃原少年院です。ここで精神医療を担う医師の六麦克彦は、問題を起こして入院してきた少年たちに、ある共通点があることに気づきます。紙に描いた丸いケーキを、3人で同じ大きさに分けてほしいと頼むと、多くの少年が正しく線を引けないのでした。

見る、聞く、想像する力が弱いと、相手の気持ちも自分の行動の結果も、思うように受け取れません。そうした少年に反省を求めても、言葉だけが上滑りしてしまいます。六麦は叱るより先に、彼らが世界をどう見ているのかを確かめ、認知の力を鍛える訓練に取り組みます。

軽度知的障害の少年や15歳で妊娠した少女、放火で人を死なせた少年など、一人ひとりのケースを通して、学校や家庭で見過ごされてきた困難が少しずつ形を持ち始めます。非行を本人だけの問題にせず、周りの大人に何ができたのかを問い続ける、医療現場の記録のような物語です。

ネタバレあらすじ ー 田町雪人の再犯から、「ケーキの切れる」杉上剛志の結末まで

【ネタバレ注意】「ケーキの切れない非行少年たち」の最新話まで読む(タップで開きます)

出所後に起きた田町雪人の事件(1巻・田町雪人編)

少年院に勤める精神科医の六麦克彦は、非行少年の多くが丸いケーキを三等分できないことに気づきます。4年前に診察した田町雪人もその一人で、IQ68の軽度知的障害と診断されていました。無免許運転や万引きを繰り返して入院した田町は、院内では真面目に過ごし、更生を誓って卒院しています。ところが社会に出ると仕事を覚えられず、先輩に誘われるまま詐欺の受け子をさせられてしまいました。マッチングアプリで知り合った女性から借りた50万円も詐欺グループに奪われ、返済を責められた田町はパニックの末に彼女を殺害します。裁判で田町は障害を理由に刑を軽くしなくていいと自ら語り、懲役13年の判決を受けました。

女子少年院での出産と、性非行の少年(2〜3巻・門倉恭子/出水亮一編)

六麦は女子少年院の診察も受け持ち、妊娠8か月で入所した15歳の門倉恭子と出会います。恭子は中学の担任に暴力をふるって送致された境界知能の少女で、情緒が乱れるとパニックを起こしていました。院内で娘を出産したあと、子どもは恭子の母親に預けられますが、その母の暴力が孫にも向かい、児童相談所が保護に動きます。恭子は親子再統合のプログラムに加わり、少しずつ娘との距離を縮めていきました。同じころ、要鹿乃原少年院には幼児への強制わいせつで出水亮一が入院してきます。自閉スペクトラム症と診断された出水は、性非行防止プログラムを通じて、自分の行為が相手に何をもたらしたのかを学び始めました。

放火で人を死なせた少年と、不器用な少年(3〜4巻・荒井路彦/太田太志編)

父親を困らせようと自宅に火をつけた14歳の荒井路彦は、隣家に燃え移った火で高齢の女性を死なせてしまいます。IQ73で自閉スペクトラム症の疑いがある荒井は、自分が人の命を奪ったという実感を持てず、面接でも表面的な受け答えに終始していました。六麦たちは反省を迫るのではなく、被害者遺族の講話や手紙を書くワークで、亡くなった人の側から事件を見る教育を重ねます。遺族の悲しみに触れた荒井には、ようやく小さな変化が表れ始めました。続いて登場する太田太志は、バイク事故を起こして入院した少年です。物をこぼす、人にぶつかるといった失敗を「わざと」と誤解されてきた背景には、発達性協調運動症という体の不器用さが隠れていました。

境界知能の少女の事件と、親たちの葛藤(5〜6巻・小平恵/手塚陽翔編)

小平恵は、六麦が幼いころから市中の精神科で診てきた、IQ76の境界知能の少女です。勉強についていけない恵を、母親は努力が足りないと叱り続け、恵は学校でも居場所を失っていきます。周りに認められたい一心で流されるうちに望まない妊娠をした恵は、生まれた我が子を死なせてしまいました。境界知能は精神鑑定で「障害なし」と扱われやすく、支援の網から漏れてしまう現実が浮かび上がります。同じ時期には、万引きを繰り返して入院した軽度知的障害の手塚陽翔と、息子の障害を受け入れられない母・真理恵の対立も描かれます。保護者会や看護師・緑川の生い立ちを通じて、家庭や学校で支えを得られたかどうかが分かれ道になることが示されました。

