元テロリストの島崎が平和な日本で新生活を始めるサスペンス漫画。戦場の記憶と日常の狭間で揺れる主人公の葛藤を鋭く描く。表面的な平和と水面下の闘争が交錯する世界で、人間性の回復と喪失のテーマに迫る。緊迫のアクションと繊細な心理描写が融合した独特の物語展開に、読者は息をのむ。
「平和の国の島崎へ」はどこで読める?
モーニングで連載中。
既刊6巻。おおよそ4ヶ月に1回のペースでリリース。
以下の方法で読むことができます
- 電子書籍:Kindle、eBookJapan、ブックライブなどで配信中。
多くの電子書籍ストアでは、無料で試し読みできます。 - 紙の書籍:全国の書店で発売中。オンライン書店でも購入可能です。

作品基本情報
タイトル:「平和の国の島崎へ」
原作:濱田轟天
著:瀬下猛
ジャンル:
アクション
ヒューマンドラマ
サスペンス
社会派
ターゲット読者層:
青年層(20代〜40代)
アクション漫画ファン
社会問題に関心のある読者
複雑な人間ドラマを好む読者
サスペンス要素を楽しみたい読者
登場人物
島崎 真悟(しまざき しんご)

島崎真悟は、本作の主人公で39歳の日本人男性です。9歳の時にパリ行きの飛行機で国際テロ組織LELのハイジャックに遭い、母を失い、自身は拉致されてLELによって特殊技能を叩き込まれ、戦闘工作員となりました。「霧(ネブロー)」という通り名で恐れられ、「半径100メートル以内に現れたら、敵の生存率は2パーセント」と言われるほどの凄腕の工作員でした。
30年の時を経て、LELからの脱出に成功し、日本に帰国した島崎は、元工作員たちと「コロニー」と呼ばれる寮で共同生活をしながら、平穏な暮らしを望んでいます。しかし、LELの追手や反社会的勢力との戦いを余儀なくされています。
島崎は、黒縁メガネ、鼻すじと左頰の傷が特徴で、全身には無数の傷や怪我の痕があります。漢字が読めず、一般常識に乏しい一方で、絵を描くことが好きで、つてをたどって漫画家の川本マッハのアシスタントを務めています。また、同僚の鳥海カオリの実家「喫茶ルパソ」でもアルバイトをしています。
平和な日常生活を送りたいという願望と、身に染み付いた戦闘能力のギャップに苦しむ島崎の姿が、本作の中心的なテーマとなっています。彼の成長や変化は、日本社会に適応しようとする努力と、過去の経験から完全には逃れられない現実との葛藤を通じて描かれています。
鳥海 カオリ(とりうみ かおり)

鳥海カオリは、漫画家・川本マッハのアシスタントで、ショートカットが特徴的な女性です。島崎真悟とはアシスタント仲間であり、仕事を探していた島崎を実家の「喫茶ルパソ」でアルバイトさせるなど、彼の日本での生活を支援する重要な人物です。
カオリには、大学受験を失敗し、浪人生活を経て家出した兄・高志がいます。この家族の事情が、物語の展開に影響を与える可能性があります。カオリは、島崎の異質な背景を知りながらも、彼を受け入れ、日常生活をサポートする役割を果たしています。彼女の存在は、島崎が平和な日本社会に溶け込もうとする過程で重要な意味を持っています。
川本 マッハ(かわもと まっは)
川本マッハは、島崎真悟と鳥海カオリがアシスタントとして働く漫画家です。島崎のような特殊な経歴を持つ人物を受け入れ、仕事を与えている点で、寛容で理解のある人物であることがうかがえます。
川本は、島崎に日本社会での新しい居場所と役割を提供する重要な存在です。彼の漫画制作の現場は、島崎が平和な日常生活を体験し、新しいスキルを学ぶ機会となっています。また、川本の存在は、芸術や創造性が持つ癒しの力を象徴しているとも考えられ、島崎の内面的な成長や変化に影響を与えている可能性があります。
SATA(サタ)
SATAは、島崎真悟が日本で出会う少年です。彼もまた、国際テロ組織LELによって兵として養成されている人物です。SATAは、島崎の過去を反映する鏡のような存在であり、島崎が自身の経験を通じて彼を救おうとする展開は、物語に重要な転換点をもたらします。
SATAと島崎の関係は、救う側と救われる側という単純な構図ではなく、互いの境遇や経験を通じて、両者が成長し変化していく可能性を秘めています。SATAの存在は、島崎の過去と現在を繋ぐ架け橋となり、彼が自身の経験をどのように活かし、次の世代を守るかという課題を提示しています。
