
これほど強く知的好奇心を刺激され、深く考えさせられる著作はそう多くありません。魚豊先生による「チ。―地球の運動について―」は、15世紀ヨーロッパを架空の舞台とし、禁じられた「地動説」の探求に自らの全てを懸けた人々の姿を描き出す、壮大な叙事詩です。
本作は、「信じる」ことの重さ、「知る」ことの意味を、私たちに厳しく、そして切実に問いかけてきます。読み進めるほどに、登場人物たちの葛藤や決断が、リアルな感覚で迫ってくるでしょう。この記事では、本作がもたらすであろう知的な興奮や深い感動の源泉を探ります。基本情報から考察、読者の声まで、あなたがこの類稀な作品と出会うためのガイドとなれば幸いです。
手塚治虫文化賞マンガ大賞も受賞したこの傑作がもたらす、忘れがたい読書体験を、ぜひあなたも手に取ってみてはいかがでしょうか。
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作品名:「チ。 地球の運動について」
作者:魚豊
ステータス:完結済
巻数:8巻
連載:ビッグコミックスピリッツ
以下の方法で読むことができます
- 電子書籍:Kindle、eBookJapan、ブックライブなどで配信中。
多くの電子書籍ストアでは、無料で試し読みできます。 - 紙の書籍:全国の書店で発売中。オンライン書店でも購入可能です。
「チ。 地球の運動について」とは?【作品概要とあらすじ】
まずは基本情報をチェック
本作を手がけるのは、魚豊(うおと)先生です。前作「ひゃくえむ。」で陸上競技に青春を懸ける少年たちを描いたのとは一転し、本作では「人が死ぬようなサスペンス劇」に挑戦したいという思いから、この重厚な物語が生まれました。中世ヨーロッパにおける知性と暴力性が結びつく特異な時代設定に着目し、読者に強烈な問いを投げかけます。その独自の世界観とテーマ性は高く評価され、第26回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。
ジャンルとテーマ解説
「チ。―地球の運動について―」は、ジャンルとしては「歴史ドラマ」や「人間ドラマ」に分類されるでしょう。15世紀ヨーロッパという時代背景を基にしていますが、架空の国や設定も含まれる「歴史フィクション」としての側面も持ち合わせています。また、異端思想を巡る緊迫した展開は「サスペンス」の要素も色濃く感じさせます。掲載誌は青年漫画誌であり、大人向けの深いテーマを扱っています。
物語の中心となるテーマは、禁じられた「地動説」という知識への探求と、それを守り、次世代へと繋ごうとする人々の「信念」です。なぜ人は、命の危険を冒してまで真理を知ろうとするのか。「信じる」とはどういうことなのか。作中では、知的好奇心の輝きだけでなく、その探求に伴う葛藤や犠牲、そして時に見られる人間の狂気性までが、生々しく描かれています。
歴史が大きく動いた時代の空気感や、人間の知性や信念の力について深く考えさせられる作品に関心のある方にとって、本作は格別な読書体験をもたらすのではないでしょうか。
アニメ化情報
2022年6月にテレビアニメ版の制作が発表。
2024年10月5日からNHK総合にて放送開始されました。
制作はマッドハウスが担当しています。主要キャストも発表されていて、主人公のラファウ役を坂本真綾さん、フベルト役を速水奨さん、ノヴァク役を津田健次郎さんが演じます。
原作漫画が多くの賞を受賞していることもあり、アニメ化への期待も高まっているようです。
15世紀ヨーロッパを舞台に、命を賭けて地動説を探求する人々の物語が、アニメでどのように描かれるのか楽しみですね。
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物語への第一歩 あらすじ(ネタバレなし)
物語の舞台は、15世紀のヨーロッパに位置する「P王国」。そこはC教の教えが絶対とされ、地球が宇宙の中心であるとする「天動説」が揺るぎない真理と信じられている世界です。C教の教義に反する思想は「異端」として厳しく断罪され、容赦ない拷問や火刑が待ち受けています。
