
身体を奪われ、殺人未遂の罪まで着せられた雛女が、地下牢で最初に思ったのは「息が切れない」でした。「ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」は、そんな規格外のヒロインが、自分を陥れた相手と最強の親友になっていく中華風後宮バディ譚です。
この記事では、漫画10巻が描き切った鑽仰礼編までを一気にネタバレ解説します。朱貴妃の失脚のあとに控える黒幕の気配、玲琳の虚弱体質が治らない理由、三度も繰り返される入れ替わりの行方まで踏み込みました。原作小説だけが先に描いている展開と、2026年7月に始まったTVアニメの情報もあわせてお届けします。
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「ふつつかな悪女ではございますが」あらすじ・ネタバレ
作品名:ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~
作者:中村颯希(原作)/尾羊英(漫画)/ゆき哉(キャラクター原案)
出版社:一迅社(ZERO-SUM COMICS)
ステータス:連載中
巻数:既刊10巻(2026年8月時点)
連載媒体:月刊コミックZERO-SUM(ゼロサムオンライン)
メディアミックス
TVアニメ ー 2026年7月12日から放送中

TVアニメは2026年7月12日にスタートし、テレビ東京系列で毎週日曜の深夜に放送されています。当初は同年4月放送の予定でしたが、制作進行の都合で3か月ずれ込みました。制作は動画工房、監督は山﨑みつえさんが務めています。黄玲琳を石見舞菜香さん、朱慧月を川井田夏海さんが演じ、オープニング主題歌はmiletさんの新曲です。入れ替わったあとの「身体の声」と「心の声」を別々の声優が担当する音響設計になっており、原作を読んでいる人ほど演出の狙いが伝わる作りになっています。
原作小説はどこまで進んでいるのか ー 漫画版との差は約6巻分
物語の出発点は、中村颯希さんが「小説家になろう」で連載していたWeb小説です。書籍化にあたって一迅社ノベルスから刊行され、2026年8月時点で本編12巻まで進んでいます。なお、なろうに載っていた本編は2021年4月に公開を終了しており、現在は書籍版でしか読めません。番外編のみが残されている状態です。
漫画版が到達している鑽仰礼編は、小説でいえば5〜6巻あたりに相当します。つまり文字のほうが6巻ほど先を走っている計算になります。小説側ではすでに、お忍びの城下町編、皇帝の二十五年前の因縁が明かされる鎮魂祭編、そして高級妓楼への潜入捜査が描かれる金領編まで進んでいます。漫画の続きが待ちきれない人は小説版へ、絵で表情の変化を追いたい人は漫画版へ、という住み分けになるはずです。
2026年8月31日には「掌編集1」の刊行も控えており、本編では拾いきれなかった小話がまとめて読める形になります。長く追ってきた読者向けの一冊です。
あらすじ ー 身体を奪われた雛女が、なぜか大喜びする話
詠国の後宮には、次代の妃を育てるための「雛宮」があります。五つの名家から集められた少女たちは雛女と呼ばれ、次期皇后の座をめぐって静かに競い合っていました。その筆頭が黄家の玲琳です。皇太子・尭明から「殿下の胡蝶」と讃えられる才色兼備の少女ですが、彼女には誰にも言えない事情がありました。息をするだけで倒れかねない極度の虚弱体質を、完璧な微笑みの下に隠し続けていたのです。
その玲琳を、灼けるような目で見ている少女がいました。朱家の雛女・慧月。そばかすの残る容貌と冷遇された生い立ちから、雛宮では「どぶネズミ」と呼ばれ蔑まれてきた娘です。彼女は独学で禁忌の道術を身につけ、乞巧節の夜、ついに玲琳を高楼から突き落として身体と魂を入れ替えてしまいます。
慧月の身体に押し込められた玲琳は、殺人未遂の罪人として地下牢へ放り込まれました。誰もが彼女の絶望を疑いませんでした。ところが玲琳の反応は、まるで逆だったのです。生まれて初めて手にした健康な身体に歓喜し、追放された廃屋での自給自足生活さえ楽園として満喫し始めます。
一方、念願の美貌を手に入れたはずの慧月は、その身体の壮絶な痛みに打ちのめされていきます。奪ったものの正体を知ったとき、二人の関係は思いもよらない方向へ転がり始めました。
ネタバレあらすじ ー 朱貴妃の正体から、鑽仰礼で三度目に入れ替わるまで