トミ
トミは、島崎真悟の周囲の人物の一人です。島崎に対して「繋がりを持つこと」の重要性を説く人物として描かれています。
トミの言葉は、島崎が組織で教え込まれた「繋がりを持つことは死を意味する」という考えと対立し、彼の価値観や生き方に大きな影響を与えています。トミの存在は、島崎が新しい人間関係を構築し、平和な社会に適応していく過程で重要な役割を果たしています。彼の助言は、島崎の内面的な成長と、過去のトラウマからの解放を促す触媒となっています。
用語集
LEL(経済解放同盟)
LELは、「平和の国の島崎へ」に登場する国際テロ組織です。この組織の目的は、不当な搾取が存在しない世界の実現です。LELにとっての正義は「集中する富の分配と格差の現実的な是正」であり、国際社会とLELは50年も戦い続けています。
LELは優秀な工作員を時間をかけて育て上げ、世界中のあらゆるところに溶け込ませ、様々な役割を果たさせています。LELはいわば「潜在国家」であり、各国の中枢にも影響力を持つほどの組織です。
しかし近年は、LELから脱出し潜伏する者が増加しており、組織はこの状況を深刻に捉えています。脱出者に対しては厳しい報復を行う方針を取っており、物語の主人公である島崎真悟も、LELからの追手に追われる立場にあります。
戦闘工作員
戦闘工作員は、LELによって特殊な訓練を受けた人物を指します。物語の主人公である島崎真悟もその一人です。戦闘工作員は、幼少期からLELに拉致され、洗脳と徹底的な訓練を受けて育てられます。
彼らは高度な戦闘能力と工作技術を持ち、世界各地で様々な任務を遂行します。島崎の場合、「半径100メートル以内に現れたら、敵の生存率は2パーセント」と言われるほどの凄腕でした。
戦闘工作員は、一般的な常識や社会生活のスキルを欠いていることが多く、組織を離れて一般社会に適応することが困難な場合があります。島崎も日本に帰国後、漢字が読めないなど、日常生活に苦労する場面が描かれています。
コロニー
LELから脱出した元工作員たちが共同生活を送る場所を指します。物語の中で、島崎真悟も他の元工作員たちとともにこのコロニーで生活しています。
ここでは、同じ境遇を持つ者同士が集まり、一般社会への適応を試みています。
しかし、コロニーの存在はLELにとって脅威であり、組織はコロニーの捜索を強化しています。このため、コロニーで生活する人々は常に緊張状態にあり、平和な生活を送ることが困難な状況にあります。
霧(ネブロー)
霧(ネブロー)は、物語の主人公である島崎真悟の元戦闘工作員としての通り名です。この名前は、島崎の卓越した戦闘能力と、敵に対して姿を現さずに行動する様子を表現しています。
「霧」という名前は、島崎の存在が敵にとって捉えどころがなく、危険であることを示唆しています。LELの中でも特に恐れられる存在であり、その名前を聞くだけで恐怖を感じる者もいるほどです。
しかし、日本に帰国した島崎は、この「霧」という過去の自分から脱却し、平和な生活を送ることを望んでいます。物語は、戦闘工作員としての過去と、平和を求める現在の島崎の葛藤を描いています。
平和の国
「平和の国」は、物語のタイトルにも含まれる重要な概念です。この言葉は、主に日本を指しており、LELの活動や戦闘から離れた、穏やかな日常生活が送れる場所を象徴しています。
島崎真悟にとって、日本は30年ぶりに帰還した故郷であり、平和な生活を送ることができる理想の地です。しかし、物語が進むにつれて、この「平和の国」の中にも様々な問題や危険が潜んでいることが明らかになっていきます。
「平和の国」という概念は、島崎の理想と現実の乖離を表現する重要な要素となっています。LELの追手や、日本社会に潜む様々な問題に直面しながら、島崎は真の意味での「平和」を模索していきます。
あらすじ
島崎の帰国と新生活の始まり
30年ぶりに日本に帰国した島崎真悟は、39歳になっていました。9歳の時に国際テロ組織LELに拉致され、戦闘工作員として育てられた彼は、組織からの脱出に成功し、ようやく故郷に戻ってきたのです。
