浦沢直樹が描く近未来SF「PLUTO」。世界最高水準のロボット7体を中心に、人間とロボットの共存、戦争の影響、そして謎の連続殺人事件が絡み合う壮大な物語。手塚治虫の名作「鉄腕アトム」をベースに、深遠なテーマを探求する傑作マンガの世界へ。
「PLUTO」はどこで読める?
「PLUTOア」はビッグコミックオリジナルで連載、コミックスは8巻で完結しています。
手塚治虫による『鉄腕アトム』の人気エピソード「地上最大のロボット」を原作としたリメイク作品。
第9回「手塚治虫文化賞」マンガ大賞、第9回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞、第41回「星雲賞」コミック部門受賞作品。宝島社「このマンガがすごい!」2006年版オトコ編1位、フリースタイル「このマンガを読め!2005」1位に選出された。2023年10月26日、Netflix独占配信でアニメ化。
以下の方法で読むことができます
- 電子書籍:eBookJapan、ブックライブ、hontoなどで配信中。
多くの電子書籍ストアでは、無料で試し読みできます。 - 紙の書籍:全国の書店で発売中。オンライン書店でも購入可能です。
8巻完結
作品基本情報
タイトル:「PLUTO」
漫画:浦沢直樹
「PLUTO」は、手塚治虫の名作「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」編をリメイクした、浦沢直樹による SF ミステリーマンガです。未来の世界を舞台に、高度に発達したロボットと人間が共存する社会で起こる一連の殺人事件を軸に、深遠なテーマを探求します。
ジャンル:
SFミステリー
近未来SF
ロボット小説
社会派漫画
哲学的漫画
対象読者層:
SF愛好者
ミステリーファン
手塚治虫作品のファン
浦沢直樹作品のファン
社会問題や哲学的テーマに興味がある成人読者
人工知能や技術の進歩に関心がある読者
戦争や平和について考えたい読者
主要キャラクター
ゲジヒト
ユーロポールの特別捜査官ロボット。世界最高水準ロボット7体の1つ。冷静沈着な性格だが、過去の記憶に悩まされることもあります。妻のヘレナとともに暮らしています。
アトム
少年の姿をした世界最高水準ロボット。感情豊かで思慮深く、人間の子供たちと共に学校に通っています。平和を愛し、ロボットと人間の共存を願っています。
ウラン
アトムの妹ロボット。元気で直情的な性格ですが、優しい一面も持っています。遠距離にある生物の感情を察知する能力を持っています。
PLUTO(プルートゥ)
物語の中心となる謎の存在。ロボットと人間を問わず、多くの殺人事件を引き起こしています。その正体はアブラー博士の息子サハドで、戦争によって深い憎しみを抱いています。
天馬博士
アトムの創造者。天才的な科学者ですが、息子を失った悲しみから、完璧なロボットを作るには憎悪が必要だと考えるようになります。物語の鍵を握る重要な人物です。
アブラー博士
ペルシア王国出身のロボット研究者。戦争で深い傷を負い、息子のサハドをPLUTOとして再生させました。物語の重要な背景を形成する人物です。
あらすじ
物語は、スイスの山案内ロボット・モンブランが謎の存在によって破壊されるという衝撃的な事件から始まります。同時期に、ドイツではロボット法擁護団体の幹部、ベルナルド・ランケが殺害されます。両事件の現場には、2本の角が生えたような痕跡が残されていました。
ユーロポールの特別捜査官ロボット・ゲジヒトが捜査を開始します。調査を進める中で、ゲジヒトは世界最高水準の7体のロボットが狙われていることを知ります。彼は各ロボットに警告を与えるため、世界中を旅することになります。
一方、日本では少年型ロボットのアトムが、法学者殺害事件の捜査に関わります。アトムもまた、世界最高水準のロボットの一体です。彼は事件の背後にある「PLUTO(プルートゥ)」という存在の謎に迫っていきます。