【ネタバレ注意】「ふつつかな悪女ではございますが」の最新話まで読む(タップで開きます)
獣尋の儀と、鋼の精神の正体(1巻・第一幕)
慧月の身体に入った玲琳は、殺人未遂の罪人として後宮の伝統的な審判「獣尋の儀」に引き出されます。猛獣の檻へ放り込まれる処刑同然の儀式でしたが、玲琳は襲いかかってくる獣がハチミツを塗られた豚にすぎないことを、匂いと習性から見抜いて無罪を勝ち取りました。一方、玲琳の身体を得た慧月は、想像を絶する高熱と全身の痛みに叩きのめされます。この苦痛を毎日笑顔の下に隠していたのかと、慧月は初めて自分が奪ったものの重さを理解しました。憎んでいた相手が、実は誰よりも過酷な生を送っていたという事実が、彼女の足元を崩していきます。
あばら家の楽園と、冬雪の目(1〜2巻・第一幕)
無罪となった玲琳ですが、騒動を嫌った後見人の朱貴妃によって、元食糧庫のあばら家へ事実上の追放処分を受けます。ところが玲琳は少しも堪えず、農業と生活の知識を総動員して荒れ果てた住まいをたちまち作り変えてしまいました。嫌がらせのために送り込まれた下級女官の莉莉さえ、その逞しさに絆されて忠誠を誓う始末です。そんな頃、玲琳の筆頭女官である黄冬雪が、玲琳の身体にいる慧月へ刃物を突きつけて偽物であることを暴きます。冬雪は本物の玲琳がどこにいるのかを見抜き、最も心強い共犯者として彼女の側に立ちました。
蟲毒と破魔の弓 ー 朱貴妃の失脚(2巻・第一幕の決着)
後宮に呪詛が広がり、玲琳の身体にいる慧月が蟲毒によって危篤に陥ります。玲琳は自分を殺しかけた相手を救うため、手が血まみれになるまで破魔の弓を引き続け、病魔を祓いました。この行動を目にした冬雪、辰宇、尭明は、中身が玲琳であることを確信します。慧月は深く悔い、二人のあいだに友情の芽が育ち始めました。やがて一連の呪詛の黒幕が、慧月の後見人である朱貴妃・雅媚であったことが明るみに出ます。雛女時代の皇后と親友だった彼女が抱えた悲しい憎悪が、慧月を道具として使わせていたのです。呪詛は雅媚自身へ跳ね返り、二人は元の身体を取り戻して第一幕が幕を下ろしました。
南領外遊 ー 誘拐、疫病、決死の外科手術(3〜4巻・第二幕)
雛女となって初めての外遊先として、慧月の故郷である南領での豊穣祭が決まります。後見の妃を失った慧月は準備に追われ、玲琳は全力でそれを支えました。ところが何者かの執拗な妨害を受けた慧月は焦りから道術を暴走させ、二人は再び入れ替わってしまいます。混乱に乗じて南領の邑の民が慧月を攫おうとしたため、玲琳は慧月の立場を守るべく自ら人質となり、兄とともに邑へ潜入しました。そこで玲琳は農業知識で田を耕して村人の信頼を勝ち取り、水の汚染を突き止めて痢病の流行を封じ込めます。頭領の雲嵐が腹部を刺されたときには、附子を麻酔代わりに臓腑を縫合する外科手術まで敢行し、彼の命を繋ぎ止めました。
鑽仰礼の激闘と、公明正大な復讐劇の号砲(5〜10巻・10巻の到達点)
外遊から戻った雛女たちを待っていたのは、序列を決める中間審査「鑽仰礼」でした。皇帝や重鎮が直々に審査する場で、各家の思惑が生々しく交錯します。序列に興味のない玲琳は緊張する慧月を励まそうとしますが、些細な行き違いから二人は大喧嘩に発展してしまいました。そこへ何者かによる卑劣な課題妨害が仕掛けられ、玲琳は命の危機に晒されます。駆けつけた慧月に救われた拍子に、三度目の入れ替わりが発生しました。この騒動の裏に后妃たちの策略があること、そして三年前に姉を火あぶりで喪った玄家の雛女・歌吹が復讐心を燃やしていることを知った玲琳は、静かに怒りを露わにします。清佳や芳春ら他家の雛女まで巻き込み、後宮の汚泥を洗い流すための反撃が始まったところで、漫画10巻は幕を閉じました。
原作小説では、この先にこんな展開が待っています
小説版では鑽仰礼の決着として、五家の雛女が結束して祈禱師・安妮の悪行を暴きます。続く城下町編と鎮魂祭編では、皇帝・弦耀が二十五年ものあいだ抱え込んできた因縁が物語の中央へせり出してきました。さらに衝撃が大きいのは金領編で、三人の雛女が高級妓楼へ潜入する過程で、清佳の幼なじみである琴瑶の過酷な運命が描かれます。そして最新の巻では、玲琳自身に迫る死期という重い秘密が明かされ、慧月が「入れ替わったまま身代わりになる」覚悟を固めるところまで進んでいます。漫画版がこの領域へ踏み込む日が、いずれ必ず来るはずです。
この場面は10巻。コミックシーモアなら10巻から読めます。
みさきガチ評価・徹底考察

