
夫に借金を背負わされ、昼も夜も働き続ける33歳の児玉樹里。「枯れた花に涙を」は、枯れていくだけだった彼女の前に11歳下の青年・一ノ瀬蓮が現れ、救いと支配を同時に差し出す物語です。
この記事では、譲二は死亡するのか、そして蓮の正体は何者で、11年もかけて樹里に近づいた理由は何かを、答えから先に書いています。急ぐ方はQ&Aへ、順を追って読みたい方はネタバレあらすじへ。ネタバレ部分はすべて折りたたんであります。
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「枯れた花に涙を」あらすじ・ネタバレ
作品名:「枯れた花に涙を」
作者:Gae(ゲ)
出版社:スターツ出版(Berry’s COMICS・紙)/LINE Digital Frontier(LINE コミックス・電子)
ステータス:連載中
巻数:既刊6巻(2026年8月時点)
連載媒体:NAVER WEBTOON(韓国語版・毎週土曜更新)/LINEマンガ(日本語版・毎週月曜更新)
メディアミックス
2026年8月時点で、アニメ化・実写化の公式発表はありません。SNSでは実写のキャスト予想がたびたび盛り上がっていますが、いずれもファンの願望の段階にとどまっています。音楽面では2025年10月24日に韓国でイメージソング「소란한 밤이 있었어」が配信され、日本でもアニメイトを中心にPOP UP SHOPが複数回開催されました。LINEマンガの2025年年間ランキングと2026年上半期ランキングでいずれも連載部門1位を獲得し、累計1.9億ビューを突破しています。この規模の実績がある以上、今後何らかの発表が出る可能性は残っています。
原作小説はある? 韓国版との進行差と、日本語版で読める範囲
結論から書きます。この作品に原作小説は存在しません。Gae先生が原作と作画をひとりで手がけた完全オリジナルのウェブトゥーンで、韓国のNAVER WEBTOONで2024年6月21日から毎週土曜に連載が続いています。近年の人気ウェブトゥーンは完結済みのウェブ小説をコミカライズしたものが多いため、小説版で先の展開を確認できると考えている方もいますが、本作にその抜け道はありません。
日本語版はLINEマンガで2025年3月10日に始まり、毎週月曜に更新されています。韓国版のほうが先行しているため、日本語版を追いかけている読者は常に何話かうしろを歩いている状態です。この差が「韓国版はどこで読めるのか」という検索の絶えない理由でしょう。なお韓国版は18歳以上の指定で配信されており、日本語版では性描写と一部の暴力描写に修正が入りました。SNSで言う「完全版」は、そういう名前の商品があるわけではなく韓国版を指しています。
「全97話で完結した」という情報が知恵袋などで出回っていますが、これは誤りでした。韓国版は2026年8月時点でも連載が続いており、公式の完結告知は出ていません。
紙の単行本はスターツ出版から刊行されており、2026年4月24日に1巻と2巻、6月26日に3巻と4巻、そして8月28日に5巻と6巻が同時発売されました。B6判のフルカラーで、韓国版コミックスの内容を収録しています。収録範囲は1巻が第1話〜第13話、2巻が第14話〜第26話、3巻が第27話〜第40話、4巻が第41話〜第53話です。電子版も同じ6巻まで巻単位で配信されていますが、連載はそれよりずっと先を進んでいます。単行本に追いついたあとの続きを読むには、話単位で配信されているeBookJapanを使うことになります。
あらすじ ー 枯れ果てた心に、毎日ひとつだけ薔薇が届く
児玉樹里、33歳。夫の金子鉄平が投資詐欺で背負った莫大な借金は、なぜか樹里の名義になっていました。返済のために花屋と焼肉屋を掛け持ちし、深夜はモーテルの清掃に入る日々。過去には妊娠しながら流産し、体質的に妊娠しにくいと告げられた経験もあります。その傷をえぐるように、鉄平は彼女を「おばさん」と呼び、子どもができない体だと嘲笑いました。