物語が進むにつれ、4年前に起きた第39次中央アジア紛争の影響が明らかになっていきます。この戦争で深い傷を負った人間とロボットたちの過去が、現在の事件と密接に関わっていることが分かります。
ゲジヒトとアトムの調査が進む中、次々と世界最高水準のロボットが破壊されていきます。音楽家のノース2号、格闘家のブランド、平和主義者のエプシロンなど、それぞれ個性豊かなロボットたちが、PLUTOの標的となります。
やがて、PLUTOの正体がアブラー博士の息子サハドであることが明らかになります。サハドは戦争で深い憎しみを抱き、それがPLUTOとして具現化したのです。アトムは最終的にPLUTOと対峙し、憎しみの連鎖を断ち切ろうと試みます。
物語のクライマックスでは、地球を破壊する可能性のある反陽子爆弾の脅威が浮上します。アトムとPLUTOは協力して、この危機を回避しようと奮闘します。
最後に、アトムは人間とロボットの共存、そして憎しみを乗り越えることの大切さを再確認します。物語は、未来への希望を示唆しつつ幕を閉じます。
「PLUTO」アニメ化について
2023年2月、本作にもとづいてNetflixオリジナルアニメシリーズが製作され、同年に公開されることが発表された。同年10月26日より配信開始。
見どころ
「PLUTO」の最大の見どころは、手塚治虫の名作をベースにしながら、浦沢直樹独自の解釈と現代的な視点を加えた重層的な物語構造にある。ロボットと人間が共存する近未来社会を舞台に、単なるSFやミステリーの枠を超えた深遠なテーマを探求している点が秀逸である。
特筆すべきは、ロボットの描写だ。主人公のゲジヒトをはじめ、アトムやその他の高度なロボットたちは、人間以上に人間らしい感情や葛藤を抱えている。この設定により、「人間とは何か」「意識とは何か」といった哲学的な問いかけが自然と物語に織り込まれている。
また、第39次中央アジア紛争という架空の戦争を背景に据えることで、現実世界の戦争や紛争の問題を鋭く映し出している。戦争がもたらす憎しみの連鎖と、それを乗り越えようとする登場人物たちの姿は、読者に深い感動と思索を促す。
浦沢直樹の繊細かつ緻密な作画も本作の大きな魅力だ。ロボットでありながら人間的な表情を見せる登場人物たち、未来的でありながら現実味のある世界観、そして緊迫したアクションシーンなど、その描写力は読者を物語の世界に引き込む力を持っている。
さらに、「PLUTO」は単なるリメイク作品ではなく、原作の本質を捉えつつ新たな解釈を加えた「再創造」とも言える作品である。これにより、手塚ファンはもちろん、現代の読者にも強く訴えかける普遍的なメッセージを持つ作品となっている。
結論として、「PLUTO」は高度なエンターテインメント性と深い思想性を併せ持つ、現代マンガの最高峰の一つと評価できる作品である。SFやミステリーファンはもちろん、人間の本質や社会問題に興味を持つ読者にも強くお勧めしたい傑作だ。
感想・考察
「PLUTO」は、単なるエンターテインメント作品を超えた、現代社会への鋭い批評性を持つ作品として評価できる。特に注目すべきは、本作が提起する「人工知能と人間の関係性」という問題だ。高度に発達したロボットと人間が共存する世界を描くことで、現実社会における AI の進化と人間社会への影響を先取りして問いかけている。
また、本作は戦争の影響を深く掘り下げている点で秀逸である。第39次中央アジア紛争という架空の戦争を背景に据えることで、現代の紛争や戦争がもたらす深刻な影響を、SF の文脈を通じて鮮やかに描き出している。これは単なる反戦メッセージを超えて、戦争が個人や社会にもたらす長期的な傷跡を浮き彫りにする試みとして評価できる。
さらに、本作における「記憶」のテーマは特筆に値する。ゲジヒトが自身の記憶に悩まされる描写や、PLUTOの正体がサハドであることの明示は、記憶が個人のアイデンティティ形成にいかに重要であるかを示唆している。これは現代社会における「記憶と忘却」の問題、さらには個人情報やプライバシーの問題にも通じる重要なテーマだ。