施設育ちの少年と、覚醒剤から抜け出そうとする少女(7〜10巻・栗本陸/大西瑠花編)

7巻では、児童養護施設で育ち、家族のいない不遇から非行に走った栗本陸が入院してきます。陸の前に突然母親が現れ、その思惑に揺れる陸に、六麦と看護師の緑川が寄り添いました。知的障害を抱えて再び少年院に戻ってきた羽野晃には「ハノイの塔」を使った検査が行われ、先を見通す力の弱さが非行の根にあると分かります。8巻からは、恋人に教えられた覚醒剤に溺れた大西瑠花が登場し、少年院の規則正しい生活の中で依存から抜け出そうともがきます。9巻には、小学校では理解ある担任に支えられていたのに、中学で支援を失って窃盗を重ねた三鉢友典のケースも収録されました。10巻では瑠花の前に最後の壁が立ちはだかり、六麦がこの仕事にどう向き合ってきたのか、その歩みも明かされます。

「ケーキの切れる」少年、杉上剛志(11〜12巻・杉上剛志編)

11巻で入院してくるのは、バスの車内で女性2人を刃物で刺した中学3年生の杉上剛志です。IQ118の杉上はケーキの三等分を難なくこなし、これまでの少年たちとは明らかに違う存在として描かれます。誰でもいいから殺したかったと語る彼は、願いを問われると神になりたいと答え、神なら人を殺しても罪にならないと平然と言い放ちました。院内では最初こそ優秀にふるまったものの、叱られたり共同作業がうまくいかなかったりすると、馬鹿にされたと思い込んで教官や他の少年に手を上げるようになります。鑑定書からは、深夜までのゲームを父親にとがめられて激しく衝突し、親子の会話が途絶えていた家庭の姿が浮かびました。12巻では、自閉スペクトラム症の特性と過去の怒りがよみがえる危うさを抱えた杉上に、六麦らがどんな手を打てるのかが問われます。

杉上編の結末と、鳥海医師の新しいケース(13巻の到達点)

13巻の冒頭では、杉上剛志のエピソードに結末が描かれます。知能の高さでは説明できない問題を抱えた彼に六麦たちがどう向き合ったのか、長く続いた章がここで一区切りを迎えました。続く新章の中心にいるのは、性犯罪を犯した子どもの治療にあたる女性精神科医の鳥海です。専門家として加害者の少年と向き合ってきた鳥海は、自分の家庭の中で同じようなケースが起きてしまうという事態に直面します。支える側だった人が当事者になったとき何ができるのかという、これまでとは違う重さを持った問いが投げかけられる展開です。連載は続いており、この新章の行方はまだ描かれている途中です。

この場面は13巻。ブックライブなら1巻から一気に読めます。

さいとうさん
更生を誓って卒院した田町くんが、また事件を起こしてしまうなんて…。本人が頑張るだけでは越えられない壁があるんですね。

みさき
そこがこの作品のつらいところです。田町くんを追い詰めたのは、困ったときに頼れる人がいない環境でした。読み進めるほど、問題がどこにあったのかを考えずにはいられません。

疑問を解消(Q&A)

読む前に気になる疑問へ、短くお答えします。ネタバレを含む質問は後半にまとめ、折りたたんであります。

この物語は実話ですか?

完全な実話ではありません。原作者の宮口幸治先生が、児童精神科医として医療少年院に勤めた経験をもとに組み立てた物語で、舞台の要鹿乃原少年院も架空の施設です。ただ、描かれる少年たちの困難は、先生が現場で向き合ってきた課題そのものなので、フィクションでも記録を読んでいるような手触りがあります。

作中に出てくる「境界知能」とは何ですか?

IQがおおむね70から84の範囲にある状態を指します。知的障害の診断にはあたらないため、福祉や特別な支援を受けにくく、「努力が足りない」と誤解されやすいのが特徴です。統計上は人口の1割強が当てはまる計算になり、作中ではこの見えにくさが非行の背景として描かれます。

漫画版と新書・小説版はどう違いますか?

新潮新書の原作は、宮口先生が症例をもとに境界知能や認知の弱さを解説する本です。ドキュメント小説は架空の少年院を舞台にした小説で、漫画版は精神科医の六麦を主人公に、少年たちとの対話や表情を描く人間ドラマとして組み直されています。仕組みを理解したいなら新書、一人ひとりの物語を追いたいなら漫画が向いています。

「ケーキの切れない非行少年たち」はどこで読めますか?

