
魔法が絶対の物差しになっている国で、魔力を一滴も持たない少年が剣だけを頼りに頂を目指す。入口だけを切り取れば見覚えのある構図ですが、「杖と剣のウィストリア」が16巻(2026年8月時点)まで読者を離さないのは、青井聖の描く戦闘の熱量と、大森藤ノが何年もかけて仕込んだ伏線の厚みにあります。
この記事では、1巻から最新刊までのあらすじを段階ごとに追いかけたうえで、読者の検索が集中している「ロスティの正体」「フィンとダンまちの関係」「天の鍵に封じられていたもの」の三点に踏み込みます。どの巻まで読めばどの答えに辿り着けるのか、その地図をお渡しします。
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「杖と剣のウィストリア」あらすじ・ネタバレ
作品名:杖と剣のウィストリア
作者:大森藤ノ(原作)/青井聖(漫画)
出版社:講談社(講談社コミックス)
ステータス:連載中
巻数:既刊16巻(2026年8月時点)
連載媒体:別冊少年マガジン(マガポケ)
メディアミックス
TVアニメ ー 第3期の制作が決まりました
第1期は2024年7月7日からTBS系で放送されました。制作はバンダイナムコピクチャーズとアクタスの共同体制で、剣戟の速度と魔法のエフェクトが同じ画面で成立している点が高く評価されています。第2期は2026年4月12日に始まり、6月28日に最終回を迎えました。その最終回の放送直後、公式から第3期の制作決定が発表されています。総監督は吉原達矢、第2期からは中野英明が監督に加わり、キャラクターデザインの小野早香と音楽の林ゆうきは続投という布陣です。