感情を殺すことで一日をやり過ごしていた樹里の前に、ひとりの青年が現れます。一ノ瀬蓮、22歳。190センチ近い長身で、毎日ひとつだけ薔薇を買っていく彼を、同僚は名前も知らないまま「薔薇」と呼んでいました。
蓮は樹里が食事を抜いていることを見抜いて弁当を差し出し、雨の日には自分の傘を置いていきます。やがて彼は、こう切り出しました。借金を肩代わりする代わりに、大人の恋を教えてほしい。あまりに不自然な申し出でしたが、樹里には断りきれない理由がありました。
この出会いは偶然だったのか。答えは、彼女が想像していたよりもずっと長い時間をさかのぼったところにあります。
「枯れた花に涙を」のネタバレあらすじ ー 蓮が11年かけて近づいた理由と、譲二が今も動いている場面
【ネタバレ注意】「枯れた花に涙を」の最新話まで読む(タップで開きます)
枯れた花と、毎日ひとつだけ薔薇を買う青年(1巻・第1話〜第13話)
物語は樹里が焼肉屋の店長に給料の前借りを頼む場面から始まります。彼女が背負っているのは、夫の鉄平が先輩の投資詐欺に巻き込まれて作った借金でした。書類上はすでに離婚しているにもかかわらず、鉄平は同居を続け、樹里の稼ぎで生活しています。第6話では取引先の中年社長が焼肉屋で樹里に酌を強要し、断られると衆人環視のなかで土下座を要求しました。店に迷惑をかけまいと膝をついた樹里を見ていた蓮は、店の外でその社長にわざと一発殴られてから、相手を一方的に叩きのめします。第7話、蓮の顔の傷に気づいた樹里は、それまで彼に告げていた「話しかけないでほしい」という頼みを自分から取り消しました。第8話では高校の同級生に安物の靴と自分のエルメスを交換させています。理由は単純で、貧しく見せて樹里の同情を引くためでした。この時点ですでに、蓮の行動はすべて計算のうえに組み立てられています。
結婚記念日の寝室で見せられたもの(2巻・第14話〜第26話)
雨の日、樹里は鉄平が若い女性と相合傘で歩く姿を目撃します。相手は鉄平の勤め先の同僚で、8歳年下の西野亜里沙でした。それでも関係を修復しようとしていた樹里に、決定的な光景が突きつけられます。結婚記念日の夜、自宅の寝室で鉄平と亜里沙が抱き合っていたのです。この状況は偶然ではなく、樹里を鉄平から完全に切り離すために蓮と譲二が裏で組み立てた罠でした。現場に鉢合わせた樹里に対し、鉄平は開き直り、自分たちはもう他人だと言い放ちます。裏切られた事実そのものより、その言葉を平然と口にできる男と13年を過ごしてきたという現実が、彼女を深く削りました。
明かされた正体 ー 教え子は財閥の御曹司でした(3巻・第27話〜第40話)
第26話から27話にかけて、鉄平は荷物を取りに戻ると称して部屋へ現れました。自分の荷物が捨てられていないことを「俺がいなくて寂しかったんだろ」と解釈し、激昂する樹里を見て人間らしくて気持ちがいいと悦に入ります。胸ぐらを掴んで抵抗した樹里は、ついに彼を家から追い出し、次に来たら警察に通報すると告げました。同じ第27話の後半では一ノ瀬家の冷え切った食卓が描かれ、1年ぶりに帰国した兄・丈がワイングラスを投げつけて弟を迎えます。蓮は「いつか必ず殺してやるから」と静かに返しました。そして過労で高熱を出して倒れた樹里を看病しながら、蓮は隠していたものをすべて差し出します。自分は一ノ瀬財閥の次男であり、かつて樹里が家庭教師として勉強を見ていた教え子だという事実です。学生時代からずっと想い続けていたこと、鉄平に裏切られて泣く樹里の姿を見届けるために計画的に近づいたことまで、彼は隠しませんでした。彼を遠ざけようとした樹里が諦めさせるつもりで1千万円を貸してほしいと送ると、数週間後、傷だらけの蓮が臓器を売って用意したと嘘をつきながら現れます。第31話、屋台で泥酔した樹里はなけなしの2千円を渡して今日だけ友達になってほしいと頼み、自分からキスをしました。