紙の単行本は新潮社のBUNCH COMICSから13巻まで刊行されています(2026年10月時点)。電子版はブックライブやコミックシーモアなどで配信されていて、どちらも最新の13巻まで揃っています。

【⚠️ネタバレ注意】田町雪人は少年院を出たあと、どうなったのですか?

田町は社会に出たあと仕事が続かず、先輩の紹介で詐欺の受け子をさせられました。知り合った女性から借りた50万円も詐欺グループに奪われ、返済を責められてパニックになった末に、その女性を殺害してしまいます。裁判では障害を理由にした減刑を自ら拒み、懲役13年の判決が下されました。

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【⚠️ネタバレ注意】杉上剛志はなぜバスで人を刺したのですか?

杉上は、誰でもいいから殺したかったと語っています。鑑定では、深夜のゲームをめぐって父親と激しく衝突したあと親子の会話が途絶え、不登校になっていたことが分かりました。六麦は、ゲームを壊されたことが引き金になったと見立てています。そこに自閉スペクトラム症の特性と、過去の怒りがよみがえる危うさが重なっていました。

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【⚠️ネタバレ注意】小平恵はどんな事件を起こしたのですか?

境界知能の小平恵は、望まない妊娠の末に生まれた我が子を死なせてしまいます。勉強についていけないことを母親に努力不足と責められ、学校でも孤立していった経緯が、事件に至るまで丁寧に描かれています。

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さいとうさん
実際の現場の経験がもとになっていると知ると、一つひとつの話が重く感じられます。どの巻から読んでも大丈夫ですか?

みさき
1巻の田町くんの話から読むのがおすすめです。ケーキを三等分できないという最初の場面を知っておくと、杉上くんの章の意味がぐっと深まりますから。

ガチ評価・徹底考察

ケーキの切れない非行少年たち
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総合評価
( 4.5 )
メリット
  • ケーキの三等分という一枚の図で、境界知能の困難を直感的に伝える構成
  • 非行を本人の資質だけでなく、支援が届かなかった構造として描く視点
  • 「ケーキの切れる」杉上剛志の登場で、知能だけでは測れない問題へ踏み込む展開
デメリット
  • 電子版では枠内の解説文が小さく、スマホでは読みにくい場面がある

「みさきの総評」 ー 知ることから始まる、重くて誠実な一冊
楽しく読む作品ではありませんが、身近な誰かの困りごとに気づく目を育ててくれます。13巻まで読み通す価値があります。

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「ケーキが切れるか」だけでは測れないもの

本作がほかの社会派漫画と違う点を、三つの視点から掘り下げます。

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コミック・トライアル作成のイメージ画像

三等分の図は、説明より先に届く

本作の出発点は、丸いケーキを3人で分ける一枚の図です。迷いながら線を引き、いびつな形に切り分けてしまう少年たちの答えは、どんな解説文よりも早く、彼らに見えている景色を伝えてくれます。

その図を見た瞬間、読者は自分にとって当たり前のことが、この子には当たり前ではないと気づかされます。非行少年という言葉に貼りついていた「わがまま」や「反抗」という印象が、ここで静かにはがれていきます。

読者の感想には、タイトルから「ホールケーキを食べる習慣がなかったのでは」「愛情不足なのでは」と想像して読み始め、まったく違う理由に驚いたという声があります。この意外さが、手に取った人を最後まで引っぱる力になっていました。

一方で、三等分の図を知能の低さの見せ物のように受け取った読者もいます。ただ本編を読み進めると、図は少年を笑うためではなく、周りの大人が困りごとに気づくための手がかりとして置かれていると分かります。

反省を求める前に必要な、もう一つの土台

罪を犯した少年に、私たちはまず反省を求めます。本作が問いかけるのは、その反省を支える力がそもそも育っていない子どもがいるという事実です。

見る、聞く、想像する力が弱いと、相手の表情も自分の行動の結果も正しく受け取れません。目が合っただけで睨まれたと思い込み、手が出てしまう少年もいます。そこで反省文を書かせても、言葉だけが上滑りしてしまうでしょう。

六麦が取り組むのは、叱ることではなく、認知の力を鍛えるトレーニングです。原作者が考案したコグトレをもとにした地道な訓練の描写は、更生がどれほど時間のかかる営みなのかを伝えます。