そんな時代に生きる少年ラファウは、わずか12歳にして大学への入学が決まっているほどの神童。何事も合理的に判断し、感情に流されず、効率的に生きることこそが最善だと信じていました。将来は安泰とされる神学の道へ進むはずだった彼ですが、幼い頃から密かに抱いていた天体への興味を捨てきれずにいました。
ある日、ラファウは異端の罪で投獄されていた元学者フベルトと出会います。この出会いが、ラファウの合理的な世界観を根底から覆すことになるのです。フベルトが語る、太陽を中心に地球が回るという「地動説」。そのシンプルで美しい理論に心を奪われたラファウは、自らの命をも危険に晒しかねない禁断の知識の世界へと、足を踏み入れていきます。
物語の核心へ 深掘りあらすじ【⚠️ここからネタバレを含みます】
以下の内容は物語の核心に触れるネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
「チ。―地球の運動について―」の物語は、異なる時代と人物に焦点を当てた複数の章で構成されています。それぞれの時代で、「地動説」という禁じられた知性が、どのように受け継がれていくのか、その軌跡を追ってみましょう。
【ネタバレ注意】深掘りあらすじを見るにはここをタップ
ラファウ編:知性、初めての感動
合理性を信条としていた神童ラファウは、異端者フベルトとの出会いを通じて「地動説」の魅力に取り憑かれます。養父ポトツキの制止も振り切り、フベルトと共に天体観測を続ける中で、ラファウは地動説こそが真理であると確信。自らの手で太陽を中心とした天体図を描き上げるまでに至ります。しかし、その研究はC教の異端審問官ノヴァクの知るところとなります。フベルトはラファウを庇って火刑に処され、研究資料と希望を託されたラファウもまた、自らの信念を貫き、衝撃的な結末を迎えることになります。
オクジー編:絶望から希望へ、継承される意志
ラファウの死から10年。生きる希望を見いだせず、早く天国へ行くことばかりを願う代闘士オクジーは、ある任務をきっかけにラファウとフベルトが遺した地動説の研究資料(石箱)の存在を知ります。当初はその価値を理解できなかったオクジーですが、聡明な修道士バデーニや、天文学の知識を持つ少女ヨレンタとの出会いを通じて、地動説が示す世界の美しさに心を動かされます。文字の読み書きを学び、自ら地動説に関する本を書き始めるオクジー。しかし、彼らの研究にも異端審問官ノヴァクの影が忍び寄り、再び過酷な運命が訪れます。
ドゥラカ編:動乱の時代と異端解放戦線
オクジーとバデーニが処刑されてから25年後。C教の権威は揺らぎ始め、各地で異端派との衝突が激化していました。異端者を解放するために活動する「異端解放戦線」が現れる中、金儲けに目がない移動民族の少女ドゥラカは、偶然にもオクジーが遺した本「地球の運動について」を発見します。ドゥラカは本の内容を全て記憶し、自らの価値を証明するために異端解放戦線と接触。組織長となっていたヨレンタや、隊長のシュミットらと行動を共にする中で、地動説が持つ意味や世界の成り立ちについて考えを深めていきます。ヨレンタの意志を受け継いだドゥラカは、地動説の知識を広めるための危険な計画に身を投じることになります。
アルベルト編:歴史への接続、そして未来へ
さらに時代は下り、物語の舞台は架空のP王国から史実のポーランド王国へと移ります。パン屋で働く実直な青年アルベルトは、過去のある出来事から学問や好奇心を遠ざけていました。しかし、ある司祭との対話を通じて、再び学ぶことへの情熱を取り戻します。彼の回想の中で、少年時代の家庭教師が「ラファウ」という名前であったこと、そして最終的にアルベルトがニコラウス・コペルニクスの師となる人物であることが示唆されます。また、これまでの物語で描かれた地動説への過酷な迫害は、必ずしも普遍的なものではなく、特定の状況下で起こった出来事であった可能性も示され、物語は地動説が歴史の表舞台に登場する未来へと繋がる形で、静かに幕を下ろします。
登場人物と作品の深掘り【キャラクター&レビュー】
物語を彩る登場人物たち【相関図あり】