- 逆境を健康な身体ひとつで踏み倒していく玲琳の突き抜けた前向きさが、読んでいて元気になる
- 加害者と被害者から始まった二人が、痛みを肉体ごと交換して対等な親友になる過程が丁寧
- 呪いや奇跡ではなく、医療と農業と物理の知識で陰謀を叩き潰す解決の仕方が気持ちいい
- 中華風の後宮用語と五家の人名が序盤に集中するため、人物関係の把握に少し時間がかかる
「みさきの総評」 ー 笑って読める後宮劇の、底に沈んでいるもの
コメディの顔をしていますが、玲琳の明るさが何で出来ているかを知った瞬間に読み方が変わる作品です。
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物語の底に沈む三つの問い

入れ替わりコメディとして読み始めた人ほど、途中でいくつもの重い問いが仕込まれていたことに気づきます。漫画10巻までに提示された材料と、小説側で先に明かされている情報をもとに、読者のあいだで議論が続いている三つの論点を整理します。
玲琳の虚弱体質は、体質ではなく呪いなのでしょうか
第一幕で慧月が玲琳の身体に入った際、彼女を襲ったのは高熱と全身を貫く痛みでした。演技でも気の持ちようでもなく、明確な身体の異常として描かれています。ここまでは確定した事実です。
引っかかるのは、朱貴妃の呪詛が解けたあとも症状が一切改善していない点です。呪いが原因なら、黒幕の失脚とともに軽くなってよいはずでした。そして慧月の身体に入っている間の玲琳は、走り回っても平気なほど健康に過ごしています。魂ではなく肉体に問題があるように見えて、しかしその肉体の弱さに医学的な説明がつかない。この宙吊りの状態が10巻時点まで続いています。
読者のあいだでは、玲琳の運命そのものに何かが憑いているという読みが根強くあります。小説版では「揺り戻し」と呼ばれる激しい病魔が彼女を襲う場面が描かれ、単なる持病では片付かない領域へ物語が入っていきました。周囲の人々が玲琳自身ではなく亡き母の面影を重ねて彼女を愛してきたこと、玲琳もまた母の命を無駄にしないために幸福な自分を演じ続けてきたことが、そこで示唆されます。身体の弱さと自己犠牲の精神が地続きだったと分かるとき、第一幕の何気ない笑顔の意味が丸ごと反転するはずです。
朱貴妃の失脚は、事件の終わりではなく始まりでした
第一幕で暴かれた黒幕は、慧月の後見人である朱貴妃・雅媚でした。雛女時代の皇后と親友だった彼女が、悲しい経緯から憎悪を抱え込み、慧月をそそのかしていた。真相そのものは衝撃的で、悪役を一人倒して終わる構図に見えなくもありません。
ところが10巻の鑽仰礼編に入ると、后妃たちの不穏な動きや祈禱師の存在が次々に顔を出してきます。雅媚は駒のひとつだったのではないか、という疑いが強くなる作りです。玄歌吹の姉が三年前に火あぶりにされた一件も、まだ真犯人が特定されていません。
小説版では、この先で皇帝・弦耀が二十五年間温め続けてきた執念が物語の中心へ出てきます。穏やかに微笑みながら、目的のためなら残酷になれる人物として描かれてきた彼が何を狙っているのか。そして皇后・絹秀の采配も油断できません。後宮の秩序を守る知略家でありながら、祈禱師の身柄を玄家へ密かに引き渡すなど、独自の思惑で動いている描写が挟まれています。漫画版がこの層をどう描き分けるのか、続巻で確かめてみてください。
入れ替わりという仕掛けの、意味の変質
第一幕の入れ替わりは、明確に「呪い」でした。憎しみによって一方的に押しつけられた災厄です。ところが第二幕で再発動したときには、二人が互いの欠落を埋め合う協力関係へと性質が変わっていました。同じ現象なのに、意味だけが書き換わっている。
10巻の三度目では、慧月が玲琳を救うために自分から飛び込む形になっています。加害の手段だったものが、いつのまにか献身の手段へ裏返っているわけです。この変質を三段階かけて丁寧に積み上げたところに、本作の設計の巧さがあります。
小説版ではもう一段先まで進み、玲琳が自分の余命を悟って入れ替わりの永久停止を申し出る場面が描かれます。慧月はそれを真っ向から拒みました。呪いとして始まった仕掛けが、最後には親友を死なせないための闘いへと再定義されていく。漫画版がその局面まで描き切ったとき、入れ替わりという古典的な設定がどれほど遠くまで運ばれたのかが見えてくるはずです。
登場人物・キャラクター分析
登場人物 相関図