放火で人を死なせた荒井路彦が、遺族の講話を聞いて初めて表情を変える場面は、その積み重ねの先にようやく訪れた変化として描かれています。

なぜ「ケーキの切れる」杉上剛志が描かれたのか

10巻までに登場した少年たちは、多くが境界知能や軽度知的障害を抱えていました。11巻で入院してくる杉上剛志はIQ118で、ケーキも正しく三等分できる、いわばタイトルから外れた少年です。

それでも彼は、バスの中で見知らぬ女性を刺しました。自閉スペクトラム症の特性や父親との断絶、ゲームへの強いこだわりが重なっていて、知能の高低という物差しだけでは、彼の行動を説明できません。

この章は、本作が「知能が低いから非行に走る」という単純な図式を語る作品ではないことを、はっきり示しています。当事者や家族からは偏見を心配する声も上がっていましたが、杉上の物語はその懸念への一つの応答としても読めます。

13巻で杉上編は結末を迎えます。何を見落とすと人はここまで追い詰められるのか、その問いを六麦とともに最後まで見届けたくなる章です。

登場人物・キャラクター分析

主要キャラクター

六麦克彦(むつむぎかつひこ)

六麦 克彦

要鹿乃原少年院で精神医療を担う医師で、本作の主人公です。女子少年院の診察も受け持ち、非行の裏にある認知の弱さを面接や検査で一つずつ確かめていきます。少年たちを否定も甘やかしもせず、自作のトレーニングで「反省以前」の土台を作ろうとする姿勢が物語の軸になっています。思うような成果が出ずに悩む姿も描かれ、理想だけでは語れない現場の重さを背負う人物です。

田町雪人(たまちゆきと)

田町 雪人

IQ68の軽度知的障害と診断された、ケーキを三等分できない少年です。素直な性格で院内では真面目に過ごしますが、先の見通しを立てる力や、悪い誘いを断る力がとても弱いままでした。出所後に社会から孤立していく姿は、少年院の外に受け皿がない現実を最も痛切に示しています。作品全体の問いを読者に手渡す、出発点となる人物です。

門倉恭子(かどくらきょうこ)

門倉 恭子

妊娠8か月で女子少年院に入所した15歳の少女です。境界知能にあたり、気持ちが乱れるとパニックを起こしてしまいますが、その背景には母親との複雑な関係がありました。院内で娘を出産し、親子再統合のプログラムを通じて母としての一歩を踏み出していきます。家庭で繰り返されてきた連鎖と、そこから抜け出す可能性の両方を背負った人物です。

小平恵(こだいらめぐみ)

小平 恵

IQ76の境界知能にあたる17歳の女子高生で、六麦が幼いころから診てきた患者です。勉強についていけないことを母親から努力不足と責められ、学校でも友達ができずに孤立していきます。居場所を求めて流されるうちに、取り返しのつかない事件を起こしてしまいました。診断名のつかない困難が、本人も周りも気づかないまま積み重なる怖さを体現する人物です。

杉上剛志

杉上 剛志

バスの車内で女性2人を刺し、殺人未遂で入院してきた中学3年生です。IQ118でケーキの三等分も難なくこなし、これまでの少年たちとは明らかに違う存在として登場します。自閉スペクトラム症の特性を持ち、馬鹿にされたと思い込むと教官や他の少年にも手を上げてしまいます。知能の高低では測れない問題を作品に持ち込み、11巻から13巻までの長い章を担う人物です。

脇を固める重要人物たち

荒井路彦(あらいみちひこ)

荒井 路彦

父親を困らせようと自宅に火をつけ、隣家の高齢女性を死なせてしまった14歳の少年です。IQ73で自閉スペクトラム症の疑いがあり、自分の行動がどんな結果を招くのかを思い描くのが苦手でした。被害者遺族の講話に触れたことで、ようやく亡くなった人の重さと向き合い始めます。

出水亮一(いずみりょういち)

出水 亮一

幼児への強制わいせつで入院した少年で、自閉スペクトラム症と診断されています。性についての知識が乏しく、相手の気持ちを読み取る力も弱いため、自分の行為の何が悪かったのかを理解できずにいました。性非行防止プログラムを通じて、被害を受けた側の視点を少しずつ身につけていきます。

大西瑠花(おおにしるか)

大西 瑠花

恋人に勧められた覚醒剤に溺れ、少年院に入ってきた少女です。人に頼らずにはいられない弱さを抱え、自分を利用する相手から離れられずにいました。8巻から10巻にかけて、規則正しい院内の生活の中で依存から抜け出そうともがく姿が描かれます。