日本では、同じように組織を抜けた元工作員たちと「コロニー」と呼ばれる寮で共同生活を始めます。公安警察の監視下に置かれながらも、島崎は平和な暮らしを願い、喫茶店でアルバイトをしたり、漫画家のアシスタントを務めたりしながら、日本の文化や日常生活に少しずつ馴染もうと努力します。
LELの追手との壮絶な戦い
しかし、島崎の平穏な日々は長くは続きません。LELは脱出者に対して厳しい報復を行うことで知られており、島崎たちの身辺にもテロリストの追手が忍び寄ってきます。島崎は「霧(ネブロー)」という通り名で恐れられた凄腕の工作員でした。「半径100メートル以内に現れたら、敵の生存率は2パーセント」と言われるほどの実力の持ち主です。
LELは島崎の暗殺に特別予算を用意し、戦闘経験のある工作員に一個小隊のサポートを付けて送り込みます。島崎は、大切な人々との繫がりを捨てて逃げるか、それとも戦うかという決断を迫られることになります。
喫茶店での平和な日常
島崎は、同僚の鳥海カオリの実家である「喫茶ルパソ」でアルバイトをしています。ここでの仕事を通じて、島崎は少しずつ普通の生活に慣れていきます。店でコーヒーを淹れたり、掃除をしたりする日常は、戦場での過去とは対照的な穏やかなものです。また、海外で習得した異国料理の知識を活かし、喫茶店のメニューに新しい料理を提案することもあります。
このような平和な時間は、島崎にとって新鮮で貴重な経験となっていきます。しかし、その一方で、いつ平穏が破られるかという緊張感も常に感じています。
漫画家アシスタントとしての新たな挑戦
島崎は、つてをたどって漫画家の川本マッハのアシスタントとしても働き始めます。絵を描くことが好きな島崎にとって、これは自分の才能を活かせる新しい挑戦です。漫画制作の現場で、他のアシスタントたちと協力しながら作業する経験は、島崎に新たな人間関係と社会性を育む機会を与えます。
しかし、漢字が読めず、一般常識に乏しい島崎は、時に周囲から奇異の目で見られることもあります。それでも、不器用ながらも一生懸命に仕事に取り組む姿は、周囲の人々の心を徐々に開いていきます。
LELとの決戦
LELの追手が島崎の居場所を突き止め、大規模な攻撃を仕掛けてきます。島崎は、合理性を重んじるテロ組織の撤退を促すため、「リソースに著しい損失を与える」ことを決意します。彼は、自身の卓越した戦闘能力を駆使して、LELの暗殺部隊と激しい戦闘を繰り広げます。この戦いでは、島崎は30人以上のテロリストを殺害します。戦闘の描写は非常に生々しく、島崎が「殺すため」に洗練された技術を持っていることが明らかになります。この出来事は、島崎が平和を望みながらも、暴力から完全に逃れられない現実を浮き彫りにします。
SATAとの出会いと過去との対峙
島崎は、SATAという少年と出会います。SATAもまた、LELによって兵士として養成されている子供の一人でした。島崎は、自分の過去を重ね合わせるようにSATAを救出し、保護することを決意します。
島崎は自身の過去と向き合うことになります。SATAとの交流を通じて、島崎は自分が受けた教育や訓練の非人道性を改めて認識し、同時に人間性を取り戻す過程で周囲の人々から受けた支援の大切さを実感します。SATAを社会に戻すための努力は、島崎自身の「生き直し」のプロセスとも重なっていきます。
公安警察との緊張関係
島崎たちは、日本国内で公安警察の監視下に置かれています。公安は、元テロリストである島崎たちを潜在的な脅威とみなし、常に警戒しています。しかし、島崎が日本社会に適応しようと努力する姿や、時には危険な状況から一般市民を守る行動を取る様子を見て、公安の態度にも微妙な変化が生じていきます。一方で、島崎の高い戦闘能力や、彼を狙うLELの存在は、公安にとって頭の痛い問題でもあります。島崎と公安の関係は、信頼と警戒が入り混じった複雑なものとなっていきます。
島崎の内なる葛藤
平和な日本での生活を続ける中で、島崎は自身の内なる葛藤と向き合います。彼は心から平穏な生活を望んでいますが、体に染み付いた戦闘能力や、過去の経験から来る警戒心は簡単には消えません。時に、些細な出来事が彼の中にあるPTSDを刺激し、フラッシュバックに苦しむこともあります。また、周囲の人々との関係が深まるにつれ、自分の過去や正体を隠し続けることへの罪悪感も感じるようになります。
