
レジで笑顔を向けてくれる「山田さん」と、スーパーの裏でだるそうに煙を吐く「田山」。この二人が同一人物だと、佐々木だけが気づいていません。「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」は、ブラック企業に勤める45歳のサラリーマンと24歳のスーパー店員が、灰皿を挟んだ数分間だけ肩書きを脱ぎ捨てる物語です。
この記事では、ネタバレなしのあらすじから、佐々木が正体に気づく巻と話、9巻で起きた二人の決裂までを順に追いかけます。21歳差という距離が読者にどう受け止められているのか、放送中のテレビアニメの内容、キャラクターの相関までまとめました。ネタバレ部分はすべて折りたたんでありますので、未読の方も安心して読み進めてください。
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「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」あらすじ・ネタバレ
作品名:「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」
作者:地主(じぬし)
出版社:スクウェア・エニックス(ビッグガンガンコミックス)
ステータス:連載中
巻数:既刊9巻(2026年8月時点)
連載媒体:月刊ビッグガンガン、X(旧Twitter)
メディアミックス
TVアニメ ー 2026年7月9日から放送中
テレビアニメは2026年7月9日にスタートし、TBS系28局で毎週木曜よる11時56分から放送されています。AT-Xでは7月12日から毎週日曜よる9時に放送。配信はABEMAとNetflixが7月10日深夜0時30分から先行し、Prime Video、U-NEXT、dアニメストア、DMM TVなどは7月16日以降に順次スタートしました。アニメーション制作は旭プロダクションです。
監督は鈴木理人さんと森あおいさん、シリーズ構成は井上美緒さん、キャラクターデザインは大滝那佳さんが担当。キャストは佐々木役に佐藤拓也さん、山田/田山役に星希成奏さん、後藤役に行成とあさん、大野役に豊口めぐみさん、小畑役に安田陸矢さん、前澤役に日笠陽子さん、鈴木役に高橋伸也さんという顔ぶれです。主題歌はオープニングがずっと真夜中でいいのに。の「イチジク煙」、エンディングがimaseさんの「Fiction」。7月10日にはBlu-rayの発売も発表されました。
ABEMAで配信されている先行配信版は、テレビ放送版の1話から6話を約10分のショート版に分割し直した別バージョンです。テレビ版とは尺も構成も異なるため、両方を見比べると演出の違いが見えてきます。公式サイトはhttps://yanisuu.com、公式Xは@yanisuu_animeです。
受賞歴
SNSでの発表直後から反響が広がり、数々の賞に名を連ねてきました。「次にくるマンガ大賞2022」ではWebマンガ部門の第1位を獲得。翌年の「全国書店員が選んだおすすめコミック2023」で第4位、「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック2023」では第1位に選ばれています。「マンガ大賞2023」にもノミネートされ、「第7回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」では第4位に入りました。
特装版・関連書籍
コミックスの特装版には、地主先生がSNSなどで描いたイラストを収めた小冊子「裏ヤニ」シリーズが付属します。3巻に第1弾、6巻に第2弾、8巻に第3弾が同梱されました。「裏ヤニ3」は60点を超えるイラストに加え、この小冊子でしか読めない描き下ろし漫画8ページを収録しています。
あらすじ ー 灰皿ひとつ分の距離から始まる関係
ブラック企業「元気商事」で主任を務める45歳の佐々木。会議と残業に削られる毎日のなかで、行きつけのスーパーS諸々駅前店に立ち寄り、2番レジに立つ山田さんの笑顔を浴びることだけが、一日を終わらせるための儀式になっていました。
ある夜、会議が長引いて遅い時間に店へ向かうと、レジに山田さんの姿はありません。せめて一服しようにも、喫煙者の肩身は狭く、吸える場所すら見つからない。途方に暮れる佐々木に「ここなら吸える」と声をかけたのは、ピアスにロックな装いをまとった店員、田山でした。スーパーの裏手にある従業員用の喫煙所で、二人は他愛のない言葉を交わしながら火を点けます。