1千万円の嘘と、初めて結ばれた夜(4巻・第41話〜第53話)
蓮の甘やかし方は常軌を逸しています。水族館デートでは偽の占い師を仕込んで運命だと信じ込ませようとし、服を買わせたいときは店ごと買収して一日限定セールを装いました。一方の鉄平は、離婚を受け入れられないまま合鍵で樹里の部屋に侵入します。これを予測していた蓮と譲二は借金取りに扮して待ち構え、譲二が巧みな嘘を重ねて精神的に完膚なきまでに叩きのめしました。居場所を失った鉄平は、亜里沙の家に転がり込みます。顔を腫らして帰ってきた蓮に樹里は激しく怒りますが、彼が痛かった、怖かったと素直に弱音を吐いたことで、思わず強く抱きしめてしまいました。切れた唇を舐めてほしいと求められたこの夜、二人は初めて心と体を重ねます。翌朝、家事を一切しなかった鉄平とは対照的に、蓮は自然な手つきで朝食を作りました。第51話では会長が蓮の部屋を訪ねようとし、譲二が慌ててそれを回避しようと動きます。彼は会長から蓮を監視するよう命じられた立場でありながら、部屋に残る薔薇やぬいぐるみといった樹里の痕跡を報告から外していました。
監禁事件と、血まみれの救出劇(5巻・6巻)
亜里沙は、鉄平を自分に縛りつける手段として妊娠を考えるようになります。友人に恋愛相談を持ちかけながら、真剣な助言には苛立ちを返すという有様でした。鉄平のほうは借金を返し終えるまで結婚する気はないと告げ、亜里沙に返済資金を用意させようと誘導しています。第79話からは、ユ・ムジン会長の一人娘である悠里が登場しました。父親は娘を一ノ瀬家の息子と縁づけようとしており、本人はそれを露骨に不快がっています。そして物語は最悪の方向へ動きました。蓮を排除したい丈が高校の同級生から樹里の存在を突き止め、高時給のアルバイトを装って彼女を地下の店に監禁したのです。スマホを壊され、安っぽい服と濃いメイクを強要されてもなお、樹里は毅然と反抗し続けました。危険を察知した蓮は自らをジゴロだと名乗って単身で敵のアジトに乗り込み、血まみれになりながらチンピラをなぎ倒して彼女のもとへ辿り着きます。脱出後、雨の中で樹里は彼の無謀さを怒りながらも自分の愛を認め、二人は感情をぶつけ合うようなキスを交わしました。
すれ違う二人と、動き出す一ノ瀬家(6巻の到達点より先・単話配信分)
命がけの救出を経てなお、二人の距離は素直に縮まりません。樹里は11歳という年齢差と世間の目を気にして、蓮との関係を周囲に隠そうとします。彼が職場で堂々と恋人だと宣言したことに彼女が難色を示すと、蓮は深く傷つきました。当てつけのように1ヶ月の出張を決め、向こうでどんな女性に会っても恋人はいないと言うと突き放して、二人はすれ違ったまま離れます。一方の鉄平は探偵事務所に金を振り込み、いまだに樹里の居場所を執拗に探り続けていました。韓国版107話では、蓮の指示を受けた譲二が亜里沙の身辺を調査し、父親は大学教授、母親は音楽専攻という裕福な家庭の一人娘だと報告します。娘がどんな男にすがりついているか親が知ったら見ものだ、という彼の皮肉が、亜里沙の立場を残酷に照らし出しました。そして韓国版111話、これまで背景にいた兄・丈がついに樹里と直接対面します。財閥の抗争が二人の日常へ本格的に侵入してくる段階に入りました。
この展開は単行本の収録範囲より先にある最新話です。eBookJapanなら話単位で追いつけます。
みさき疑問を解消(Q&A)
読み進めるうちに浮かんでくる疑問と、ネット上で情報が錯綜している点を整理しました。ネタバレを含む質問は折りたたんであります。
【⚠️ネタバレ注意】譲二は死亡するのですか?
