
海辺の崖に作った秘密基地で、3年前に釣りへ出たまま帰らなかった兄を待ち続ける小学6年生のりょう。「ピアス」は、彼が海に小箱を投げ捨てた少女と出会い、心を通わせる物語です。
この記事では、「ピアス」はどこで読めるのか、あやこは彩子と同一人物なのかを、ネタバレの有無を分けたうえで答えから先に書いています。電子書籍で読めるかを急いで知りたい方はQ&Aへ、物語を順を追って読みたい方はネタバレあらすじへ。ネタバレ部分はすべて折りたたんであります。
「ピアス」は紙の書籍「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」に全39ページが収録されています。
「ピアス」あらすじ・ネタバレ
作品名:ピアス
作者:井上雄彦
出版社:集英社(愛蔵版コミックス「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」に収録)
ステータス:完結
巻数:全1話(読切・39ページ)
連載媒体:週刊少年ジャンプ1998年9号(読切)、週刊ヤングジャンプ2001年49号(再掲)
メディアミックス
2022年12月3日に公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」は、宮城リョータの過去を描く場面で「ピアス」を下敷きの一つにした作品です。集英社の紹介でも、映画のリョータの物語の一部のもとになった作品として位置づけられました。原作者の井上雄彦さんが監督と脚本を務め、リョータの声は仲村宗悟さんが担当しています。公式サイトでは、2027年3月20日から4月1日までの全国上映も発表されています(2026年10月時点)。
あらすじ ー 秘密基地で海を見つめる少年と、小箱を捨てた少女
舞台は海沿いの小さな街です。小学6年生のりょうは、崖の中腹にある洞窟を3年がかりで整え、自分だけの「秘密基地」にしてきました。学校が終わるとそこへ通い、ひとりで海を眺めるのが日課になっています。
りょうが海を見つめる理由は、3年前に釣りへ出かけたまま戻らない兄にあります。周りの大人がどう受け止めていようと、りょうは今も兄の帰りを待っていました。誰にも話していない、少年だけの習慣です。
ある日、リボンのかかった小さな箱を海へ投げ捨てる少女が現れます。とっさに海へ飛び込んだりょうと、怒った少女との出会いは、穏やかなものではありませんでした。全39ページの読切の中で、二人の短い時間が静かに描かれていきます。
「ピアス」のネタバレあらすじ ー 少年が左耳に穴を開けた理由と、手紙に書かれた名前
【ネタバレ注意】「ピアス」の結末まで読む(タップで開きます)
海辺の秘密基地と、帰らない兄(冒頭)
海沿いの街に暮らす小学6年生のりょうは、崖にある洞窟を3年かけて秘密基地に作り上げました。そこから海を見つめるのが、彼の毎日の過ごし方です。兄は3年前に釣りへ出かけたきり、一度も戻っていません。りょうはその兄を、人知れず待ち続けていました。基地の場所は家族にも明かしておらず、誰かを招き入れたこともありません。
小箱を投げる少女と、殴り合いの出会い(前半)