この田山、正体は退勤後の山田さん本人です。髪型と化粧、口調が変わるだけで、佐々木はまるで結びつけられません。山田は佐々木が自分のファンだと知ったうえで、同僚の田山を装ったまま彼をからかうことにしました。
こうして始まった夜の喫煙仲間としての時間は、互いの孤独をそっと肩代わりしながら、名前のつかない何かへ変わっていきます。派手な事件は起きません。それでもページをめくる手が止まらなくなる、大人のための遅い恋の物語です。
「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」のネタバレあらすじ ー 佐々木が正体に気づく瞬間と、9巻で起きた決裂
【ネタバレ注意】「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」の最新話まで読む(タップで開きます)
二つの顔と、気づかない男(1巻・出会い編)
スーパーSの裏口で始まった喫煙仲間としての夜が、佐々木の日課になっていきます。表の2番レジでは山田さんに癒やされ、裏の喫煙所では田山にからかわれる。同じ人物を相手にしていると、佐々木は最後まで疑いません。ある日、山田は客から「接客は朗らかなのに煙草の匂いがしてがっかりした」とクレームを受け、自分の二面性に嫌気が差してしまいます。その話を田山から聞かされた佐々木は、誰にともなく「違う面を知った途端に信じられなくなるのはさびしい。どっちもその人なのに」と口にしました。何気ない一言が、正体を隠している当人の心を深いところで救います。学生時代に接客で行き詰まっていた山田を励ましたサラリーマンが、若き日の佐々木だったことも示唆されました。
積み重なる夜と、周囲のまなざし(2〜3巻・日常編)
喫煙所での会話は、天気の話から仕事の愚痴まで、相変わらず中身がありません。それでも佐々木の不器用な優しさと、強気の裏に臆病さを隠した田山の距離は、じりじりと縮まっていきます。店長の後藤は、部外者を従業員用の喫煙所に入れた山田を規則の上では叱りつつ、二人のやり取りを「夜勤に持ってこいのエンタメ」として黙認するようになりました。佐々木に既婚疑惑が浮かんで田山があからさまに不機嫌になる騒動や、豪雨の夜に彼女がかつて手放した憧れの断片を漏らす場面など、関係の温度が変わる小さな出来事が積み重なります。青果部門の小畑が二人を目撃して激しく動揺するなど、スーパーSの面々も物語に巻き込まれていきました。
贈り物と、それぞれの過去(4〜5巻・接近編)
年が明けても佐々木が振り回される構図は変わりませんが、彼は田山が以前ほしがっていたシガレットケースを贈り、相手を大切に思う気持ちを自覚し始めます。互いが煙草を吸うようになった理由も明かされました。佐々木は大学時代の先輩である遠野に無理やり吸わされたことがきっかけで、田山は自分を励ましてくれた恩人の影響でした。「それは憧れだ」と佐々木に言い当てられ、田山は自分でも名づけていなかった感情の輪郭に触れます。誕生日を忘れて働き続け、上司に理不尽に叱られた佐々木には、田山が「ちゃんとやってきたその手があるなら、歳を食うのも悪くない」と45年分の人生をまるごと肯定してみせました。この頃、鮮魚部門チーフとして出戻った川上が山田を慕うあまり佐々木を敵視し、二人の周囲はにわかに賑やかになります。
失踪事件と「待つ」という決意(6〜8巻・正体確信編)
山田が執拗なクレーマーに自宅まで特定されかけ、恐怖から無断欠勤して行方が分からなくなる事件が起こります。佐々木はスーパーSの面々とともに街を駆け回り、怪我をした彼女を見つけ出して背負って連れ帰りました。この一連の出来事のなかで、佐々木はついに「田山と山田さんは同じ人だ」という確信に至ります。それでも彼は問い詰めませんでした。後藤店長に促されて本音を白状したあと、彼女が自分の口から打ち明けてくれるまで何も気づかないふりをして待つと決めます。夜勤明けの田山を家まで送る道すがら、二人は取り繕わない素の姿を差し出し合い、客と店員という線を越えた関係を互いに自覚していきました。
夢への再挑戦と、初めての決裂(9巻の到達点)
山田は一度あきらめた夢と向き合うため、スーパーSの社員登用試験に挑む決意を固め、本社研修へ動き出します。佐々木も出張先で大きな成果を挙げ、過去の挫折から避け続けていた本社の表彰式に出ることを選びました。二人がそれぞれ前へ進み始めた矢先、年末年始のキャンペーンで本社から野間が一時赴任してきます。山田の古い傷に深く関わる相手でした。対抗意識から限界を超えて働き続けた山田は、見かねたベテランの大野に「ここは職場。あんたの無茶はみんなに返ってくる」と烈火のごとく叱られ、強制的に早引けさせられます。自暴自棄になった彼女は、心配して声をかけた佐々木に「関係ないくせに」と泣きながら暴言を吐き、ビンタをして去りました。追い打ちをかけるように、大野が来年で退職して田舎へ帰る計画が前澤の口から漏れ、スーパーSの空気は一変します。62本目時点で、二人の関係はこれまでにない冷え込みを迎えたところです。