物語の時代を繋ぎ、それぞれの信念を胸に生きる主要な人物たちをご紹介します。
ラファウ

最初の章の中心となる少年。12歳。類稀なる知性を持つ神童で、当初は合理性を最も重視。しかし、地動説の美しさに触れ、知的好奇心と感動に従う道を選びます。
フベルト

地動説を研究する学者。異端者として投獄されていました。ラファウに地動説の魅力を教え、その後の彼の生き方に大きな影響を与える人物です。真理のためなら危険を厭わない強い意志の持ち主。
ポトツキ

ラファウの養父であり、C教の神学者。温厚な人物ですが、過去に地動説研究に関わった経験から、異端思想に対して強い警戒心を持っています。ラファウの選択に心を痛めます。
ノヴァク

C教の異端審問官。元傭兵という異色の経歴を持ちます。物腰は柔らかいものの、教会の教えに背く者には一切の情けをかけません。物語の全編にわたり、地動説を追う者たちの前に立ちはだかります。
オクジー

第二章の中心人物となる青年。依頼主に代わって決闘を行う代闘士。当初は人生に絶望し、早く天国へ行くことを願っていましたが、地動説に関わる人々との出会いによって変化していきます。
バデーニ

知識欲が非常に強い、型破りな修道士。真理の探求のためなら教会の規律も意に介さない性格。並外れた計算力と知識を持ち、オクジーと共に地動説の研究を進めます。片目に眼帯。
ヨレンタ

聡明な若い女性。天文研究の才能に恵まれながらも、女性であるという理由で正当な評価を受けられずにいました。バデーニやオクジーと出会い、地動説の研究に希望を見出します。
ドゥラカ

第三章の中心となる移動民族の少女。現実的で、何よりも金儲けを重視する信条の持ち主。偶然「地球の運動について」の本を発見し、その内容を記憶したことから、物語の重要な役割を担います。
シュミット

異端解放戦線の隊長として登場します。彼は、C教の教えに疑問を持ち、自然を崇拝することに生きる意味を見出しています。動説の真理を広めるために活動していますが、時に過激な行動をとります。
私がハマった理由!見どころ&魅力を語らせて!
「チ。―地球の運動について―」には、一度読み始めるとページをめくる手が止まらなくなる、抗いがたい引力があります。ここでは、私が特に心を掴まれた魅力について、3つのポイントからお話しさせてください。
「知る」ことへの根源的な問いかけ
本作の根幹をなすのは、「地動説」という科学的なテーマですが、その魅力は単なる知的好奇心の充足に留まりません。物語は、「なぜ人は未知の事柄を知ろうとするのか」「真理とは何か」「何を信じて生きるのか」といった、非常に哲学的で根源的な問いを読者に投げかけます。登場人物たちが命懸けで知識を求め、自身の世界観を変容させていく様は、私たち自身の「知る」ということへの姿勢をも見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。読むたびに新たな発見がある、奥深い知的な魅力に満ちています。
世代を超えて受け継がれる「意志」の熱量
物語は、一人の主人公が最後まで活躍する形式ではなく、章ごとに中心人物が移り変わりながら、数十年の時を経て進んでいきます。ラファウからオクジーへ、そしてドゥラカへと、「地動説」を探求する意志と、その過程で得られた感動や知識が、まるでバトンのように受け継がれていくのです。その継承は決して順風満帆ではなく、多くの犠牲や挫折を伴います。しかし、だからこそ、一人の人間の生を超えて繋がれていく「何か」の尊さ、その熱量が胸に迫ります。登場人物たちの選択と生き様を通して描かれる、極限状態での人間ドラマは本作の大きな魅力です。
歴史のダイナミズムと個人の生を描く構成力
15世紀ヨーロッパという、宗教的な価値観が絶対視され、科学的な視点が抑圧されがちな時代設定が巧みに活かされています。史実を背景としつつも、架空の国や人物を織り交ぜることで、歴史の大きな流れの中で翻弄されながらも、確かに生きたであろう「名もなき個人」の視点から物語を体験させてくれます。特に、異端を取り締まる側のノヴァクという存在が、単なる悪役ではなく、彼自身の論理や人間性をもって描かれている点も、物語に深みを与えています。歴史のダイナミズムと個人の葛藤が交差する、その構成力の高さも特筆すべき点と言えるでしょう。
散りばめられた謎と仕掛け 「チ。―地球の運動について―」の伏線と回収を徹底考察