前日譚小説「グリモアクタ」
原作の大森藤ノが自ら書き下ろした「杖と剣のウィストリア グリモアクタ ー始まりの涙ー」がGA文庫から刊行されています。漫画のノベライズではなく、本編より6年前を舞台にした前日譚です。ウィルとエルファリアが孤児院から魔法学院へ進むまでの日々と、本編でウィルの記憶が欠けている理由に関わる出来事が描かれます。第2巻はコレットの過去に踏み込む内容で、漫画本編を読んでから触れると印象が変わる一冊になっています。
あらすじ ー 魔法が使えない少年が握った、一振りの剣
魔法の腕がそのまま人の価値になる国、魔導の央都リガーデン。その最高学府であるリガーデン魔法学院に、ひとりだけ場違いな生徒がいます。六年生のウィル・セルフォルトは魔力をまったく持たず、教師からも同級生からも「無能者」と呼ばれ続けてきました。
それでも彼が学院を去らない理由は、たったひとつの約束にあります。同じ孤児院で育った幼馴染のエルファリアは、史上最年少の15歳で世界最強の魔導士「至高の五杖」に選ばれ、塔の頂へ連れて行かれました。いつか塔の上で一緒に本物の空を見よう。その言葉を守るために、ウィルは杖の代わりに剣を握り、単位が足りない分をダンジョンで魔物を狩って埋め続けます。
冷笑、退学の危機、魔法至上主義が生む理不尽な線引き。押し返してくるものは多いのですが、ウィルの剣は止まりません。実力を認める者がひとり、またひとりと増えていき、やがて物語は学院を出て、五つの派閥がひしめく「魔法使いの塔」の内側へ進みます。そこで彼が触れるのは、この世界がなぜ成り立っているかという成り立ちそのものでした。
「杖と剣のウィストリア」のネタバレあらすじ ー ロスティが消えた夜と、天の鍵の正体
【ネタバレ注意】「杖と剣のウィストリア」の最新刊まで読む(タップで開きます)
無能者と蔑まれた少年が、魔導大祭で証明したもの(1巻〜3巻・学院編)
リガーデン魔法学院の六年生ウィル・セルフォルトは、魔法をひとつも使えないまま最終学年を迎えていました。単位が足りない彼はダンジョンに潜って魔物を狩り、討伐単位で帳尻を合わせる綱渡りの学院生活を送ります。転機になったのは、炎魔法の名家に生まれた同級生シオン・アルスターがダンジョンで窮地に陥り、ウィルに助けられた一件でした。さらに学年トップスリーのユリウス・レインバーグがドワーフを侮辱したことに我慢がならず、ウィルは本来出るはずのなかった祭典「魔導大祭」への参戦を決めます。競技「奪冠」の舞台でウィルは、土魔法の友人コレット・ロワールの援護を受けながらユリウスの分身魔法を見破り、魔法をひとつも使わずに天才を打ち倒しました。魔法が絶対だと信じていた観客の前で、剣が魔法を上回る光景が初めて成立した瞬間です。
総合実習の絶望と、剣が魔法を喰らった日(4巻〜5巻・ダンジョン編)
魔導大祭で実力を示したウィルは、学年首席のリアーナ・オーウェンザウスやエルフのイグノール・リンドールに誘われ、最終学年の総決算である「総合実習」へ加わります。ダンジョン10層までを踏破する課題でしたが、何者かの妨害でパーティは分断され、ウィルは上級魔導士にしか許されない11層へ落とされてしまいました。単位数270という規格外の魔物と対峙し、恐怖で足がすくんだ彼を殴り飛ばしたのはシオンです。立ち上がったウィルは無意識のうちに「装填」を発動し、シオンの放った炎魔法を剣身に受け止めて撃ち返しました。他人の魔法を剣に取り込むという、この世界の誰も想定していなかった戦い方が形になります。実習の裏では「破滅の書」の残党が動いており、10年前に至高の五杖を殺した組織の影が物語に差し込みました。
境界祭の襲撃と、ロスティが消えた夜(6巻〜7巻・境界祭編)
闇魔法教師エドワルド・セルフェンスが課した試験に落第し、ウィルは塔へ進むための単位を満たせないまま新年を迎えます。年に一度、至高の五杖が世界を覆う大結界を張り直す祭「境界祭」の夜、五杖が魔力を消耗するその瞬間を狙って破滅の書が央都を襲撃しました。首無しが呼び出した魔物の群れに対し、魔法を打ち消す装備「魔導士殺し」まで持ち込まれ、上級魔導士のロッジ・ホランドが胴を両断されて命を落とします。ウィルは魔工師のルームメイト、ロスティ・ナウマンと連携して戦いますが、40層の特異種が振り下ろした刃はウィルへ向かいました。庇ったロスティは身を貫かれ、氷が砕けるように消滅します。読者にとっても、この作品が誰かを守り切れない話だと突きつけられた場面でした。
白銀に染まる髪 ー 覚醒と、塔への切符(8巻〜10巻・第二開祭編)
深層の特異種ディヴェンデに敗れ、絶望に沈むウィルの前に現れたのが、光の一族の少年フィンです。フィンの呼びかけに応えたウィルは、自分の魔法の名が「勇気」であることを自覚し、髪が白銀に染まる「白銀解放」を発動しました。雷速の身のこなしで群れを薙ぎ払い、エルファリアから託された氷の力を魔剣に宿してディヴェンデを断ち切ります。街を救った功績で塔への進学が認められた一方、上院首長クロイツ・ハーロンの妨害を受け、どの派閥にも属さない「無色」の身に落とされました。派閥選抜の場「第二開祭」に向け、ウィルは学院長の真の姿である鉄槌の魔女ケリドウェンの助力を受けて、自分の記憶から魔力を引き出す「想填」を会得します。試験を突破し氷の派閥入りが目前に迫ったところで、雷公の杖ゼオ・トルゼウス・ラインボルトが横やりを入れ、エルファリアとの規格外の魔法戦の末にウィルは雷の派閥へ引き抜かれました。
塔に潜む裏切り者と、ユリウスの死(11巻〜14巻・内偵編)
境界祭の夜に塔の門が内側から開かれていた形跡が見つかり、調停者クレイルウィ・セラはウィルたち新入りの世代に、各派閥を内側から調べる勅令を下します。捜査の途上、氷の派閥に入っていたユリウスは幼馴染エマ・クレバーの異変に気づき、傀儡魔法で操られていた彼女の手で心臓を撃ち抜かれて死体となって発見されました。犯人が破滅の書の傀儡士シェイドだと突き止めたウィルたちは辛くも彼女を退けますが、敵の本命はそこではありません。雷の派閥がダンジョン遠征で塔を空けた隙に破滅の書が総攻撃を仕掛け、狙いは塔を機能ごと掌握する「制御盤」の制圧でした。魔法の構築を封じる暗黒空間「魔の狩場」が展開され、魔法に頼り切っていた魔導士たちが無力化されるなか、剣士であるウィルだけが戦えます。クロイツが手傷を負い浮遊城が落ちる絶体絶命の戦場に、鮮やかな氷魔法が走りました。死んだはずのユリウス・レインバーグの帰還です。
天の鍵の正体、そして東の大都へ(15巻〜16巻の到達点)
敵の内通者チャールズを追ったウィルとリアーナは、塔の最上部である天辺へ辿り着きます。そこに封じられていた「天の鍵」は、世界を守るための聖遺物などではありませんでした。500年前に初代の至高の五杖が滅ぼしきれず封印した、天上の侵略者の王「破王バアル」そのものだったのです。人々が本物だと信じてきた空は五杖が支える大結界であり、その維持には封じた王の魔力が使われていました。破滅の書が偽りの空を剥ぎ取ろうとする理由も、塔が守ってきたものの正体も、ここでひとつに繋がります。封印を解こうとする敵の野望を食い止めた先で、16巻ではウィルに新たな勅令が下りました。炎帝の杖キャリオットが命じたのは、東の大都へ向かい破滅の書の策謀を断つこと。シオンたち各派閥から選ばれた仲間と、意外な同行者を伴って、ウィルは央都を離れ東の地へ発ちます。2026年8月時点の最新刊は、この旅立ちのところまでを描いています。
みさきガチ評価・徹底考察