みさきガチ評価・徹底考察

- 事件らしい事件が起きないのに読む手が止まらない、「好きになりかけ」の温度が丁寧に描かれています。
- 喫煙所という対等な場所で交わす会話だけで場面が成立し、何度読み返しても色あせません。
- スーパーSの従業員たちがそれぞれの物語を抱えており、群像劇としての厚みがあります。
- 進展の遅さに「早く気づいて」とやきもきする場面は多いものの、その焦らしが贅沢な味わいに変わっていきます。
「みさきの総評」 ー 掴めない距離のまま、いつのまにか一番あたたかい
疲れた大人がスーパーの裏で交わす他愛のない会話。それがなぜ胸に残るのか。押しつけがましさゼロで「言葉が人を救う瞬間」を描いた一作です。
じれったさが快感に変わる理由 ー この物語を支える3つの構造
「早く進んでほしい」と願いながら、同時に「終わってほしくない」とも思う。その矛盾した気持ちがどこから来るのかを、3つの角度から見ていきます。

佐々木は鈍いのではなく、誠実すぎる
「いくらなんでも気づかないのは無理がある」。多くの読者が一度は抱く違和感です。ピアスを絆創膏で隠し、髪型と服装を変えただけ。声も背丈も同じなのだから、至近距離で向き合えば分かるはずだ、と。
けれど佐々木という人物をよく見てください。彼は山田さんの笑顔に救われ、田山の率直さにも救われています。どちらにも真正面から向き合っているからこそ、「この二人は同じ人かもしれない」と引いて眺める視点が生まれません。鈍感さではなく、目の前の相手を一人の人間として扱いすぎた結果です。
加えて佐々木は、自己評価が極端に低い人物として描かれています。20代の女性店員が自分に特別な関心を向けているなど、彼の自己像では想像の範囲外。「気づかない」より「思いつけない」と言ったほうが近いでしょう。
物語が進むにつれ、彼の心は少しずつ揺れ始めます。山田への想いと田山への想いのどちらが重いのかに悩み出す場面は、確信へ近づく前触れでした。気づいていないようでいて、心の奥では何かを受け取っている。その微妙なグラデーションが、読み返すたびに違って見えます。
秘密が守っていたもの
「正体がバレたら関係が壊れるのでは」という不安を抱く方は少なくありません。ところがこの作品で、秘密は「嘘」ではなく「まだ届けていない本当のこと」として置かれています。
田山は佐々木を騙したいわけではなく、喫煙所でしか出せない素の自分を受け入れてほしいだけでした。「田山」という仮の名前は、接客用の笑顔と肩書きから解放される、彼女にとってたったひとつの逃げ場だったわけです。裏の顔を否定されたら、逃げ場そのものが消えてしまいます。
佐々木の側も、山田さんの笑顔と田山の言葉の両方に支えられているため、無意識にこの均衡を守ろうとします。8巻で正体を確信したあとも問い詰めなかったのは、そのためです。彼女が自分から話す時を待つという選択は、秘密を崩壊ではなく次の段階へ渡すための橋でした。
なぜ9巻で、あの決裂が必要だったのか
癒やしの作品だと思って読んできた人ほど、9巻の後半で息が止まったはずです。山田が佐々木に「関係ないくせに」と泣きながら暴言を吐き、ビンタをして去る。この作品でここまで直接的な衝突が描かれたのは初めてでした。
ただ、この決裂は唐突ではありません。二人の関係は「客と店員」「喫煙仲間」という便利な名札に守られてきました。名札があるうちは、踏み込まなくても許されます。山田が社員登用試験に挑み、佐々木が本社の表彰式に向かった時点で、二人はそれぞれ名札の外側へ歩き出していました。守ってくれるものがなくなれば、傷つけ合う距離まで近づいてしまいます。
「関係ないくせに」という言葉は、裏を返せば「関係のある人でいてほしかった」という叫びです。喫煙仲間のままなら口にする必要のなかった台詞を、山田は口にしてしまいました。大野の退職という別れの気配が重なることで、この物語が長く保ってきたぬるま湯の温度が、意図的に下げられています。ここから二人がどんな名前を選ぶのか、最新話を追う価値のある局面に入りました。
登場人物・キャラクター分析
登場人物 相関図

主要キャラクター
佐々木(ささき)