島崎は、平和を愛する一般市民としての自分と、冷徹な戦闘員としての自分との間で揺れ動きながら、真の自己を模索していきます。
地域社会との交流
島崎は、少しずつ地域社会との交流を深めていきます。喫茶店での仕事を通じて常連客と会話を交わしたり、地域のお祭りでお神輿を担いだりと、日本の文化や習慣に触れる機会が増えていきます。また、近所の子供たちと触れ合う中で、自身が失った子供時代を思い出すこともあります。
しかし、その一方で、島崎の異質な雰囲気や行動に違和感を覚える住民もいます。島崎は、自分の過去を隠しながらも、誠実に地域との関わりを持とうと努力を続けます。この過程は、島崎にとって新たな「家族」や「故郷」を見つける旅でもあります。
戦場への帰還カウントダウン
物語の中で、島崎が再び戦場に復帰するまでの日数がカウントダウンされています。これは、島崎の平和な日々が限られたものであることを示唆し、読者に緊張感と切なさを与える要素となっています。
カウントダウンが進むにつれ、島崎は自分の運命と向き合わざるを得なくなります。なぜ彼が戦場に戻らなければならないのか、その理由は明らかにされていませんが、おそらく大切な人々を守るため、あるいは過去の因縁に決着をつけるためではないかと推測されます。
このカウントダウンは、島崎の心の中で平和への願いと戦士としての宿命が激しく衝突する様を象徴しています。
今後の展望
島崎が戦場に復帰する理由とその過程が明らかになっていくと予想されます。LELとの最終的な対決や、公安との関係の変化、そしてSATAを含む周囲の人々との絆がどのように島崎の決断に影響するかが焦点になるでしょう。また、島崎の内面的な成長や、彼が求める「真の平和」の形も重要なテーマとなるでしょう。
カウントダウンが0になった時、島崎がどのような選択をし、どのような結末を迎えるのか、そして彼が最終的に「平和の国」で生きる道を見出せるのかが、物語の大きな焦点となっていくと考えられます。
見どころ
戦場と日常の狭間で揺れ動く主人公
本作の主人公・島崎真悟の複雑な心理描写が、この作品の最大の見どころだと思います。30年間もの間、国際テロ組織LELで戦闘工作員として生きてきた島崎が、突如として平和な日本の日常に投げ込まれる様子は、とても印象的です。
漢字が読めなかったり、一般常識に乏しかったりする島崎の姿は、時にコミカルで愛おしく感じられます。でも、LELの追手との壮絶な命の奪い合いや、戦場の死人の幻影に悩まされるシーンを見ると、胸が締め付けられるんです。平和な日常と過酷な戦場の記憶の間で揺れ動く島崎の姿に、読者は引き込まれていきます。
「平和の国」という皮肉なタイトル
作品タイトルの「平和の国」という言葉が、物語が進むにつれてどんどん皮肉に感じられてくるのも、この作品の魅力だと思います。表面上は平和な日本ですが、実際には国際テロ組織の工作員が潜伏していたり、公安が暗躍していたりと、水面下では激しい闘争が繰り広げられているんです。
この「平和」と「戦争」の境界線の曖昧さは、現代社会を鋭く批判しているように感じられます。私たちが「平和」だと思っている日常も、実は様々な闘争や矛盾に満ちているのかもしれない…そんなことを考えさせられます。
リアリティのある戦闘描写
本作の戦闘シーンは、非常にリアリティがあり、迫力満点です。特に、島崎が30人以上のテロリストを殺害するシーンは、衝撃的でした。頭部や臓器の急所に銃弾を撃ち込み刃物を突き刺す描写は、少年誌どころか青年誌でも滅多に見ないようなダーティで「殺した手応え」を伴う戦闘描写になっています。
この「殺すため」に洗練された暴力描写は、戦争や暴力の残酷さを赤裸々に描き出しています。読んでいて目を背けたくなるような場面もありますが、それこそが戦争の現実なのかもしれないと思わされます。
カウントダウンがもたらす緊張感
各話の最後に登場する「島崎が戦場に復帰するまでのカウントダウン」は、読者に常に緊張感を与え続ける仕掛けだと思います。平和な日常を手に入れつつある島崎が、再び戦場に戻らなければならないという運命。このカウントダウンは、島崎の平和な日々の儚さを象徴しているようで、胸が痛みます。