主要キャラクター
黄玲琳(こうれいりん)

「殿下の胡蝶」と讃えられる黄家の雛女で、本作の主人公です。美貌と教養に加え、医療・農業・公衆衛生にまたがる知識を持っています。その一方で、息をするだけで倒れかねない虚弱体質を完璧な微笑みの下に隠し続けてきました。慧月の健康な身体を得てからは抑えが利かなくなり、廃屋の開墾から邑での外科手術まで突っ走ります。物語が進むほど、その前向きさが何を諦めた末に育ったものかが見えてきます。
朱慧月(しゅけいげつ)

朱家の雛女で、そばかすの残る容貌と冷遇された生い立ちから「どぶネズミ」と蔑まれてきました。独学で道術を極めた天才でもあり、その力で玲琳と身体を入れ替えて地位を奪おうとします。しかし玲琳の抱えていた痛みを身体ごと味わい、命まで救われたことで深く悔い改めました。以後は最大の理解者として玲琳の隣に立ちます。読者人気投票で一位を獲得したのは、この落差の描き方が支持されたからでしょう。
詠尭明(えいぎょうめい)

詠国の皇太子であり、玲琳の従兄かつ婚約者にあたります。文武両道で誠実、責任感も強い人物ですが、皇族としての立場と個人の感情のあいだで常に板挟みになっています。入れ替わりにいち早く気づいた一人で、二人の秘密が露見して罪に問われないよう、水面下で手を打ち続けてきました。鑽仰礼では審査する側に回りながら、静かに目を光らせています。
辰宇(しんう)

後宮の風紀を取り締まる鷲官長で、尭明の異母弟です。異国から連れてこられた母譲りの碧眼を持ち、寡黙で冷ややかな佇まいをしています。職務には厳格ですが、玲琳の本質に気づいてからは無自覚な好意を寄せるようになりました。尭明との静かな火花も見どころのひとつで、香袋をめぐって弓勝負を挑む一幕まであります。
黄冬雪(こうとうせつ)

玲琳に絶対の忠誠を誓う黄家の筆頭女官です。冷静沈着で表情を崩しませんが、内に抱えた主への愛情は常軌を逸した重さがあります。誰よりも早く入れ替わりを見抜き、玲琳の身体にいる慧月へ刃物を突きつけて真実を吐かせた場面は、第一幕の転換点となりました。以後は本物の玲琳の影として、あばら家暮らしの支援から后妃相手の暗闘の準備まで完璧にこなします。
脇を固める重要人物たち
莉莉(りーりー)