本作の構造面での特徴として、ミステリー要素とSF要素を巧みに融合させている点も高く評価できる。連続殺人事件の謎解きというミステリーの枠組みを用いつつ、そこにロボット社会というSF的要素を織り交ぜることで、読者を飽きさせない巧みな物語展開を実現している。
最後に、本作が「憎しみ」と「和解」というテーマを深く掘り下げている点も重要だ。PLUTOの正体が明らかになり、アトムがそれと対峙する過程は、憎しみの連鎖を断ち切ることの難しさと重要性を示唆している。これは現代社会における分断や対立の問題にも通じる普遍的なテーマであり、読者に深い思索を促す。
総じて、「PLUTO」は高度な文学性と社会性を併せ持つ傑作であり、現代マンガの到達点の一つと評価できる。SF、ミステリー、哲学、社会批評といった多様な要素を高次元で融合させた本作は、21世紀の名作として長く読み継がれていくだろう。
読者の声
鉄腕アトム「地上最大のロボット」のリメイク
リメイクやコミカライズの様に、名の知れた原作ありきの作品は、
えてして出来の悪い贋作になるものですが、この作品はさにあらず
主人公であるアトムを安易に動かさず、ロボット刑事ゲジヒトを中心に据え、
骨太なサスペンスに仕上がってます
レビュワー同様、原作を知っている世代だと、
物悲しくも多々のロボットの出るアクション物を想像すると思います
ですが、今作はゲジヒトを中心に物語が展開し、
今巻では謎の殺人(言うてもロボット=人権がある=ですが)を追います
モンブラン等、原作のイメージを色濃く残す、所謂ロボットなタイプも居ますが、
ゲジヒトやアトム等、人間そのものなタイプも多数出てきます
人間とロボット、ロボット同士の関わりは、涙を誘うだけでなく、
考えさせられる事も多々あるでしょう
ゲジヒトは刑事故に事件を追っていくのですが、
その最中でロボットであるのに何故か見る夢の謎や、
ゲジヒト含め大量破壊兵器足りうる世界最高のロボット達の、
目覚め始めた新しい感情なども織り込まれていきます
地上最大のロボットを骨子に、オリジナリティ溢れる視点と流れの傑作と思います
アトムファンも漫画ファンも、納得の素晴らしい作品だと思います
Amazonより引用
ネタバレなし感想
1〜3の引きもすごかったが、4の引きも絶大。物語にぐいぐい引っ張られる。
常に次のページが気になる。
ページを先に進めるたびに、過去の巻を読み返したくなる。
(原作と比べて)こう来たか!と浦沢氏の表現方法に唸る。
既刊と同じく読み切り的な短編も挟まれているが、全ての物語がひとつの結末に
つながると思うと続刊が気になってしょうがない。
だが、物語の先を想像するのもまた楽しい。
私はこの漫画に出会えたことを感謝する
Amazonより引用
完成度が高過ぎて比較対象を探すのが難しい
エピソードの1つ1つのシーンが詩的で感情を揺さぶる秀逸な描写力に終始圧倒される。
読者それぞれの人生の中で大切にすべき事を改めて見出すきっかけを与えてくれる、そんな本です。超えざる何かを超えてしまってます。
Amazonより引用
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作者について
浦沢直樹
うらさわなおき
漫画家。男性。