カウントダウンが進むにつれて、「なぜ島崎は戦場に戻らなければならないのか」「戦場とは具体的にどこなのか」といった疑問が膨らんでいきます。この謎が、読者を次の展開へと引き込む大きな要素になっているんです。
人間性を取り戻す過程
島崎が少しずつ人間性を取り戻していく過程も、この作品の大きな見どころです。喫茶店でアルバイトをしたり、漫画家のアシスタントをしたりと、普通の生活を送る中で、島崎は徐々に感情を取り戻していきます。
特に印象的だったのは、島崎が撮った写真のシーンです。戦場では人を殺すための道具だった目が、美しい風景を切り取るためのツールに変わっていく。この変化は、島崎の内面の変化を象徴しているようで、とても感動的でした。
しかし同時に、体に染み付いた「修羅の臭い」が暴力を呼び、それを解決するには暴力しか術がないという負の連鎖から抜け出せない島崎の姿も描かれています。この矛盾した状況に置かれた島崎の葛藤が、読者の心を掴んで離さないんです。
結論:人間の本質を問う物語
『平和の国の島崎へ』は、単なるアクション漫画ではありません。戦争と平和、暴力と非暴力、人間性の喪失と回復など、深いテーマを持った作品なんです。島崎の姿を通して、私たち読者は「人間とは何か」「平和とは何か」を考えさせられます。そして、現代社会の矛盾や、私たちが気づかないうちに加担している暴力について、深く考えさせられるのです。
「ファブル」との比較:世界観の違い

「平和の国の島崎へ」と「ファブル」は、似た設定ということもあり比較されることが多いですが、以下の点で異なります
トーン:「ファブル」がコメディ要素を含むのに対し、「平和の国の島崎へ」はより深刻で人間の悲哀を描きます。
ジャンル:「平和の国の島崎へ」はより大人向けで、リアルファンタジーとリアリズムの境界線上にあります。
テーマ:平和と正義の概念をより深く探求し、独特の視点を提供します。
背景:主人公は国際テロ組織から脱出した元戦闘工作員という設定です。
両作品は「カタギになったアウトロー」という設定を共有しつつ、それぞれ独自の解釈と展開を行っています。
感想・考察
LELの存在が問いかける現代社会の矛盾
『平和の国の島崎へ』に出てくるLEL(経済解放同盟)という組織が、現代社会の矛盾を鋭く突いていると感じました。この組織の目的が「不当な搾取が存在しない世界の実現」だっていうのが、すごく考えさせられるんです。
一見すると、LELの目的って正義のように聞こえますよね。でも、その手段が暴力的で非人道的。これって、私たちの社会にある「正義のための悪」みたいな矛盾を表しているんじゃないかって。
例えば、島崎が所属していたLELの部隊が、発展途上国で政情不安定な国の政府関係者を暗殺するシーンがありました。その目的は「富の再分配」だったんです。でも、その行為自体が新たな暴力と不安定さを生み出している。
結局、この作品は「目的は手段を正当化するのか」という難しい問いを投げかけているんだと思います。正義のためなら何をしてもいいのか、それとも手段にも正当性が必要なのか。島崎の葛藤を通して、私たち読者も一緒に考えさせられる。そこが、この作品の奥深さだと感じました。
「コロニー」が象徴する居場所の意味
島崎たち元LELメンバーが暮らす「コロニー」という場所が、すごく印象的でした。この「コロニー」って、単なる隠れ家以上の意味を持っているんじゃないかって思うんです。
「コロニー」は、戦場から逃れてきた人たちの避難所であり、新しい人生を始めるための出発点。でも同時に、過去から完全には逃れられない彼らの現状も象徴しているように感じます。
例えば、島崎が「コロニー」の仲間たちと日常会話をするシーン。一見普通の会話なんですが、ふとした瞬間に戦場の話題が出てきたり、体に刻まれた傷の話になったり。そういう場面を見ると、「コロニー」が彼らにとって安全な場所であると同時に、過去との接点でもあることがわかります。
結局、「コロニー」は、私たち一人一人の「居場所」を表しているんじゃないかな。過去を背負いながらも、新しい未来を目指す。そんな矛盾した思いが交錯する場所。それぞれの「コロニー」で、私たちは生きているんだって、そう感じました。
写真が語る島崎の内面の変化