- 静止画とは思えない戦闘描写と、ページをめくる手が止まる見開きの構図
- 溜めが長いぶん、覚醒の瞬間に感情が跳ね上がる設計
- ロスティ・フィン・天の鍵と、読み返すたびに拾い直せる伏線の層
- 序盤の設定に、他の学園ファンタジーとの既視感がある
「みさきの総評」 ー 王道を突き詰めた先に、まだ誰も見ていない空がある
既視感というハードルは確かにあります。それを画力と伏線の重さで押し切り、8巻の覚醒まで読めば別物だと分かる作品です。
「杖と剣のウィストリア」に残された三つの謎
この作品が王道バトルの枠に収まらないのは、大森藤ノが物語の下層に埋めた仕掛けが少しずつ顔を出すからです。ここでは読者の議論がとりわけ白熱している三点を取り上げます。

(マガポケ https://pocket.shonenmagazine.com/title/01271/episode/314731より引用)
ロスティの正体は、塔から差し向けられた目だった
ウィルのルームメイトとして身の回りを世話し、魔道具まで作って渡していたロスティ・ナウマン。読者が引っかかっているのは、この人物の言動に説明のつかない部分が多すぎることです。作中で明示された答えはまだありませんが、状況証拠は一方向を指しています。
まず属性です。ロスティが扱うのは水と氷であり、氷の派閥を率いるエルファリアと重なります。火を極端に嫌う性質も、氷の存在としてなら筋が通る。そしてウィルへ向ける愛情の濃度が、同室の友人という説明では収まりません。エルファリアは2歳のときに、本人と見分けがつかない分身を生み出す氷秘法「白の芸術」を編み出しています。塔の頂から動けない少女が、学院にいるウィルの様子を離れた場所から把握できていた点も、この読み方なら説明がつきます。
決定的なのは境界祭の後です。ロスティは特異種の刃に貫かれ、確かに消滅しました。ところが卒業式の日、無傷のまま学院の壁の上からウィルを見送っている姿が描かれます。そしてウィルが塔へ登ると、役目を終えたかのように登場しなくなる。もしこの説が正しければ、コミカルに見えていた世話焼きの一挙一動が、届かない距離にいる少女の切実さの表れだったことになります。守られていたのはウィルのほうで、その事実に本人だけが気づいていない。そういう構図です。
フィンは「ダンまち」のあの団長なのか
本作を語るときに必ず持ち出されるのが、大森藤ノのもう一本の代表作「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」との関係です。作中に現れる小人族の少年フィンは、あちらのロキ・ファミリア団長フィン・ディムナと名前が一致し、容姿も見分けがつきません。妖聖の派閥にはエルノール・エルリーフ・アールヴ、その側近としてフィルヴィスとレフィーヤが並びます。ここまで揃うと、単なる配役の使い回しで片付けるには数が多すぎます。
ただし本作のフィンには、あちらにない役割が与えられています。魔法を使えない身でありながらダンジョンの構造に通じ、至高の五杖の探索に欠かせない存在として扱われる。ウィルを「剣」と呼び、境界祭では封じられていた力の枷を外して覚醒を促しました。そして数百年前の魔女王メルセデスと、何らかの契約を結んでいる節があります。剣に関わる者を育てるという役目を負い、その延長でウィルの前に何度も姿を見せている。「インヴェス」という別の名を持ちながら、そちらで呼ばれることを嫌う点も引っかかります。
同一人物なのか、世界そのものが地続きなのか、あるいは名前と姿だけを借りた別の存在なのか。公式は現時点で何ひとつ断定していません。はっきりしているのは、フィンがウィルの力の出自を最初から知っていて、そのうえで彼を最悪の環境に置き続けたという事実です。導き手としては優しくない。けれど作品の底が抜けるとしたら、その穴はフィンの側にあります。
偽りの空の下に、世界を滅ぼす王が眠っていた
15巻で明かされた事実は、それまでの前提をひっくり返すものでした。塔の天辺に封じられていた「天の鍵」は、世界を守るための聖遺物ではありません。500年前に初代の至高の五杖が滅ぼしきれず封じた、天上の侵略者の王「破王バアル」そのものだったのです。
ここで効いてくるのが、この世界の空が本物ではないという設定です。人々が見上げている空は、代々の五杖が支えてきた大結界にすぎません。そしてその結界を維持する力の出どころが、封じられた王の魔力でした。つまり塔は、世界を滅ぼしかけた存在を燃料にして平和を回してきたことになります。上へ登るほど光に近づくと信じられてきた建物の、最も高い場所に最悪の災厄が置かれている。この上下の反転が、本作の構造として非常によく効いています。
破滅の書が偽りの空を剥ぎ取ろうとするのは、単なる破壊衝動なのか、それとも欺瞞を暴く行為なのか。結界が消えたとき、人類は本当に侵略者と戦えるのか。そしてウィルとエルファリアが幼い日に交わした「本物の空を一緒に見る」という約束は、二人の幸福であると同時に、世界の終わりと同義かもしれません。16巻で東の大都へ向かう旅が始まった今、この問いの重さは巻を追うごとに増しています。
登場人物・キャラクター分析
主要キャラクター
ウィル・セルフォルト