結論として、死亡していません。ネット上には死亡確定と断言する記事が複数ありますが、いずれも何話で亡くなったのかを一切書いていません。中には譲二をヒロインの恋愛相手として扱っている記事まであり、作品を読まずに書かれたものと考えられます。
先行している韓国版で確認すると、譲二は最新話に近い段階まで蓮の右腕として動いています。107話では蓮の指示を受けて亜里沙の身辺を調査し、父親は大学教授、母親は音楽専攻という家庭の一人娘だと報告しました。娘がどんな男にすがりついているか親が知ったら見ものでしょうね、という皮肉まで添えています。これは死亡した人物の描写ではありません。
そもそも彼の立ち位置は複雑です。会長から蓮を監視して報告するよう命じられた身でありながら、樹里に関する痕跡だけは報告から外して蓮を庇い続けてきました。この二重性がまだ回収されていない以上、退場させるには早すぎます。死亡説が広まったのは、検索需要の大きさに目をつけた記事が不安を煽ったためだと考えられます。
→ 譲二が動いているのは単行本の収録範囲より先の最新話です。eBookJapanで確認する
【⚠️ネタバレ注意】蓮の正体は何者で、樹里に近づいた理由は?
一ノ瀬蓮の正体は、一ノ瀬財閥の次男です。会長が愛人との間にもうけた婚外子にあたり、本妻の子である長男・丈とは異母兄弟の関係になります。花屋に毎日通ってくる薔薇の客という顔は、彼が自分で選んで被った仮面でした。
近づいた理由は初恋です。蓮はかつて樹里が家庭教師として勉強を見ていた教え子で、11年前から彼女を想い続けていました。ただし再会は偶然ではありません。鉄平に裏切られて泣く樹里の姿を見届けるために、時期を選んで計画的に現れています。第8話で同級生と靴を交換したのも、貧しく見せて同情を引くための仕込みでした。
この事実は、過労で倒れた樹里を看病したときに蓮自身の口から明かされます。愛情の告白と加害の自白が同時に置かれたことで、樹里の感情は行き場を失いました。彼の背中と腹部に残る虐待の古傷と、その上に重ねられたタトゥーが、なぜここまで歪んだのかを説明しています。
→ この告白は3巻・第27話から第40話のあいだにあります。eBookJapanで確認する
【⚠️ネタバレ注意】樹里と蓮の結末はハッピーエンドになりますか?
連載中のため確定ではありませんが、ハッピーエンドへ向かう道筋は濃厚です。根拠は2つあります。蓮が樹里を守る姿勢を一度も崩していないこと、そして監禁事件を経て樹里自身が自分の気持ちを認めたことです。全97話で完結したという情報が出回っていますが、これは誤りで、物語はまだ続いています。
タイトルそのものも予告として機能しています。絶望で枯れ果てた樹里に注がれる涙が、序盤の悲しみから再生の側へ意味を移していく構造です。彼の名前である蓮の花が泥の中から咲くものであることも、偶然の一致とは思えません。
ただし障害は残っています。異母兄の丈は韓国版111話で樹里と直接対面する段階に入り、会長も譲二を通じて蓮の動向を握ったままです。樹里が年齢差と世間体を理由に関係を隠そうとしたことで、二人の間には現在すれ違いも生じています。たどり着くまでに、まだいくつか痛い展開が挟まりそうです。
→ 丈と樹里が対面するのは単行本より先の最新話です。eBookJapanで確認する
みさきガチ評価・徹底考察

- 縦スクロールの縦長構図が、190センチの蓮が樹里を見下ろす圧力をそのまま体感させてくる
- 元夫への嫌悪を年下ヒーローの制裁で解放する、感情の逃がし方が精密に設計されている
- 救済と支配が同じ輪郭を持っていて、読者が安心しきれないまま先を読まされる
- 日本語版は規制のぶん、性描写に伴う感情の起伏が韓国版より平坦になる箇所があります