島崎が写真を撮り始めるエピソードが、彼の内面の変化を如実に表していて、胸が熱くなりました。戦場では人を殺すための「道具」だった目が、美しいものを切り取る「表現者の目」に変わっていく。この変化が、島崎の人間性の回復を象徴しているんです。
最初、島崎が撮る写真はピンボケだったり、構図がおかしかったり。でも、彼は諦めずに撮り続けます。そして徐々に、風景や人々の表情を捉えた素敵な写真が撮れるようになっていく。この過程が、島崎の心の変化と重なって見えるんです。
例えば、喫茶店の常連客を撮った写真のシーン。最初は警戒心丸出しだった常連客が、島崎の真摯な姿勢に心を開いていく。そして島崎は、その人の笑顔を見事に捉えた一枚を撮ることができる。この瞬間、島崎の目が本当の意味で「人を見る目」になったんだって感じました。
結局、写真を撮るという行為は、島崎にとって世界を新しい視点で見直す機会だったんだと思います。人を殺すためではなく、人の魅力を引き出すために目を使う。その経験が、島崎の人間性を取り戻す大きなきっかけになったんじゃないかな。そう考えると、写真っていうツールの持つ力って、本当にすごいなって思います。
戦争と平和の境界線を問う物語
『平和の国の島崎へ』を読んで、戦争と平和の境界線って本当に曖昧だなと感じました。主人公の島崎が、テロ組織から脱出して平和な日本に帰ってくるんですが、その日本が実は全然平和じゃないっていう皮肉がすごく印象的でした。
表面上は平和な日常なのに、水面下では国際テロ組織の工作員が潜伏していたり、公安が暗躍していたり。これって、私たちが普段生活している世界と実は変わらないんじゃないかって思えてきて、ちょっと怖くなりました。
例えば、島崎が喫茶店でバイトしたり、漫画家のアシスタントをしたりする日常シーンの裏で、常に追手の気配があるんです。この緊張感のコントラストが、平和と戦争の境界線の曖昧さを上手く表現していると思います。
結局のところ、この作品は「本当の平和とは何か」を問いかけているんだと思います。表面的な平和だけじゃなく、心の中の平和も含めて、私たちは何を「平和」と呼ぶべきなのか。そんなことを考えさせられる作品でした。
人間性の喪失と回復の物語
島崎の人間性の喪失と回復の過程が、本当に心に響きました。30年間も戦闘工作員として生きてきた島崎が、少しずつ人間らしさを取り戻していく様子が丁寧に描かれていて、読んでいて胸が熱くなりました。
最初は漢字も読めず、一般常識もない島崎が、日常生活の中で少しずつ変わっていくんです。特に印象的だったのは、島崎が写真を撮るシーン。人を殺すための道具だった目が、美しい風景を切り取るためのツールに変わっていく。この変化が、島崎の内面の変化を象徴していて、すごく感動的でした。
でも同時に、体に染み付いた「修羅の臭い」が簡単には消えないっていう現実も描かれていて。人間性を取り戻すことの難しさ、でも諦めない島崎の姿に、勇気をもらえた気がします。
結局、人間性って簡単に失われるけど、取り戻すのはすごく大変なんだなって。でも、諦めなければ少しずつ取り戻せるんだっていう希望も感じられて。島崎の姿を通して、人間の強さと弱さ、両方を感じることができました。
カウントダウンがもたらす緊張感と物語の行方
各話の最後に出てくる「島崎が戦場に復帰するまでのカウントダウン」が、すごく効果的だと思いました。このカウントダウンのおかげで、読んでいる間ずっと緊張感が途切れないんです。
平和な日常を少しずつ手に入れつつある島崎が、結局は戦場に戻らなければならないという運命。このカウントダウンを見るたびに、島崎の平和な日々が儚いものだって思い知らされて、胸が痛くなります。
例えば、島崎が喫茶店の仲間たちと楽しそうに過ごしているシーンの後に、このカウントダウンが出てくると、その幸せが長続きしないんだって思わされて。でも、だからこそ今を大切に生きる島崎の姿に、より心を打たれるんです。
このカウントダウンが、物語にどんな結末をもたらすのか。島崎は本当に戦場に戻ってしまうのか、それとも何か別の展開があるのか。そんな疑問が、次の展開への期待を高めてくれます。