魔力を持たない「無能者」として蔑まれながら、鍛え上げた剣技と魔物への膨大な知識だけで戦い続ける主人公です。エルファリアと交わした塔の頂での約束を支えに、どれだけ理不尽を積まれても心が折れません。正しくは魔法が使えないのではなく、剣を通してのみ行使される「勇気」の魔法を宿しているという設定で、他者の魔法を剣に取り込む「装填」と、自分の記憶から引き出す「想填」の二つを使い分けます。塔では雷の派閥に所属し、世界の成り立ちそのものに関わる位置まで押し出されていきます。
エルファリア・アルヴィス・セルフォルト

史上最年少の15歳で至高の五杖「氷姫の杖」に就いた天才少女で、ウィルの幼馴染です。学院では聖女として崇められていますが、実像は驚くほど怠惰で、頭のなかはほぼウィルのことで占められています。水と氷の魔法をすべて操り、自ら編み出した十二の氷秘法が最大の武器。2歳で完成させた一の法「白の芸術」は、本人と見分けのつかない分身を複数生み出す技で、物語のいくつもの謎に影を落としている魔法でもあります。
コレット・ロワール

かつて至高の五杖を輩出しながら今は没落した土魔法の名家、ロワール家の後継者です。学院中がウィルを蔑むなかで、最初に彼の実力と人柄を認めた友人でした。魔導大祭ではウィルへ剣を投げ渡し、ユリウス戦では土魔法で援護するなど、勝敗を決める場面に必ず居合わせます。ウィルへの想いを抱えたまま、エルファリアに対しては隠しきれない対抗心をのぞかせるのも彼女らしいところ。卒業後は土の派閥に入り、高齢者ばかりの派閥で姫君扱いされて内心うんざりしています。
シオン・アルスター

炎魔法の名家に生まれたエリートで、高いプライドの裏に人一倍の努力を隠しています。当初はウィルを見下していた側でしたが、ダンジョンで命を救われ、目の前で超人的な近接戦闘を見せられたことで内心のライバル視が始まりました。総合実習では戦意を失ったウィルを殴り飛ばし、覚醒の引き金を引いています。塔では炎の派閥に所属。実はコレットに好意を寄せているものの、過去の行いが響いて空回りが続いています。
リアーナ・オーウェンザウス