(ビッグコミックBROS.NET https://bigcomicbros.net/work/35171/ より引用)
このセクションでは、「チ。―地球の運動について―」という作品に巧みに仕掛けられた伏線や、その鮮やかな回収、そして読者の想像を掻き立てる未解決の謎や解釈の分かれる結末について、私なりの視点から深く掘り下げて考察してみたいと思います。作品を読み解く上での一つの視点として、お楽しみいただければ幸いです。
ノヴァクとヨレンタ、歪められた父性愛の行方
物語全体を通して重要な役割を担う異端審問官ノヴァク。彼が実は、第二章から登場し地動説の研究に情熱を燃やすヨレンタの父親であったという事実は、本作の人間ドラマに大きな深みを与えています。当初、ノヴァクは自身の仕事を家族に隠し、ヨレンタに対しては一般的な父親として接していたように描かれます。しかし、ヨレンタが地動説に関わっていることを知り、結果的に彼女を追い詰める立場になった彼の心中は察するに余りあります。
特に印象的なのは、ヨレンタが異端解放戦線の長として活動し、ノヴァク自身の手で(直接的ではないにせよ)彼女の死に関わってしまう(とノヴァクが認識する)展開です。この出来事が、それまである種の職務として異端者を処理してきたノヴァクに、個人的な苦悩と地動説そのものへの激しい憎悪を植え付けたのではないでしょうか。彼が後に異端審問官を退きながらも、再び地動説の「本」の捜査に協力する動機には、この歪められた父性愛と喪失感が複雑に絡み合っていると解釈できます。彼の行動原理を単なる職務遂行や冷酷さだけでは説明できない、人間的な側面がここに隠されているように感じられます。
最終章と「P王国」の連続性、パラレルワールドという解釈
物語の最終章「アルベルト編」では、それまでの「P王国」という架空の国から、明確に「ポーランド王国」という史実に基づいた舞台へと移行します。ここで注目すべきは、地動説に対する迫害の度合いが、それまでの章で描かれてきたほど苛烈ではないように描写されている点です。また、第一章の主人公ラファウと同名の人物が、アルベルト・ブルゼフスキの家庭教師として登場し、その容姿や聡明さもラファウを彷彿とさせます。
これらの要素から、読者の間では「第一章から第三章までの出来事は、アルベルト編とは異なるパラレルワールドなのではないか」という解釈も生まれています。つまり、地動説が苛烈に弾圧された世界線と、比較的穏やかに研究が進められた(あるいは、そうした迫害が記録に残らなかった)世界線が存在するという考え方です。作者は意図的にこの点を曖昧に描くことで、歴史の記録に残らない無数の「もしも」や、同じ出来事でも立場や時代によって異なる解釈が生まれ得るという、歴史の多面性を示唆したのかもしれません。あるいは、これまでの登場人物たちの犠牲と意志の継承が、最終的に歴史の記録に繋がる「正史」へと収斂していく過程を描いたとも考えられます。
「地動説への迫害」という描写の意図と、その相対化
本作全体を通して描かれる、C教による地動説への厳しい弾圧は、読者に強烈な印象を与えます。しかし、資料にもある通り、史実のヨーロッパにおいて地動説が常にこれほど激しい迫害を受けたという記録は主流ではありません。作者の魚豊先生は、この「史実とのズレ」を意図的に用いていると考えられます。
初期の章で描かれる苛烈な迫害は、真理を求めることの困難さや、権威に抗うことの危険性を読者に強く印象付けます。しかし、物語の終盤、特にアルベルト編に至って、この迫害が普遍的なものではなく、特定の権力者(例えばノヴァク個人の執念や、一部の司教の判断など)による限定的なものであった可能性が示唆されます。これは、大きな歴史の流れの中で、個人の行動や思想がいかに局所的であり得るか、また、後世に伝わる「歴史」がいかに一面的であるかという批評的な視点を提示しているのではないでしょうか。読者が抱く「中世=暗黒時代、宗教=科学の敵」といった単純化されたイメージに揺さぶりをかけ、より複雑な歴史の様相を想像させる仕掛けとも言えるでしょう。
この作品は、一度読み終えた後も、様々な角度から考察を深めることができる、非常に知的な刺激に満ちた著作です。細部に散りばめられた描写やセリフの一つ一つに、作者の深い思索が込められているように感じられます。
みんなはどう感じた?リアルな感想・評判をのぞき見!
「チ。―地球の運動について―」は、多くの読者に強い印象を残している作品です。ここでは、実際に読まれた方々から寄せられている様々な声の傾向を、肯定的な側面と、少し注意が必要かもしれない側面の両方からご紹介します。
「最高!」「人生変わった!」共感の嵐 ポジティブな口コミ
まず多く聞かれるのは、物語序盤、特に第1巻の衝撃的な展開に対する驚きと、そこから一気に作品世界へ引き込まれたという声です。禁じられた「地動説」という真理の美しさに魅入られ、自らの命をも懸けて信念を貫こうとする登場人物たちの姿には、「感動した」「胸が熱くなった」といった感想が多数寄せられています。単なる知的好奇心だけでなく、その探求が生きる意味や希望へと繋がっていく過程が、読者の心を強く動かしているようです。
また、「知性とは何か」「信じるとはどういうことか」といった哲学的なテーマ性も、高く評価されているポイントです。登場人物たちの葛藤や選択を通じて、読者自身の価値観や生き方について深く考えさせられた、という意見が多く見られます。章ごとに主人公が変わりながらも、意志や知識が世代を超えて受け継がれていく壮大な物語構造や、敵役でありながら複雑な魅力を持つノヴァクのようなキャラクター造形も、多くの読者を惹きつけている要因と言えるでしょう。
「ちょっと難しい?」「好みが分かれるかも?」気になる意見もチェック
一方で、肯定的な意見ばかりではありません。登場人物たちが時に見せる、自らの命をも顧みない行動原理について、「狂信的に見える」「共感するのが難しい」と感じる方もいらっしゃるようです。特に、自己犠牲を伴う選択に対して、現代的な価値観からは理解しがたいという声も見受けられます。
また、作中で描かれる地動説への過酷な迫害描写は、史実における扱いとは異なるフィクション要素ですが、この点について史実との比較から違和感を覚えるという指摘もあります。加えて、物語全体を覆うテーマの重さや、拷問などの一部の過激な描写に対して、精神的な負担を感じるという意見も存在します。そのため、軽快なエンターテイメントを求める方や、暴力的な描写が苦手な方は、少し留意された方が良いかもしれません。
【わたしのガチ評価】漫画好き女子が本音レビュー!