元気商事に勤める45歳(作中で46歳を迎えます)のサラリーマンで、支社の主任を務めています。やせ型で長身、愛煙する銘柄は「BoN STARs」。常に他人へ気を遣い、自己評価が低く謝罪が口癖になっていますが、その気の遣い方が周囲を静かに支えています。恋愛にはとことん疎い一方、山田さんの笑顔にも田山の率直さにも真正面から向き合い続ける誠実さの持ち主。かつて接客に悩んでいた若き日の山田へ言葉をかけ、彼女を救った張本人でもあります。
山田(やまだ) / 田山(たやま)

スーパーSの2番レジを担当する24歳(作中で25歳に)の従業員です。勤務中はピアスを絆創膏で隠し、笑顔を絶やさない「山田さん」。退勤後はレザージャケットにピアス姿の気だるい「田山」へ姿を変えます。本来の性格は田山に近く、佐々木をからかって遊ぶ茶目っ気がありますが、根は真面目で情に厚い人物。愛煙する銘柄は「Beside Me」です。学生時代のトラウマから一度は夢をあきらめており、佐々木への想いを自覚してからは社員登用試験に挑もうとしています。
後藤(ごとう)

スーパーSを切り盛りする40歳の女性店長です。無表情でぶっきらぼうながら部下への配慮は欠かさず、イベントを次々に仕掛けて売上を伸ばすやり手。その手腕を買われて本社の企画部に抜擢されたものの、デスクワークが性に合わず店舗へ戻ってきた経歴を持ちます。加熱式タバコを愛用する喫煙者で、恋愛漫画を愛読するロマンス好き。佐々木と田山の関係をいち早く見抜き、夜勤のエンタメとして静観しながら、ここぞという場面で背中を押します。
脇を固める重要人物たち
前澤(まえざわ)
スーパーSのレジ部門チーフを務める女性で、二児の母でもあります。いつも元気でおしゃべり好き、店長からは「ザワ」と呼ばれるムードメーカー。山田の2番レジを狙って並ぶ佐々木に「山田のファン28号」という愛称を付けた張本人です。9巻では、早引けさせられた山田を明るく送り出そうとした場面で、大野の退職計画をうっかり口走ってしまいました。
大野(おおの)
スーパーSに長く勤める58歳のベテランレジスタッフです。小柄で温厚、パチンコの景品を同僚に配って回る気のいいおばちゃんですが、仕事には厳しく、怒らせると恐ろしい。かつて連載を終えて燃え尽きていた西園を、まっすぐな言葉で立ち直らせた過去を持ちます。9巻では無理を重ねる山田を強く叱りつけ、強制的に早引けさせました。来年で退職して田舎へ帰る計画が明るみに出て、店の空気を大きく揺らしています。
川上(かわかみ)

スーパーSの鮮魚部門チーフを務める21歳の社員で、関西弁で話します。高卒で入社し、しばらくぶりに店舗へ戻ってきた出戻り組。山田を「ヤマさん」と呼んで強く慕っており、その周囲をうろつく佐々木を当初は敵視して心理戦を仕掛けました。以前の職場で人間関係に傷ついた過去を抱えていましたが、佐々木の言葉に触れて誤解が解け、山田と本当の友達になりたいという本音を口にします。
小畑(おばた)

青果部門のチーフを務める27歳の男性で、通称は「オバ」。身長190cmの巨体でありながら極度の人見知りで涙もろく、仕事の腕だけは確かという人物です。後藤店長を深く慕っており、辞令のたびに異動を恐れています。田山と佐々木の距離を偶然目撃しては激しく取り乱す、物語の緩衝材のような存在。
鈴木(すずき)
元気商事で佐々木の隣の席に座る同僚で、大学時代からの友人です。妻と恵美という娘がいる既婚者。軽口を叩き合う間柄ですが、佐々木のいない飲みの席で彼の過去の失敗が話題に上がった時には、ジョッキを叩きつけて話を切り上げさせるほどの理解者です。過去の挫折で萎縮しがちな佐々木を、職場でさりげなく庇い続けています。
西園(にしぞの)
スーパーSの常連客である、還暦を過ぎた上品な女性漫画家です。愛犬の大五郎をかわいがっており、海外へ出るときには後藤店長に預けています。連載を完結させたあとの虚無感に沈んでいた時期、大野の率直な言葉に救われた過去を持ち、客と店員の関係を「居心地の良い片思いをさせてもらっているような」と表現しました。大野の退職を知らされ、9巻では魂が抜けたようになっています。
大五郎(だいごろう)
西園が飼っている愛犬です。「ばふ」と鳴く人懐っこい性格で、やんちゃでありながら賢い子。西園の不在時には後藤店長に預けられ、スーパーの裏手に現れては佐々木や田山と戯れます。張り詰めかけた空気をふっとほどく役回りを、言葉を持たないまま引き受けている存在です。
野間(のま)