「完璧才女」の異名を持つ学年首席です。騎士の家系オーウェンザウス家の出身で、魔法と白兵戦を組み合わせて味方の盾になる戦い方を受け継いでいます。ウィルの剣技を正当に評価し、総合実習のパーティへ引き入れたのも彼女でした。冷静な外見の裏には、家で「劣等者」と扱われてきた劣等感と、大食漢という抜けた一面が同居しています。塔ではウィルと同じ雷の派閥に入り、天辺での戦いにも並んで立ちました。
脇を固める重要人物たち
ロスティ・ナウマン

ウィルのルームメイトで、腕のいい魔工師です。中性的な外見と、同室の友人という説明では収まらない深い愛情を注ぎます。水や氷の魔法を扱い、ウィルの力について何かを知っている素振りを見せる場面もありました。境界祭でウィルを庇って貫かれ消滅したはずが、卒業式の日には無傷で姿を現しています。エルファリアの分身ではないかという読みの中心に立つ人物です。
ユリウス・レインバーグ

氷姫の後継者を目指す、学年トップスリーの一角です。エルファリアの一の法「白の芸術」を未熟ながら発動できた初めての魔導士で、氷の派閥から期待を寄せられていました。捻くれた物言いの裏は面倒見のいい性格で、ウィルと関わるうちにそちらが表に出てきます。派閥の内偵中に幼馴染エマの異変へ気づき、シェイドの手で殺害されたはずが、魔の狩場に沈む戦場へ氷魔法とともに帰還しました。
イグノール・リンドール

王族傍系の家に生まれたエルフでありながら、同族なら誰でも扱える幻想魔法を実体化できず、面汚しと蔑まれてきた少年です。妖聖の杖エルノールの乳兄弟でしたが、無能を理由に引き離された過去を持ちます。境遇がウィルと重なることから、ダンジョン実習での共闘を経て不完全だった魔法を克服しました。塔では妖聖の派閥に所属し、初日からエルノール直々に首輪を下賜されるという洗礼を受けています。
フィン

魔法を使えない小人族「光の一族」の少年で、至高の五杖のダンジョン探索を補佐しています。その名前と容姿が「ダンまち」のフィン・ディムナと重なることから、二作の関係を巡る議論の中心にいる人物です。ウィルを「剣」と呼んでその中に眠る力を見抜き、境界祭では枷を外して覚醒へ導きました。数百年前の魔女王メルセデスと何らかの契約を結んでいるとされ、剣に関わる者を育てる役目を負っています。
エドワルド・セルフェンス