朱家の下級女官で、異国の踊り子だった母から受け継いだ赤毛と琥珀色の瞳が目を引きます。かつての慧月の癇癪を憎んでいましたが、中身が入れ替わった玲琳の逞しさと優しさに触れて態度を一変させました。気性は荒く感情的ながら、玲琳と慧月の双方を繋ぐ仲介役として走り回ります。
黄景行(こうけいこう)
玲琳の長兄で、黄家の礼武官を務めています。武術と知略を兼ね備えた頼れる兄ですが、妹が絡むと冷静さを失う癖があります。南領での誘拐事件では玲琳とともに捕虜となり、武力と情報戦の両面から支えました。
黄景彰(こうけいしょう)
玲琳の次兄で、同じく礼武官です。妹思いが度を越して粘着質と評されるほどで、観察眼は作中屈指の鋭さを誇ります。慧月の身体にいる玲琳を一目で看破したかと思えば、慧月の不器用な優しさを誰よりも早く見抜いてしまう人物です。読者人気の高いカップリング「彰慧」の片翼として、進展の遅さが毎巻話題になります。
金清佳(きんせいか)

金家の雛女で、美と芸術を深く愛する誇り高い少女です。価値観がはっきりしており、正々堂々とした振る舞いを崩しません。当初は玲琳を敵視していましたが、その気高さに敬意を抱き、后妃たちの陰謀へ共に立ち向かう同志となっていきます。
玄歌吹(げんかすい)
玄家の雛女で、長い黒髪と右目の泣きぼくろが印象的です。寡黙で凛とした佇まいを持ち、囲碁将棋にも武技にも通じています。三年前に陰謀で姉を火あぶりにされており、その復讐のために自ら雛女となって後宮へ乗り込んできました。鑽仰礼編では彼女の殺意が物語を大きく揺らします。
藍芳春(らんほうしゅん)
藍家の雛女です。小柄で愛らしい外見の裏に、他者の犠牲をためらわない冷徹さを隠しています。南領外遊編では朱家を失脚させるための策謀に深く関わり、玲琳たちの前に立ちはだかりました。計画を暴かれて敗北したのちは、むしろ玲琳へ異様な執着を見せ始めます。
朱雅媚(しゅがび)