ある日りょうは、リボンのついた小さな箱を海へ投げ捨てる少女を見かけます。考えるより先に海へ飛び込み、箱を拾い上げた彼は、少女の頬を張って「汚すな」と言い放ちました。少女も黙っておらず、殴り返して二人は取っ組み合いになります。ところが少女の目に大粒の涙が浮かんでいるのを見て、りょうのほうが折れました。彼は誰も入れたことのなかった秘密基地へ、初めて他人を案内します。
安全ピンと蝋燭、兄に投げた最後の言葉(中盤)
小箱の中身はピアスでした。少女は、母親の再婚相手である佐々木さんが母へ贈ったものだと思い込み、複雑な気持ちから捨てようとしていました。その葛藤を感じ取ったりょうは、蝋燭の火で安全ピンの針を炙り、「マイケル・ジョーダンがしてるから」と言って自分の左耳に穴を開け始めます。痛みに耐えながらの、不器用な行動でした。
続けてりょうは、なぜ海を見続けているのかを少女に打ち明けます。3年前、小学3年生だった彼は、釣りに行く兄に連れて行ってほしいとねだりました。兄は「危ないから6年生になったら連れて行ってやる」と断り、腹を立てたりょうは「バカ兄!! もう帰ってくるな!!」と叫んでしまいます。兄はそのまま事故に遭い、言葉どおり帰ってきませんでした。りょうはあの一言を取り消すために、6年生になった今も兄を待ち続けています。
解体された基地と一通の手紙(全1話の到達点)
帰りが遅くなった二人を探しに来たりょうの母親によって、秘密基地は見つかってしまいます。基地はその後、母親の手で解体されました。何もなくなった跡地で、りょうは少女が残した手紙を見つけます。そこには、あのピアスは母親ではなく自分へのプレゼントで、誤解が解けたことが書かれていました。手紙の最後には、少女の名前が「あやこ」であることも記されています。
宛名は「りょうくんへ」でした。りょうは一人で砂浜を歩きながら、「りょうじゃねえよ… りょうただよ」と自分の本当の名前をつぶやきます。あやこは最後まで、彼の名前を「りょう」だと思っていたことになります。名乗り直したその声を聞く相手はいないまま、物語は幕を閉じました。
結末は全1話の読切の最後のページ。Amazonで収録本「re:SOURCE」を購入して読めます。
みさき疑問を解消(Q&A)
「ピアス」について特に多い疑問を、読む方法から結末の解釈まで順に取り上げます。ネタバレを含む回答は折りたたんであります。
【⚠️ネタバレ注意】あやこは彩子と同一人物ですか?本編の一目惚れと矛盾しませんか?
作中では、あやこが「SLAM DUNK」本編のマネージャー彩子と同一人物だとは明言されていません。本編にはリョータが高校で初めて彩子を見て一目惚れしたと語る場面があり、小学生のころに出会っていたとすると食い違う、と戸惑う読者もいます。そのため前日譚ではなく、パラレルな物語や原型として読む受け止め方も根強く残りました。名前の一致を手がかりに想像を広げる余地が、意図的に残された形です。
→ この場面は全1話の読切の結末。Amazonで確認する
【⚠️ネタバレ注意】りょうたの兄はなぜ亡くなったのですか?
兄は、りょうたが小学3年生だった3年前、海へ釣りに出かけて事故に遭い、帰らぬ人となりました。出かける直前、一緒に行きたいとねだって断られたりょうたは、「もう帰ってくるな」と兄に叫んでいます。その言葉が最後の会話になったことが、彼が海を見続ける理由です。
→ この場面は全1話の読切の中盤。Amazonで確認する
【⚠️ネタバレ注意】ラストの「りょうただよ」にはどんな意味がありますか?