結局、このカウントダウンは、平和の儚さと、それでも今を精一杯生きることの大切さを教えてくれているんだと思います。私たちの日常も、実は同じようなものかもしれない。そう考えると、毎日をもっと大切に過ごさなきゃって思えてきました。

読者の声
テロリストに育てられた日本人の話
子供の時に、テロリストに育てられた日本人が主人公の話です。
主人公は、地味っぽいのですが、戦闘の能力は一流。
良い人っぽくて、普通を求めてはいますが、
やっぱり壊れているのかが不思議
象徴的なのは、テロリストのこの言葉
「正義とは世界の半分を敵に回す」
この考え方で生きざるを得なかった主人公の島崎がどうなるのか・・・
楽しみであり、ちょっと怖いです
hontoより引用
伝わるもの
強く見えない人が実は強いって、わくわくする。でも島崎さんはその力を望んで得たわけではなく、望まない場所からやっと祖国に戻ってきたらしい。どういうことがあって戻り、どういう状態なのかよくわからないけど、穏便に過ごすべきなかで力を使ってでもお手伝いした漫画家さんの作品を取り戻すっていうところで、この人の人間というか価値観が伝わる気がしてとてもよかった。
hontoより引用
島崎が過去を振り返る
助けたSATAの心を開くために、島崎が過去を振り返る巻です。
島崎だけでなく、コロニーのメンバーは、
SATAに自分を投影しているのかもおかしな関係ですが、少しずつほぐれていく感じと
島崎の周りに蠢く何かが気になります。過去編は、今の島崎から見ると、かなりいびつ
ただ、今のSATAのように、日本人であることを取り戻すには、時間が必要かも
ゆっくり、まわりの支えがあって、変わっていく島崎が、可愛いくもあり。
ただ、過去との裏返しなので、悲しい気もしますね
hontoより引用
「平和の国の島崎へ」をお得に読むには?
無料・試し読み
eBookJapanで試し読みできます。
試し読みの利点:
- 作品の世界観や魅力を事前に体験できます
- 作者の独特な表現や画力を直接感じ取れます
- 本編購入の判断材料として活用できます

お得に購入
eBookJapanでお得に購入できます。
キャンペーン、割引セールをチェック
会員登録は無料!初回は70%オフクーポンが貰えて3000円分無料に!
Tポイント獲得や、ポイント還元などがお得なキャンペーンが多数!
毎週金曜日のpaypayキャンペーンでさらにお得になる!
クーポンを利用すればまとめ買いでもお得に購入できる
\ 初回ログインで70%OFF!/
全巻セットを購入の場合は、漫画全巻ドットコムもおすすめ
電子書籍版と紙の書籍版の両方を取り扱い。好みの形式を選んで全巻セットを入手できます。
ポイント還元制度があり、お得に購入可能。
作者について
瀬下猛
せしも・たけし
1983年生まれ。新潟県出身。
2017年10月より、読むとショートを守りたくなる漫画『ショート黒松』(全1巻)を短期集中連載。同年12月より源義経がチンギス・ハーンになるまでを描いた『ハーン ―草と鉄と羊―』 を全12巻連載。2021年2月よりプロラグビー漫画『インビンシブル』(全5巻)を連載。
作者のSNSリンク
「平和の国の島崎へ」まとめ
- 「平和の国の島崎へ」はモーニングで連載中
- 作者:原作 濱田轟天、著 瀬下猛
- コミックス情報:現在6巻まで発売、連載中。おおよそ4ヶ月に1回のペースでリリース
- 読むには:割引クーポンを使えば、eBookJapanでお得に読める
- 作品の魅力:戦闘工作員から一般市民への移行を描く独特な物語。緊張感と日常性の絶妙なバランスが最大の魅力
- ファブルとの類似性:「カタギになったアウトロー」という設定を共有しつつ、それぞれ独自の解釈と展開を行っている。
- キャラクター:主人公の島崎真悟は、驚異的な戦闘能力を持ちながらも平和な生活を渇望する複雑な人物像。鳥海カオリは島崎の日常生活を支える重要人物
- テーマ性:平和と正義の概念を深く探求し、社会復帰の困難さや「居場所」の問題を描く
- ジャンルの新規性:アクション、ヒューマンドラマ、サスペンス、社会派要素を併せ持つ野心的作品。青年層(20代〜40代)、アクション漫画ファン、社会問題に関心のある読者に向いている
- 読者の感想:主人公の複雑な背景と内面描写、アクションシーンの迫力、日常と非日常のコントラストが高評価