「みさきの総評」 ー 注がれる涙が愛なのか毒なのか、最後まで判定させてくれません
元夫への怒りを年下男子の支配で相殺させる構図が、依存先の乗り換えを快さへ変換し、読者を静かに共犯にしていきます。
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救いと支配が同じ顔をしている理由
この作品を読み終えたあとに残るのは、甘さでも爽快さでもなく、判定の保留です。蓮が樹里にしていることは救済なのか、それとも別の形の支配なのか。その線引きが最後まで揺れ続ける仕組みを、3つの角度から見ていきます。

「大人の恋を教えてください」が、贈り物ではなく取引の形で差し出された理由
蓮が最初に口にした申し出は、借金を肩代わりする代わりに大人の恋を教えてほしい、というものでした。財閥の次男が本気で相手を助けたいなら、条件を付けずに金を出せば済みます。彼はそうしませんでした。
理由は樹里の側にあります。13年かけて「してもらうこと」を諦め続けてきた人間は、無償の善意を受け取れません。受け取った瞬間に借りが生まれ、その借りがまた自分を縛ることを知っているからです。取引という形にすれば、彼女は対価を払う側として関係に入れます。蓮はそこまで読んだうえで、あえて自分を不利な条件の提案者に見せました。
同じ構造は第31話の2千円にも現れます。泥酔した樹里がなけなしの紙幣を渡して友達になってほしいと頼んだとき、彼女は初めて自分から関係の条件を提示しました。金額の小ささが、彼女が差し出せるものの少なさをそのまま示しています。蓮がその2千円を受け取ったのは、値段に納得したからではなく、彼女が能動的に手を伸ばした事実だけが欲しかったからです。
ここが厄介なところで、読者はこの配慮に感心してしまいます。相手の自尊心を守るために取引の形を選んだ、優しい男だと。ところが同じ手つきで、彼は水族館に偽の占い師を仕込み、服屋を一日買収して偶然を演出しました。相手が受け取りやすい形を作る技術は、相手を思いどおりに動かす技術と同じものです。優しさとして機能する場面が続くうちに、私たちはその技術の正体を見失います。
監視役の譲二は、なぜ蓮を庇い続けるのでしょうか
譲二の立ち位置は、この物語でいちばん説明されていない部分です。彼は一ノ瀬会長から蓮を監視して報告するよう命じられた立場でありながら、第51話では部屋に残る薔薇やぬいぐるみといった樹里の痕跡を報告から外しました。命令違反を承知でやっています。
読者の間で死亡説が繰り返し立つのは、この二重性が理由だと考えています。二つの主人に仕える人物は、物語の構造上どこかで選択を迫られます。選んだ側に殺されるか、選ばなかった側に消されるか。そういう予感が、彼が生きて動いている場面を読んでいる最中にも働いてしまいます。
ただ、彼の行動を追っていくと、忠誠の対象は蓮個人ではなさそうです。借金取りを演じて鉄平を精神的に叩きのめしたときも、亜里沙の身辺を洗って皮肉を飛ばしたときも、譲二が楽しんでいるのは「誰かの人生を静かに動かす」作業そのものでした。会長に仕えても蓮に仕えても、彼の手つきは変わりません。
その譲二が樹里のことだけは報告から外したという事実が、逆に重く響きます。手段としてしか人を見ていない男が、一人だけ盤上から除外した。彼が何を守ろうとしているのかは、まだ描かれていません。この空白が回収されるまで、彼を退場させるのは物語として無駄が多すぎます。
涙の意味は、序盤と現在で完全に反転しています
タイトルの「涙」が誰のものかを追いかけると、この作品の設計がよく見えます。第1話で流れる涙は、裏切られた樹里の絶望そのものでした。蓮が見届けようとしていたのも、その涙です。彼は彼女が泣く瞬間を計算して現れました。