あやこの手紙の宛名は「りょうくんへ」でした。砂浜でつぶやく「りょうじゃねえよ… りょうただよ」は、彼女には届かない訂正であり、自分の名前を自分で引き受け直す一言として読めます。兄に投げた言葉を取り消せないまま待ち続けた少年が、初めて前を向く合図とも受け取れるでしょう。解釈は読者に委ねられていますが、作品の題名と同じく、静かな成長の印として描かれています。
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みさきガチ評価・徹底考察

- 39ページに出会いから別れまでが収まり、読み終えたあとも余韻が長く続きます。
- 説明を削り、表情や海の風景に感情を預ける静かな演出が見事です。
- 映画「THE FIRST SLAM DUNK」と合わせると、リョータの過去の場面がより深く響きます。
- 電子書籍がなく、紙の収録本を買わないと読めません。
「みさきの総評」 ー 39ページで名前を取り戻す物語
言い返せなかった言葉と、言い直した名前。その二つを39ページに収めた、井上雄彦さんの短編の中でも特に忘れがたい一作です。
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同一人物か、パラレルか ー 「ピアス」と本編・映画をつなぐ3つの線

「ピアス」は単独で完結した読切ですが、「SLAM DUNK」本編や映画と並べると、読み方が少し変わります。ここでは読者の間で特に議論になる3つの点を、作中の描写から考えてみます。
本編の一目惚れと食い違う「あやこ」
もっとも大きな論点は、ヒロインのあやこと、湘北高校バスケ部マネージャーの彩子の関係です。名前の読みが同じで、主人公の名前も「りょうた」。共通点が多いため、二人を同一人物と考える読者は少なくありません。
一方で本編には、リョータが高校で初めて彩子を見て一目惚れしたと語る場面があります。小学生のころに秘密基地で殴り合い、手紙まで受け取った相手を忘れていたとは考えにくく、ここが矛盾として指摘されてきました。
掲載当時、「ピアス」は本編のスピンオフとして公式に打ち出されていたわけではありません。だからこそ、同じ名前の人物が別の形で生きる原型、あるいはパラレルな物語として読む見方が今も残っています。
私は、どちらか一方に決めないまま読むのがいちばん豊かだと思っています。名前だけが重なる二人として読むと、高校の体育館での一目惚れにも、少しだけ違う色がつくからです。
左耳の穴は、誰のために開けたのか
りょうたが左耳に穴を開ける場面は、「ピアス」の中でもっとも生々しい場面です。蝋燭の火で安全ピンの針を炙り、痛みをこらえながら自分の手で開けていきます。
口にした理由は「マイケル・ジョーダンがしてるから」という、小学生らしいものでした。けれども直前まで、彼は泣いているあやこの事情を感じ取り、自分の過去を話そうとしていた最中にいます。
母の再婚相手からの贈り物を拒んだ少女の前で、そのピアスを自分の体に通す。この行動は、あやこの痛みを半分引き受けるような意味を帯びて見えます。言葉では慰められない少年が、体で返事をした場面だと私は読みました。
映画のリョータも左耳にピアスをしています。読切を読んだあとでは、その小さな飾りが、海辺の洞窟から続く記憶として目に映るはずです。
最後のひと言は、取り消せなかった言葉への答え
物語の終わり、りょうたは手紙の宛名「りょうくんへ」を見たあと、砂浜で「りょうじゃねえよ… りょうただよ」とつぶやきます。聞く人のいない、小さな訂正です。
彼は3年間、兄に投げた「もう帰ってくるな」という言葉を取り消すために海を見てきました。言ってしまった言葉は、もう誰にも訂正できません。
そんな少年が、最後に自分の名前だけは自分で言い直します。取り消せないものを抱えたまま、それでも自分の言葉で自分を名乗る。この場面を境に、りょうたは兄を待つだけの場所から一歩外へ出たように見えました。
秘密基地は壊され、あやことの交流がその後も続いたかは描かれていません。それでも読後に残るのは喪失感より、静かに背筋が伸びるような感覚です。
登場人物・キャラクター分析
主要キャラクター
りょう(りょうた)

海沿いの街に住む小学6年生で、物語の主人公です。3年前に海で亡くなった兄への後悔を抱え、崖の洞窟に作った秘密基地から海を見つめています。頑固で不器用ですが、泣いている相手を放っておけない情の厚さも持ち合わせていました。左耳にピアスの穴を開け、あやことの手紙を経て、少しだけ大人へ近づきます。
あやこ
海辺でりょうと出会う小学6年生の少女です。勝気で意地っぱりな一方、繊細で優しい心の持ち主でもあります。母親の再婚相手からのピアスを海へ捨てようとしたことが、りょうとの出会いのきっかけになりました。秘密基地で互いの傷を打ち明け合い、最後は手紙で自分の名前を伝えます。