- 知的好奇心を強く刺激される、深遠なテーマ性が魅力的です。
- 登場人物たちの心理や信念が深く描かれており、強く引き込まれます。
- 世代を超えて意志が継承される物語構成の巧みさには感嘆します。
- 物語の序盤はやや設定が込み入っており、難しく感じる方もいるかもしれません。
- 一部に直接的な暴力描写が含まれるため、苦手な方は注意が必要です。
特に素晴らしいと感じた点
本作の最大の魅力は、まず「知的好奇心を刺激するテーマ性」にあると考えます。「地動説」という科学的な題材を扱いながらも、単なる知識の披露に終わらず、「真理とは何か」「信じるとは何か」といった普遍的かつ哲学的な問いを読者に投げかけてきます。読み進めるうちに、自然と自身の価値観や思考が深まっていくような、知的な満足感を与えてくれる点は特筆に値します。
次に、「深いキャラクター描写」も素晴らしい点です。各章で中心となる人物はもちろんのこと、物語を通して重要な役割を担う異端審問官ノヴァクに至るまで、登場人物たちの内面や葛藤、抱える信念が非常に丁寧に描かれています。彼らの喜びや苦悩、そして時に見せる人間らしい弱さや矛盾が生々しく伝わってくるため、読者は強く感情を動かされ、物語への没入感を深めることになるでしょう。
そして、世代を超えて物語が「継承」されていく「物語構成の巧みさ」も見逃せません。一人の英雄の物語ではなく、複数の人物がそれぞれの時代で役割を果たし、次の世代へと意志を繋いでいく。この壮大な構成によって、歴史の大きなうねりと、その中で懸命に生きた個人の尊さが同時に描き出されています。各章の結びつきや伏線の張り方も緻密で、読み返すたびに新たな発見がある点も、構成力の高さを物語っています。
留意しておきたい点
一方で、いくつか留意しておきたい点もあります。まず、物語の「序盤」は、15世紀という時代背景やC教の世界観、天文学に関する設定などが提示されるため、やや「難解さ」を感じる方がいるかもしれません。物語が進むにつれて面白さは加速していきますが、序盤はじっくりと世界観に入り込む必要がある点は、念頭に置くと良いでしょう。
また、当時の異端審問や争いを描く上で避けられないのかもしれませんが、「一部に暴力的な描写」が含まれています。特に拷問シーンなどは直接的な表現も見られるため、こうした描写に強い抵抗を感じる方は注意が必要です。物語のテーマ性を表現する上で必要な要素とも解釈できますが、この点は好みが分かれる可能性があると言えます。
総合的な評価:★★★★☆ 4/5点
上記の点を踏まえ、総合的な評価としては4点とさせていただきます。一部、読み手を選ぶ可能性のある描写や序盤のハードルは存在するものの、それを補って余りある知的な興奮と深い感動、そして物語としての完成度の高さを感じさせる作品です。人間の探求心や信念の力、歴史の重みといったテーマに関心のある方、骨太な人間ドラマを読みたい方には、強く推薦できる傑作だと考えます。ぜひ一度、この壮大な物語世界に触れてみていただきたいです。
Q&A・用語解説【疑問解決】
物語の理解が深まるキーワード用語集
地動説
宇宙の中心は太陽であり、地球などの惑星がその周りを回っている、という考え方です。本作の世界ではC教の教えに反する「異端思想」と見なされ、研究や公言が厳しく禁じられています。
天動説
宇宙の中心は動かない地球であり、太陽や月、星々がその周りを動いている、とする考え方です。本作の舞台であるP王国においては、C教が認める唯一の「正しい」宇宙観とされています。
C教
本作の主な舞台となるP王国において、人々の精神や社会制度を強く支配している架空の宗教組織です。天動説を絶対的な真理とし、異なる考えを持つ者を「異端」として厳しく弾圧します。