朱家の貴妃で、慧月の後見人です。表向きはおっとりと慈悲深く振る舞っていましたが、雛女時代に皇后と親友だった過去と、そこから生まれた悲しい憎悪を抱えていました。慧月をそそのかして一連の事件を引き起こした第一幕の黒幕であり、呪詛返しによって捕らえられます。
黄絹秀(こうけんしゅう)
詠国の皇后で、尭明の母、そして玲琳の伯母にあたります。知略に長け、威厳と強い意志を備えながら、根性論を好む大ざっぱな一面も持ち合わせています。病弱な玲琳のために古今東西の呪具や鍛錬用の弓を実家へ送りつけていたのも彼女です。後宮の秩序を保ちつつ、后妃たちの権力闘争と皇帝の思惑を裏で調整しています。
「ドン引きヒロイン」が「やっぱり大好き」に変わるまで
本作に寄せられる声で目立つのは、賛否そのものよりも「最初の印象がひっくり返った」という体験談です。共感の方向にも違和感の方向にも、それぞれ読み応えのある言葉が並んでいます。
鋼のメンタルと、女同士の共闘に熱狂する声
最も多いのは玲琳の突き抜けた前向きさへの称賛です。読書メーターには「よくある転生物でしょーと侮ってたら違った」という感想が並び、根性さえあれば何でもできるという意味でスポ根に近い、という評まで見かけます。感心を通り越して引いてしまうけれど応援したくなる、という表現は本作の手触りを的確に言い当てています。
アニメ視聴者からは、少年漫画的な熱さを指摘する声も上がっています。正反対の二人がぶつかり合って成長していく構図に胸が熱くなる、という10代女性の感想や、性別を問わず楽しめる論理的な物語だと評価する40代男性の声など、想定より広い層に届いている様子がうかがえます。声優が「身体の声」と「心の声」を演じ分ける音響設計への評価も高い傾向です。
そして物語が進むほど、当初は悪役だった慧月への愛着が爆発的に高まる現象が起きています。自分をどぶネズミと蔑んでいた彼女が、ようやく自分を好きになれたところで、親友を生かすためにその人生を捨てる覚悟を固める。この構図に感情を揺さぶられた読者の長文レビューが、小説11巻あたりから急増しました。景彰と慧月のカップリング「彰慧」を目当てに買い続けている、と公言するファンも珍しくありません。
身分が軽い、男性陣が薄い ー 違和感の中身
不満として繰り返し挙がるのは、身分の高い人物にしては言動が軽すぎる、という指摘です。重厚な中華宮廷ものを期待して手に取ると、現代的でラフな掛け合いが肩透かしに映ることがあります。もうひとつは男性キャラクターの影の薄さで、皇太子である尭明ですら「おいしいところ取りにしか見えない」と書かれてしまうほどでした。物語の重心が完全に雛女たちの結束へ寄っているため、恋愛のヒーローを求める読者ほど物足りなさを覚えるようです。
序盤で慧月に感情移入しすぎて辛い、という声も見逃せません。容姿まで悪く言われ、周囲の手のひらが玲琳へ一斉に返っていく展開が、優しい読者にはこたえるのです。なろうのWeb版本編が書籍化に伴って取り下げられたことへの恨み節も、当時からのファンのあいだに残っています。
ただし、こうした違和感の多くは読み進めるうちに別の感情へ反転していきます。玲琳の鋼メンタルにチートっぽさを感じて冷めていたけれど、病弱な本来の身体では諦めるしかなかったことの多さに思い至って泣いた、という読書メーターの感想が象徴的です。コメディの奥にある切なさが見え始めた瞬間、最初の抵抗感は深い愛着へ変わります。読者自身が玲琳の本質に辿り着くまでの時間を含めて完成する物語、と言ってよいかもしれません。
疑問を解消(Q&A)
「ふつつかな悪女ではございますが」を読み始める前に引っかかりやすい疑問を、ネタバレなしのものから物語の深部に触れるものまで順に並べました。
【⚠️ネタバレ注意】漫画第一幕の黒幕は誰でしたか?
慧月の後見人である朱貴妃・雅媚でした。雛女時代の皇后とは親友でしたが、そこから生まれた悲しい憎悪を抱え込み、慧月をそそのかして玲琳の殺害を含む一連の事件を仕組んでいます。呪詛返しによって罪が暴かれ、彼女は捕らえられました。ただし10巻の鑽仰礼編では后妃たちの新たな動きが示唆されており、これで終わりではないことが匂わされています。
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【⚠️ネタバレ注意】玲琳と慧月の入れ替わりは元に戻りますか?
第一幕の終わりで一度は元に戻ります。ただし第二幕の南領編で再発動し、10巻の鑽仰礼編では三度目が起きました。当初は呪いだった入れ替わりが、二度目では互いの欠落を埋める協力関係へ、三度目では慧月が玲琳を救うための手段へと意味を変えていきます。小説版ではこの先、親友を死なせないための闘いとして再定義される展開が描かれました。漫画版での最終的な決着は、続巻で見届けてください。
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みさき「ふつつかな悪女ではございますが」を一番お得に読む方法・まとめ
入れ替わりという古い仕掛けが、ここまで遠くへ運ばれた
「ふつつかな悪女ではございますが」のコミカライズは、入れ替わりという使い古された設定を出発点にしながら、定番からずいぶん遠い場所まで辿り着いた作品です。健康な身体さえあれば廃屋暮らしも楽園に変わる、という玲琳の割り切りは読んでいて痛快で、その裏に何が積み上がっているかを知ったときに一度読み方が変わります。
その体験を支えているのが、尾羊英さんの作画です。煌びやかな後宮の情景、雛女たちの衣装、そして入れ替わりを経て変化していく表情。文字では説明が必要な感情のズレが、絵だと一コマで伝わります。同じ顔で中身が違う、という難しい表現を成立させている点が漫画版の強みです。
10巻では鑽仰礼編が山場を迎え、玲琳が命の危機に瀕したところから反撃が始まりました。この先には五家の雛女たちの結束、皇帝が抱える二十五年前の因縁、そして玲琳自身の運命が控えています。コメディの奥に沈んでいた切ない真実が絵で描かれる日を、読者として見届けたい作品です。
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