1960年、東京都に生まれる。幼少期に手塚治虫の漫画を読んだことにより、漫画を描き始めるようになる。小学校の頃、初めて長編漫画『太古の山脈』を描き上げた。 中学校では陸上部に入るが、すぐに軽音楽部へ転部し、吉田拓郎とボブ・ディランに影響を受ける。高校、大学も軽音楽部に所属する一方、漫画も描き続けていた。 就職活動時に小学館に編集者としての面接を受け、持参していた漫画『Return』が新人賞に入選。1983年、「ゴルゴ13 別冊」にて『BETA! 』を発表して漫画家デビュー。翌1984年には『踊る警官』を初連載する。さらに翌1985年には「ビッグコミックオリジナル」で『パイナップルARMY』を連載開始し、元傭兵を扱った内容で多くのファンを獲得した。 1986年には「ビッグコミックスピリッツ」にて『YAWARA!』を連載し大ヒット、1989年にはテレビアニメ化され、社会現象を巻き起こす。1988年には「ビッグコミックオリジナル」にて『MASTERキートン』を連載、1998年にテレビアニメ化された。1994年には「ビッグコミックオリジナル」にて『MONSTER』を連載し、2004年にテレビアニメ化され、その衝撃的な内容に多くの人がのめり込んだ。そして1999年に「ビッグコミックスピリッツ」にて『20世紀少年』の連載を開始して大ヒット。この作品は2008年から2009年にかけて、堤幸彦監督、唐沢寿明主演で実写映画化され3部作で公開された。2003年には「ビッグコミックオリジナル」にて、手塚治虫の『鉄腕アトム』で描かれた「地上最大のロボット」を原作とした『PLUTO』の連載し、2012年には「ビッグコミックオリジナル」にて『MASTERキートン』続編『MASTERキートン Reマスター』を連載した。これらコミックスの売り上げは、累計で1億部を突破している。 また、1999年に『MONSTER』で第3回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞し、2005年に『PLUTO』第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞している。この手塚治虫文化賞を2度受賞している漫画家は、浦沢直樹ただ1人である。
作者のSNSリンク
「PLUTO」はどこで読める?総括
- 連載状況:「PLUTO」はビッグコミックオリジナルで連載していた
- 作者:浦沢直樹
- コミックス情報:全8巻で完結している
- 受賞歴:
第9回「手塚治虫文化賞」マンガ大賞
第9回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞
第41回「星雲賞」コミック部門
宝島社「このマンガがすごい!」2006年版オトコ編1位
フリースタイル「このマンガを読め!2005」1位 - 手塚治虫の『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」編をリメイクした作品
- 2023年10月26日にNetflix独占配信でアニメ化された
- 読むには:eBookJapan、ブックライブ、hontoなどの電子書籍ストアや、全国の書店で購入可能
- 作品の魅力:
手塚治虫の名作をベースにしながら、浦沢直樹独自の解釈と現代的な視点を加えた重層的な物語構造
ロボットと人間が共存する近未来社会を舞台に、深遠なテーマを探求
浦沢直樹の繊細かつ緻密な作画
ミステリー要素とSF要素を巧みに融合させた物語展開 - キャラクター:
ゲジヒト:主人公のロボット刑事。冷静沈着だが過去の記憶に悩まされる
アトム:少年型ロボット。感情豊かで思慮深い
PLUTO:物語の中心となる謎の存在。正体はアブラー博士の息子サハド - テーマ性:
人工知能と人間の関係性
戦争がもたらす影響と憎しみの連鎖
記憶とアイデンティティ
人間とは何か、意識とは何かという哲学的問い - ジャンルの新規性:SFミステリーの枠を超え、社会問題や哲学的テーマを探求する作品。SF愛好者、ミステリーファン、手塚治虫作品のファン、社会問題や哲学的テーマに興味がある成人読者に向いている
- 読者の感想:
原作のリメイクとしての独自性と完成度の高さを評価
物語の展開に引き込まれる
人間とロボットの関係性や戦争の影響など、考えさせられるテーマ性を評価
浦沢直樹の描写力に感銘を受ける読者が多い - 今後の展望:作品は完結しているが、アニメ化により新たな読者層の獲得や、作品の再評価が期待される