ところが物語が進むにつれ、泣く側が入れ替わります。捨てないでほしいと願い、顔を腫らして帰ってきて痛かったと漏らすのは蓮のほうです。監禁事件のあと、雨のなかで彼の無謀さを怒りながら自分の愛を認めた樹里は、もう一方的に涙を注がれる立場ではありません。枯れた花に水をやっていたはずの男が、いつのまにか水をもらう側に回っています。
蓮の背中と腹部に残る古傷と、その上に重ねられたタトゥーも同じ反転の話です。他人につけられた印を消すのではなく、自分で選んだ印を上から彫る。虐待の記憶を書き換えるのと同じ手つきで、彼は自分の生まれも、樹里との関係の始まり方も塗り直そうとしてきました。教え子として近づき、契約として関係を結び、恋人としてやり直す。何度も塗り直しているわけです。
ちなみに蓮が樹里に贈り続けているのは、蓮の花ではなく薔薇です。泥の中から咲く花の名を持つ男が、情熱と棘を同時に背負った花を毎日ひとつだけ渡し続ける。この配役のねじれに、彼という人間の全部が入っています。
登場人物・キャラクター分析
物語を牽引する主要キャラクター
児玉 樹里(こだま じゅり)

33歳。元夫が残した借金を返すため、花屋と焼肉屋を掛け持ちし、深夜はモーテルの清掃にも入っています。書類上は離婚していながら鉄平との同居が続いていた時期が長く、13年に及ぶモラハラと流産の経験で自己肯定感を削り取られてきました。凛とした美しさと誠実さを持ちながら、他人のために自分を後回しにする癖が抜けません。監禁事件を経て蓮への気持ちを認めたものの、11歳の年齢差と世間の目を気にして関係を隠そうとし、そこから彼とのすれ違いが始まります。
一ノ瀬 蓮(いちのせ れん)

22歳。一ノ瀬財閥の次男で、会長が愛人との間にもうけた婚外子にあたります。190センチ近い長身の美青年で、樹里の前では従順な子犬のように甘えますが、それ以外の場面での彼は冷徹そのもの。かつて樹里が家庭教師として勉強を見ていた教え子であり、11年越しの執着を隠したまま彼女に近づきました。幼少期から父と異母兄に虐待され、背中や腹部に残る古傷をタトゥーで上書きしています。煙草を吸わず、代わりに飴を口に入れているのが癖です。
金子 鉄平(かねこ てっぺい)

樹里の元夫。高校時代は暴力を振るう父から樹里をかばい、バイト代で携帯電話を贈るような青年でしたが、先輩の投資詐欺で借金を負って以降は別人のように変わりました。借金の名義を樹里に押し付けたまま同居を続け、8歳年下の同僚と不倫を重ねます。蓮と譲二の芝居に精神を折られて部屋を追い出されたあとも樹里への執着を捨てられず、探偵事務所に金を払って彼女の居場所を探り続けている状態です。読者からの評価は作中で最も厳しく、更生の機会を何度も逃す姿に嫌悪の声が集まっています。
西野 亜里沙(にしの ありさ)

鉄平と同じ会社に勤める女性で、彼より8歳年下にあたります。大学教授の父と音楽を専攻した母のもとで育った一人娘で、経済的には何ひとつ不自由がありません。鉄平が既婚だと知ったあとも泣きながら彼を引き留め、自分から愛人の側を選びました。今は自宅で同居しながら、彼を繋ぎ止める手段として妊娠を考えるようになっています。相談に乗ってくれる友人の正論に苛立ち、樹里を見下すことで安心を得ようとする姿に、読者の目は厳しくなる一方です。
脇を固める重要人物たち
譲二(じょうじ)