りょうたの兄(あに)
りょうたの亡き兄で、回想の中に登場します。3年前、海へ釣りに出かけたまま事故に遭い、帰らぬ人となりました。弟の頼みを「6年生になったら」と断ったのは、危険から守るためです。その最後のやり取りが、りょうたの心に深い後悔を残しています。映画「THE FIRST SLAM DUNK」では、宮城リョータの兄がソータという名前で描かれました。
脇を固める重要人物たち
りょうたの母(はは)
りょうたの母親です。帰りの遅い息子を探しに来て、秘密基地を見つけました。その後、基地を解体して封じたのも彼女です。息子を危険から遠ざけたい母の行動が、りょうたにとっては大切な場所を失う出来事になりました。
あやこの母(はは)
あやこの母親で、再婚相手の佐々木さんと暮らしています。新しい家庭のかたちに、あやこは素直になれずにいました。ピアスを母への贈り物だと思い込んだ背景には、母を取られるような寂しさがあったと読めます。
佐々木さん(ささきさん)
あやこの母親の再婚相手です。あやこにピアスを贈った人物で、その贈り物が誤解を生み、物語を動かすきっかけになりました。手紙では、あのピアスがあやこ本人へのプレゼントだったと明かされています。
読者の評価 ー 39ページに泣かされた声と、本編との食い違いに戸惑う声
「短編とは思えない」と語られる密度と、待ち望まれた初収録
もっとも多いのは、39ページとは思えない完成度への称賛です。心に残るボーイ・ミーツ・ガールの傑作と評する声があり、セリフを抑えて表情や海の景色で感情を伝える描き方も高く評価されています。
蝋燭で炙った安全ピンで耳に穴を開ける場面は、痛々しいのに目を離せないという感想が目立ちます。長く単行本未収録だったため、re:SOURCEで読めたこと自体を喜ぶ声も多く寄せられました。映画を観たあとに読んで、引っかかっていた部分が腑に落ちたという人もいます。
本編との整合性に戸惑う声も、読み方を広げる材料に
気になる意見として挙がるのは、本編との食い違いです。リョータが高校で彩子に一目惚れした設定と合わないため、同一人物として読むと違和感があるという声が見られます。
ただ、この戸惑いはそのまま作品の余白にもなっています。原型やパラレルな物語として読む人、同じ名前の二人が別の形で出会い直したと受け止める人など、解釈が分かれること自体を楽しむ読者も少なくありません。読み終えたあとに誰かと話したくなる短編です。
「ピアス」を一番お得に読む方法・まとめ
まとめ ー 取り消せない言葉と、言い直せる名前
「ピアス」は、兄に投げた言葉を3年間取り消せずにいた少年が、一人の少女と出会い、自分の名前を言い直すまでを描いた読切です。わずか39ページに、出会いと喧嘩、告白と別れが収まっています。
「SLAM DUNK」本編の宮城リョータや彩子と同一人物かどうかは、最後まで明かされません。それでも映画「THE FIRST SLAM DUNK」と並べて読むと、海辺の洞窟や左耳のピアスが、ひとつの記憶としてつながって見えてきます。
読む方法は、紙の書籍「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」を手に入れることに限られます。映画の制作資料や井上雄彦さんのロングインタビューと一緒に、海辺の少年の話をぜひ手元に置いてみてください。
購入するなら「Amazon」が手軽!
紙の新品を確実に取り寄せられるルート
「ピアス」は電子書籍化されておらず、読むには収録本「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」を手に入れる必要があります。定価は税込1,980円(2026年10月時点)で、B5判の大きな紙面にカラーページも含めて収められています。映画の制作資料と井上雄彦さんのロングインタビューも同じ1冊で読めるのが魅力です。
「ピアス」を読める本と掲載誌 ー 電子書籍はなく紙のみ
「ピアス」は電子書籍では配信されていません(2026年10月時点)。新品で確実に読めるのは収録本の「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」で、下記のストアで購入できます。
掲載誌のバックナンバーを探す場合
初出の「週刊少年ジャンプ」1998年9号と、再掲の「週刊ヤングジャンプ」2001年49号でも読めます。どちらも古い雑誌のため、フリマアプリや古書店で探すのが現実的です。
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みさき