P王国
物語の中心的な舞台となる、15世紀ヨーロッパをモデルとした架空の王国です。C教の強い影響下にあり、教義に反する思想や行動は厳しく取り締まられます。
異端審問官
C教の教えに背いたとされる「異端者」を捜査し、取り調べ、処罰する役割を担う役職です。作中ではノヴァクなどがこの職務に就き、地動説の研究者たちにとって大きな脅威となります。
代闘士
決闘の代理人として戦うことを生業とする人々です。本作の第二章の中心人物であるオクジーは、この代闘士として、過酷な日々を送る中で物語に関わっていきます。
異端解放戦線
C教による異端者への迫害に対抗するために結成された組織です。各地の異端審問所を襲撃するなどして活動し、地動説の知識の普及を目指しています。第三章で重要な役割を果たします。
地球の運動について(本)
作中で登場する、地動説について書かれた書物のタイトルです。オクジーが遺したものが後の時代に発見され、その内容を巡って物語が大きく動くきっかけとなります。
気になる疑問をスッキリ解決!Q&Aコーナー
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作者について
魚豊
(うおと、1997年5月29日 – )
日本の漫画家。東京都出身。
幼少期から絵を描くことが好きで、漠然と漫画家になりたいと思っていた。中学1年生の時にアニメ『バクマン。』を偶然見て、漫画家になるまでの流れを知り、作品の投稿を始める。
2017年に週刊少年マガジン新人漫画賞で入選した読み切り作品「佳作」が『別冊少年マガジン』(講談社)に掲載され、デビュー。2018年上半期ごろには『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』のアシスタントも務めた。
他作品:ひゃくえむ。、ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ
この深い読書体験を あなたにも
「チ。―地球の運動について―」は、単に面白い漫画という言葉だけでは語り尽くせない、特別な力を持った作品です。本作が私たちに提示するのは、禁じられた知識への抑えきれない探求心と、自らの存在理由をも揺るがしかねない「真理」に直面した時、人は何を信じ、どう行動するのかという、根源的で普遍的な問いかけです。その問いは、15世紀という遠い時代の物語でありながら、現代を生きる私たちの心にも深く響くものがあります。
この物語を読み終えた時、おそらくあなたは、ページをめくる間に感じたであろう知的な興奮と共に、登場人物たちが命懸けで繋いだ「意志」の重み、そして歴史の流れの中に存在する無数の葛藤や選択について、深く思いを馳せることになるでしょう。それは時に切なく、時に心を強く打つ、忘れがたい読書体験となるはずです。単純な感動やカタルシスだけではない、複雑で豊かな余韻が、きっとあなたの心に残るのではないでしょうか。
私自身、(元)書籍バイヤーとして多くの物語に触れてきましたが、本作ほど「知」を受け継いでいくことの尊さと、それに伴う痛みを強く感じさせられた作品は多くありません。私たちが今、当たり前のように享受している知識や自由が、決して平坦な道のりの上に築かれたものではないという事実を、登場人物たちの生き様を通して改めて認識させられました。
もしあなたが、心を揺さぶられるような深い物語や、知的な刺激を与えてくれる作品を探しているのであれば、この「チ。―地球の運動について―」を強くお勧めします。ぜひご自身の目で、彼らが命を懸けて見ようとした世界と、その先に続く物語の結末を確かめてみてください。