蓮の部下として裏の仕事を一手に引き受けている男性です。190センチを超える長身で、髪を下ろすとかなりの長髪、背中は一面が和彫りで埋まっています。もともとは会長から蓮を監視して報告するよう命じられた立場でしたが、樹里に関わる痕跡だけは報告から外し、蓮を庇い続けてきました。上司相手に軽口を叩き、たまに一線を越えた皮肉も飛ばしますが、蓮は笑って流します。借金取りを演じて鉄平を追い詰めたのも、亜里沙の身辺を洗ったのも同じ人物です。ネット上で死亡説が独り歩きしていますが、最新話に近い段階まで生きて動いています。
一ノ瀬 丈(いちのせ じょう)

蓮の異母兄で、会長と本妻の間に生まれた長男です。27歳から28歳へと年を重ねる過程が作中で描かれています。弟の消息は訃報以外に興味がないと言い放つほど憎悪しており、再会の場ではワイングラスを投げつけました。飴を舐める弟とは対照的に酒と煙草を好み、女性関係も派手です。蓮の弱点が樹里だと突き止めるとアルバイトを装って彼女を監禁するという手段に出ました。韓国版では、ついに樹里と直接顔を合わせる展開に入っています。
一ノ瀬会長(いちのせかいちょう)

蓮と丈の父親であり、一ノ瀬財閥の絶対的な権力者です。蓮と瓜二つの容姿をしており、護衛が会長の若返りかと見紛うほど。目元の皺と、いつも嵌めている手袋が見分けの手がかりになります。本妻には長男の丈を、愛人には次男の蓮を産ませました。息子たちを競わせて利用価値で選別するやり方が、蓮の歪んだ愛情表現の出発点になっています。譲二を使って蓮の行動を監視し続けている人物でもあります。
梨花(りか)

樹里と同じ花屋で働く年下の女性です。第1話では樹里のシフトの多さに驚き、毎日薔薇を買っていく蓮を名前も知らないまま薔薇と呼んで観察していました。ところが物語が進むと、彼女が内心では樹里を見下していたことが明かされます。あんな男がどうして年上の女性を選ぶのかと疑い、樹里の離婚を知るとその事実を蓮に告げ口しました。すでに承知していた蓮には通じず、逆に恥をかく結果に終わっています。読者の評価が途中から大きく下がったキャラクターです。
光(ひかる)
蓮の友人で、彼に好意を寄せている女性です。何度も連絡を取ろうとしますが、蓮は一貫して関心を示しません。告白が実らなかったあと、蓮が想いを寄せている相手が樹里だと察して、その情報を丈の側へ流してしまいます。彼女の一言が監禁事件の引き金になりました。悪意というより行き場のない執着が暴発した形で、そのぶん読者の反応も分かれています。
郁人(いくと)
蓮の友人で、光に想いを寄せている男性です。ところが光の目には蓮しか映っておらず、自分より整った容姿で人望も集める蓮に、強い嫉妬を抱えるようになりました。昔は普通に仲が良かったという事実が、余計に彼の劣等感を刺激しています。
助けてと叫びながら、指はスクロールを止められません
蓮に堕ちる瞬間は、たいてい温度差でやってきます
不倫ものは苦手だから避けていたのに、たまたま流れてきた広告で蓮の顔を見た瞬間に引き返せなくなった。そんな体験談がSNSやブログに並んでいます。彼の魅力はイケメンという一語ではとても足りません。
読者が繰り返し挙げるのは、温度差の落差です。キスの場面で樹里の頭を大きな手で包み込みながら、もう一方の手は激しくならないよう我慢している。その配慮に愛を読み取った感想がある一方で、車の中で見せた笑みが純粋な好意ではなく計画の一部だと確信して怖くなったという声も並びます。子犬と修羅が同じコマの中で入れ替わるので、読み手の感情が置いていかれるわけです。捨てないでと願う彼を拾ってあげたいという投稿と、正体がバレたとき樹里はどうなるのかとモヤモヤする投稿が、同じブログの隣り合った回に載っていました。