緑川(みどりかわ)

緑川

要鹿乃原少年院に勤める看護師です。自身も児童養護施設で育った過去を持ち、家族を頼れない少年たちの寂しさを肌で知っています。六麦のよき理解者として、医師とは違う距離から少年たちに寄り添います。

手塚陽翔(てづかはると)

万引きを繰り返して入院した、軽度知的障害の少年です。息子の障害を受け入れられない母・真理恵との関係がこじれていましたが、六麦のトレーニングを受けるうちに少しずつ変化を見せます。母親の側が変わっていく過程も含め、親子の再出発を描く人物です。

栗本陸(くりもとりく)

児童養護施設で育ち、家族のいない不遇から非行に走った少年です。母親に置き去りにされた経験から大人を信じられずにいたところへ、その母親が突然姿を現します。揺れる陸の心に、六麦と緑川がどう寄り添うのかが7巻の読みどころです。

太田太志(おおたたいし)

バイク事故を起こして入院した少年です。物をこぼしたり人にぶつかったりする失敗を、周りから「わざとだ」と誤解され続けてきました。その裏には発達性協調運動症という体の不器用さがあり、作業療法士を交えた支援が行われます。

鳥海

13巻から始まる新章の中心となる女性精神科医です。性犯罪を犯した子どもの治療にあたってきましたが、自分の家庭の中で同じようなケースに直面することになります。支える側が当事者になったときの苦しさを、読者に突きつける人物です。

「知れてよかった」と「読むのがつらい」が同じ数だけ届く作品

見方が変わった ー 子育て中の親や医療者からの共感

最も多いのは、読んだあとで人の見方が変わったという声です。子育て中の読者からは、タイトルから家庭の愛情不足を想像していたのに、認知の弱さという理由を知って衝撃を受け、子どもに合った環境の大切さを考えさせられたという感想が寄せられています。内科医を名乗る読者は、境界知能の人が生きにくい社会であること、救う仕組みがないこと、それを悪用する大人がいることを、社会全体で知るべきだと書いていました。

日常が変わったという声もあります。なぜこんな簡単なことが分からないのかと苛立っていた相手を、落ち着いて観察できるようになったという感想は、この作品が読み物を超えて働く場面を示す一例です。自身も認知の弱さを抱える当事者からは、学校や職場でうまくいかなかった理由が少年たちの特徴と重なり、腑に落ちたという声も届いています。漫画家の池上遼一さんは賞の選評で、無表情に近い少年たちの目にときおり浮かぶ悲しみや怒りの描き方を高く評価しました。

重さと読みにくさ ー それでも読み継がれる理由

一方で、内容が重く気持ちが沈んだという感想や、絵の目が怖い、顔の見分けがつきにくいという声もあります。電子版では枠内の解説文が小さく、拡大しても読みにくいという不満が複数見られました。気になる方は、文字の大きい端末で読むか、試し読みで確かめてから購入すると安心です。

踏み込んだ批判としては、生きづらさを抱える人が「自分も犯罪者と同じなのか」と傷つかないでほしいという懸念や、加害者の事情に光が当たることで被害者の気持ちが置き去りにならないかという疑問が挙がっています。どちらも、この作品を真剣に読んだからこそ生まれる問いです。本作は荒井路彦の章で遺族の悲しみを正面から描き、杉上剛志の章で知能と非行を単純に結びつけない姿勢を示しており、読者の問いに物語の側から応え続けています。

「ケーキの切れない非行少年たち」を一番お得に読む方法・まとめ

気づく目を育てる、静かで重い読書体験

本作が描くのは、善悪の判断より手前にある「認知」という課題です。少年たちがなぜケーキを等分できないのかを知ると、自分の物差しで人を測っていた場面がいくつも思い浮かびます。

田町雪人の再犯は、更生した本人を受け止める場所がなければ努力が報われないことを突きつけました。11巻からの杉上剛志の章は、知能の高い少年でも追い詰められるという、もう一つの現実を見せています。13巻では杉上編が結末を迎え、鳥海医師の新しいケースが始まりました。

読み終えて心が軽くなる作品ではありません。それでも、身近な誰かの困りごとに一歩早く気づけるようになる、そんな手応えが残る物語です。1巻の三等分の場面から、ぜひご自身の目で確かめてください。

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さいとうさん
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