闇魔法学を担当する学院教師です。かつて至高の五杖に手が届く寸前まで至りながら夢破れ、塔を去って教壇に立ちました。ウィルには誰よりも辛辣で、退学を賭けた試験まで課します。その厳しさは、このまま進めば教え子が自分と同じ挫折を味わうと分かっていたゆえのもので、嫌われることを承知の上での態度でした。卒業式では「剣」の魔法を示したウィルを、静かに送り出しています。
ゼオ・トルゼウス・ラインボルト
雷の派閥を率いる至高の五杖「雷公の杖」です。魔導士としては異色の筋肉質な体躯を持ち、魔法よりドワーフ仕込みの徒手空拳を好みます。欲しいものは我慢せず奪うという掟を掲げ、塔の魔導士たちからは蛮族扱い。ウィルの剣技を気に入り、氷の派閥へ入るはずだった彼を横から奪い取りました。その際にエルファリアと最上位魔法をぶつけ合い、決着がつかずジャンケン300戦目で勝利しています。
アロン・マステリアス・オールドキング
光の派閥を率いる至高の五杖「光皇の杖」で、144歳の生ける伝説です。ゼオを上回る暴力、キャリオットを上回る頭脳、エルノールを上回る魔力、エルファリアを上回る魔法技術を併せ持つとされ、それでも年齢による衰えがあるとされる規格外の存在。フィンを伴ってダンジョン深部の遠征に出ていることが多く、塔を留守にしがちです。揉め事をジャンケンで決めさせる茶目っ気もあります。
シェイド
破滅の書に属する、全身に紋様を刻んだ女性の魔導士です。他者の心の傷につけ込んで操る傀儡魔法の使い手で、弟を失った過去を抱えるエマ・クレバーを人形に変え、ユリウス殺害を実行させました。気を失ったウィルの記憶へ潜り込んだ際には、その最奥に魔女王メルセデスの姿を見つけ、強制的に弾き出されています。塔の内部で何を狙っていたのか、その全容はまだ明かされていません。
「既視感」が「この作品にしかない熱」に変わるまで
画力への驚嘆と、王道を貫く強さ
読者の声で最も数が多いのは作画への賞賛です。戦闘シーンの迫力とスピード感、見開きの構図の思い切りの良さに触れた感想が並び、アニメの映像美を経て原作へ戻り、書き込み量に改めて驚いたという読み手も少なくありません。「魔法が使えないという致命的なハンデを背負っているのに、画力の高さで押し切ってくる」という趣旨の評価もあり、絵の力が物語の説得力を底上げしている構図が見えてきます。
物語面では、見下してくる相手を実力で黙らせていく展開への支持が目立ちます。魔法より剣のほうがかっこいい、このまま世界を変えてほしいという素直な応援もあれば、ウィルが単なる身体能力の怪物ではなく、相手の魔法の弱点を頭で分析して崩す戦い方をしている点に感心する声もあります。ドワーフの歴史をめぐる挿話に胸を打たれたという感想も見かけました。魔法使い一人が味方一万人に匹敵する世界で、それでも立ち上がった種族の話です。
テンポの良さも支持されている点で、休みの日に読み始めないと徹夜になるという嬉しい悲鳴が寄せられています。ユリウスが戦場へ帰還した場面では、信じていた、泣いた、といった短い言葉が並びました。仲間の喪失と再会という落差が、この作品ならではの熱量を生んでいます。
既視感と血筋オチ ー 厳しい意見の向こう側
批判の筆頭は設定の既視感です。魔法学校という舞台と、魔法が使えない主人公が物理で無双する構図は他作品を連想させ、王道すぎてひねりがない、展開が読めるという厳しい評価が実際にあります。少年漫画的なキメ台詞に気恥ずかしさを覚えるという声も見かけました。序盤の理不尽ないじめ描写にストレスを感じて離脱する読者がいるのも事実です。
もうひとつ重い指摘が、覚醒後の落胆です。泥をすすってでも上へ行こうとする落ちこぼれの努力に惹かれていたのに、実は特別な血統と規格外の才能の持ち主だったと分かった瞬間、それまでの泥臭さの価値が薄れて見えたという感想があります。勇気の魔法という概念的な力の理屈が飲み込めない、精神論によるご都合主義に映るという声も同じ根から出ています。ウィルの言動へのモヤモヤ、たとえば自分をいじめていたシオンに無防備な善意で声をかける場面が、相手の誇りを踏んでいるのではないかという読み方も見られました。
ただ、こうした声の隣に「イライラしながらでも8巻まで辿り着いてほしい、その分だけすっきりする」という趣旨のコメントが並ぶのが本作の面白いところです。白銀解放に至る8巻を境に評価が反転した読者は多く、序盤の溜めが覚醒の爆発力を最大化するための布石だったと気づいたとき、この作品の設計の巧さが見えてきます。入口のハードルと、読み続けた先の報酬。その落差の大きさが、賛否の両方を生んでいます。
みさき疑問を解消(Q&A)
「杖と剣のウィストリア」について、読者からよく寄せられる質問をまとめました。気になるところから読んでみてください。
みさき「杖と剣のウィストリア」を一番お得に読む方法・まとめ
約束を信じる剣が、魔法の常識を割っていく
この作品の面白さを一言でまとめるなら、報われるまでの距離が長いぶん、報われた瞬間の衝撃が桁違いになるという設計に尽きます。魔力を持たない少年が蔑まれ続ける序盤は、正直なところ読んでいて苦しい。ただ、その苦しさの分量がそのまま、ウィルが剣を振り抜く場面での感情の跳ね幅に変換されます。
青井聖が描く戦闘は、止まった絵であることを忘れさせる熱量を持っています。そこへ大森藤ノが仕込んだロスティの素性、フィンとメルセデスの契約、天の鍵に封じられていたものといった伏線が重なり、読み返すたびに拾い直せるものが増えていく構成になっています。15巻で明かされた偽りの空の正体は、1巻の約束の意味まで書き換えるほどの一撃でした。
アニメ第2期が完走し、第3期の制作も決まった今が、原作に追いつく良いタイミングです。16巻(2026年8月時点)でウィルは東の大都へ発ちました。二人が塔の頂で見るはずの景色まで、ぜひ一緒に辿り着いてください。
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