興味深いのは、その怖さが途中から反転する点でした。蓮はどうしても樹里に鉄平より自分を選んでほしいのだ、それは母親を求める気持ちに近いのかもしれない。そう分析した読者がいます。重すぎる愛の原点が虐待された幼少期にあると分かった瞬間、怖いという感情が守りたいに変わっていく。作画への評価も高く、樹里の儚さと蓮の冷たい視線を描き分ける精度に、神レベルという言葉が何度も使われています。蓮のシャツを羽織って眠ろうとする樹里の姿を、番の巣作りみたいだと表現した感想も見かけました。
重くて読めないという声こそ、最大の賛辞になっています
面白いけれど展開が重くて体力がいる、主人公が可哀想すぎてつらい。こうした感想は確実に一定数あります。昼はコンビニ、夜はモーテル、合間に焼肉屋という労働量を前に、修行僧かと突っ込んだ読者もいました。その激務の理由が元夫の借金だと分かった時点で、大半の人がスマホを握りしめたはずです。鉄平の言動に吐き気がする、そのままフェードアウトしてほしいという書き込みも珍しくありません。
関係の進み方に違和感を訴える声も無視できません。39話まで読んだ段階で、二人がしばらく体だけの関係を続けるのではと不安になった、ちゃんと想い合ってからにしてほしかった、という投稿が知恵袋に残っています。守ってあげる話だと思って読み始めた人にとって、途中からの踏み込み方は想定外でした。幸せなシーンにわざと不穏なモノローグが差し込まれる演出も、怖くて先に進めないという反応を集めています。
ただ、その嫌悪や戸惑いの強さは、それだけ深く樹里の痛みに入り込んだ証拠でもあります。序盤で心を抉られた分だけ、後半の救済が甘くなる。作品はその落差を計算して組み立てています。日本語版の規制に物足りなさを覚えて韓国のサイトまで見に行った読者や、翻訳の言葉選びの違いを指摘するファンがいることも、熱量の高さを示していました。重いと言いながら最新話まで追いかけてしまう。それこそが、この作品が読者を離さない理由だと思います。
「枯れた花に涙を」を一番お得に読む方法・まとめ
壊れた関係の先に待っている、静かな独占の予感
この作品を最後まで追いかけるとき、私たちが見ているのは他人の不倫や復讐劇ではありません。自分の一部を殺すことで生き延びてきた女性が、誰かの異常なほど強い眼差しによって、もう一度血の通った人間に戻っていく過程です。
画面を送るたびに、樹里の震える呼吸や蓮がまとう静かな熱が指先から伝わってきます。Gae先生の線は繊細で、あらすじの文章では絶対に触れられない表情の変化 ー 蓮の瞳が一瞬だけ揺れる瞬間や、樹里が泣きながら笑うちぐはぐな顔 ー が、1コマごとに読者の感情を揺さぶってきました。フルカラーの縦スクロールでしか成立しない演出です。
きれいなだけの恋愛物語では物足りないと感じているなら。あるいは誰かのために自分を後回しにし続けて少し疲れているなら。夜が深くなった頃に、1コマずつ込められた執着を直接受け止めてみてください。読み終えたあとに胸へ残るのは、不快感だけではないはずです。痛みの先にある微かな温もりのようなもの。それがこの作品の正体だと思います。
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1回あたり500円までの割引が6回分もらえるので、続きを何話かまとめて購入すると割引枠を使い切れます。1話ずつ買い足していくと上限に届かず、クーポンの効きが弱くなります。クーポンはアプリ内購入では使えないため、ブラウザから購入してください。
その他のサイトで読みたい場合
紙の単行本はスターツ出版から6巻まで刊行されており、電子の巻単位配信も同じ6巻までです。この記事で触れた監禁事件から先を読むには話単位の配信を使うことになります。序盤から巻でそろえたい場合と、最新話まで追いかけたい場合で選ぶ店が変わる点にご注意ください。
みさきからの推薦
みさき