年末年始のキャンペーンで本社から一時赴任してきた、冷徹な社員です。山田にとっては古い傷に直結する相手で、その登場が9巻の波乱を引き起こしました。彼女が心身の限界を超えて働き続けた背景には、この人物への強い対抗意識があります。具体的に何があったのかは、まだ明かされていません。
読者の評価と反響 ー 「ひと言でくくれない関係」に掴まれて
最初の抵抗感が、読み進めるうちに溶けていく
レビューで目立つのは、入口での身構えを正直に告白する声です。「若い娘とおっさんが心を通わせるなんてありえない」「最初はおじさんがちょっとキモいと思った」。そう書いた人ほど、途中から筆致が変わります。山田と田山が同一人物という仕掛けの面白さ、それに1ミリも気づかない佐々木のピュアさに触れて、いつのまにか止まらなくなった、と。この反転の体験そのものが、作品の入口として機能しています。
とりわけ共感を集めているのが、佐々木の「違う面を知った途端に信じられなくなるのはさびしい。どっちもその人なのに」という言葉です。煙草やギャンブルといった一面だけで人を判断してしまう自分に刺さった、という告白が複数寄せられています。恋愛漫画でありながら、人の多面性を受け止める姿勢が読者自身の生き方に作用している。そこにこの作品の特別さがあります。
愛煙家からは別の角度の声も上がりました。事業所の喫煙所が次々に廃止されていく現実のなかで、かつてタバコ部屋にあった独特の会話を思い出した、という感想です。仕事帰りのスーパーやコンビニで交わす一言に救われている、という生活実感からの共鳴も目立ちます。喫煙しない読者が「吸う場面は苦手だけれど、あの余白は好き」と書いているのも、この作品らしいところです。
「気づかなさすぎ」への不満と、その裏返し
率直な抵抗を示す声もあります。「そんなに長く気づかないのはあり得ない。鈍感設定が無理くりすぎる」「レジ打ちの時に匂いでバレそうなものだ」。同じすれ違いが長く続くことに対して、「数話はとても面白かったけれど飽きてきた」という離脱の声も出ています。急展開を求める読者ほど、この構造は待たされ方が長く映るはずです。
21歳差という設定にも、シビアな視線が向けられています。佐々木と同世代の読者からは「自分だったらありえない」という自己投影混じりの本音が。恋愛に発展するのか、それとも淡い感情を抱えたまま絡み続けるだけなのかと、着地点を測りかねている声も少なくありません。作品側もそこを軽く扱っておらず、9巻の決裂はまさにこの問いに正面から手をつけた展開でした。
「過去の伏線がきちんと回収されるか不安」「田山と名乗った理由をもっと描いてほしい」という要望も、裏を返せば細部まで本気で追っている証拠です。焦らされること自体を愛情表現として共有できるかどうかが、この作品との相性を分けます。9巻で初めて大きな亀裂が入ったことに対しては、「まさかこの穏やかな作品でここまで」という動揺の声が一斉に上がりました。
疑問を解消(Q&A)
ここからは、読む前に気になるポイントから物語の深いところに踏み込む疑問まで、声の多いものにお答えしていきます。ネタバレを含む回答は折りたたんでありますので、必要な方だけ開いてください。
みさき「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」を一番お得に読む方法・まとめ
なんでもない夜にこそ、この物語を開いてほしい
この作品が300万部を超えて読まれ続ける理由は、とてもシンプルです。疲れ切った日の終わりに、誰かと煙草を吸いながら中身のない話をする。ただそれだけの数分が、どれほど人を立て直すか。地主先生はその小さな救いを、一コマずつ丁寧に刻み込んでいます。
2022年3月にX(旧Twitter)で第1話が投稿されて以来、SNS連載と月刊ビッグガンガンでの連載が並行して続いてきました。特装版に付く小冊子「裏ヤニ」シリーズには、本編では見られない二人の表情や描き下ろし漫画が収められています。本編の外側まで手を抜かない姿勢が、読者の厚い信頼を支えてきました。
そして9巻。癒やしの物語だと思って読んできた人ほど、あの決裂に胸をつかまれたはずです。放送中のアニメで佐藤拓也さんと星希成奏さんの声を聞いてから原作に戻ると、喫煙所の沈黙の意味がまた変わって聞こえます。まだ読んでいないなら、1巻の喫煙所の場面だけでも手に取ってみてください。佐々木が田山と初めて言葉を交わす数ページで、これがただの喫煙漫画ではないと伝わるはずです。なんでもない夜に、なんでもない一服のように。この物語がそっと隣にいてくれますように。
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