
読み終えた瞬間、幸せな溜息をつきながら第1話を開き直してしまう。それほどまでに深い愛を注ぎたくなる「兄だったモノ」が、ついに最終回を迎えました。
復讐と救済という、正反対の場所から始まった二人が、本気で向き合い言葉を交わす姿。それは、自分を偽らずに誰かと向き合う勇気を教えてくれます。
この記事では、一番知りたい「アレ」の正体や、結末で明かされた兄・騎一郎の本当の気持ちについても、ネタバレを含めて丁寧にお伝えします。聖と鹿ノ子、そして大切な友人たちが教えてくれた「優しい世界の歩き方」を、一緒に見ていきましょう。
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「兄だったモノ」あらすじ・ネタバレ
作品名:「兄だったモノ」
作者・原作者:マツダミノル
巻数・話数:9巻(10巻の発売日は未定)・100話で完結
ステータス:完結
連載媒体:GANMA!(ガンマ)
あらすじ ー 愛と復讐が交錯する広島の邂逅
主人公の女子高生・鹿ノ子は、亡き兄・騎一郎の恋人であった美青年・聖のもとを訪れます。広島の地で静かに兄を想う聖は、どこか儚げで、周囲の人間を無自覚に狂わせてしまう不思議な魔性を秘めていました。しかし、鹿ノ子が彼に近づいた本当の理由は、純粋に兄を偲ぶためではありません。
彼女は自分を疎んじてきた両親への激しい復讐心を抱いており、「理解ある妹」を演じることで、両親から兄を奪った聖を、自らの計画の道具として利用しようと画策していました。二人の奇妙な交流が始まる中、鹿ノ子の目には、聖の背後に寄り添う不気味な黒い影が見えていました。
それは生前の兄の姿とは似ても似つきませんが、間違いなく「兄だったモノ」としての執着を纏っていました。聖はこの怪異の存在に気づかないまま、自らの罪悪感に苛まれ、危うい自傷行為を繰り返します。復讐のために近づいたはずの鹿ノ子でしたが、聖の純粋な脆さに触れるうち、その心は「利用」から「救済」へと揺れ動き始めます。
「ネタバレ」あらすじ ー 仮面の裏側に潜む孤独と救済
【ネタバレ注意】深掘りあらすじを見るにはここをタップ
物語が進むにつれ、鹿ノ子自身が抱える過酷な出自が明らかになります。彼女は父の不倫相手の子供として東雲家に引き取られた異母妹であり、義母から虐待を受けながら兄の庇護のもとで育ちました。そして、聖に取り憑いていた「アレ」の正体は、亡き兄の幽霊ではなく、聖自身の深い罪悪感と希死念慮が生み出した「トゥルパ(思考形態)」であることが判明します。
聖は兄の病死を自分のせいだと思い込み、自らを罰するために無意識に怪異を作り出していたのです。一方、本物の騎一郎の魂は、小さな男の子の姿を借りて聖を影から見守り続けていました。広島の地で再会した一行は、騎一郎が遺した日記を通じて、彼が「理想の息子」や「優しい兄」という幾多の仮面を被り、孤独に耐えてきた真実に辿り着きます。
最後には、鹿ノ子が最初で最後の「兄妹喧嘩」を通じて騎一郎と対峙し、彼が聖に遺した歪なまでの愛と呪縛を解き放ちます。聖は鹿ノ子と共に生きることを選び、物語は再生の兆しを纏った、切なくも美しい幕引きを迎えます。しかし、鹿ノ子の「聖を自分に恋させる」という賭けは終わっておらず、二人の歪で愛おしい関係はこれからも続いていくのです。
みさきガチ評価・徹底考察

- 夏目漱石や中原中也を引用し知的快楽を伴う心理サスペンスへと昇華した卓越した構成力
- GANMA!連載陣でも随一の画力で描かれる聖の魔性と「アレ」の異形な静謐さが読者を圧倒する
- 幼少期の性的虐待や肉親の裏切りなど倫理を問うハードな描写が読者の覚悟を強く要求する
「みさきの総評」 ー その仮面の下にある「絶望」を愛せますか?文学が織りなす極限の共依存ミステリ。
文学的暗喩を用いて登場人物の仮面を剥ぎ取る構成は圧巻で、読者の倫理を揺さぶりつつ死者との決別と再生を鮮烈に描き切る文芸的劇画の到達点と呼びたい傑作ですね。
仮面と呪いが織りなす「歪な救済」の全貌
この物語を単なるサイコホラーとして片付けられない理由は、登場人物たちの「狂気」の正体が、誰かを守りたい、あるいは愛されたいという切実な願いの変奏曲だからです。目に見える恐怖の裏側には、常に「ままならない孤独」が横たわっており、読者はその悲しみに共鳴してしまいます。

(GANMA!(ガンマ) https://ganma.jp/web/magazine/anidattamono より引用)
「アレ」は幽霊ではない?聖自身の心が作り出した影
「聖の後ろにいる影は何なのか?」という疑問は、物語最大の関心事でした。この怪異の正体は、亡き兄・騎一郎の怨霊などではなく、聖の強い罪悪感が生み出した「トゥルパ(思考形態)」と呼ばれる存在です。
幼少期の性的虐待や家族の無理解に曝されてきた聖は、自分は幸せになってはいけないという強い自己否定を抱えていました。最愛の騎一郎を「家に縛り付けて殺した」という罪の意識が、自らを罰し、社会から隔離するための「怪物」を実体化させてしまったのです。つまり、聖を追い詰めていたのは他ならぬ自分自身であり、あの影は彼の悲鳴そのものでした。
なぜ評価がバラバラ?「能面」に隠された騎一郎の孤独
「騎一郎がどんな人だったのか、人によって証言が違いすぎる」という点に、多くの読者が困惑したことでしょう。作中で能面に例えられた通り、彼は接する相手によって、自分という存在を完璧に作り替えて演じ分ける「仮面」の達人でした。
母のためには「理想の息子」を、不遇な妹の前では「優しい兄」を、そして恋人にはまた別の顔を見せていたのです。彼は幼い頃、生まれるはずだった妹を亡くした家庭の崩壊を繋ぎ止めるために、自分の「素」を殺して役割を演じるしかありませんでした。誰も本当の自分を見てくれないという絶望を抱えた彼は、自分と同じように「誰かを演じている」聖を見出した時、初めて鏡合わせのような安らぎを感じたのです。
「心中」の真実。最期の呪いに込められた「生きる理由」
「なぜ最後、騎一郎は鹿ノ子を呪うような言葉を遺したのか?」という問いには、震えるような愛が隠されていました。騎一郎は、自分が死ねば希死念慮の強い聖が後を追うことを確信し、彼を現世に繋ぎ止めるための「鎖」を用意したのです。
彼は妹の鹿ノ子に「お前は俺に似ているから、聖に恋をする」という暗示(呪い)をかけ、聖には太宰治の言葉を引用して「夏の衣」を与えました。夏の衣とは、季節外れの着物をもらったからには夏が来るまで死ねないという、ささやかで強力な「生きる口実」のことです。一見すると心中へと誘う残酷な呪いのように見えますが、それは聖が鹿ノ子という新たな愛に触れ、生きる理由を見出すまで時間を稼ぐための、騎一郎なりの最期の救済措置だったと言えます。
登場人物・キャラクター分析
登場人物相関図

コミックス7巻より
主要キャラクター
北角 鹿ノ子(きたかど かのこ)

ミッション系私立女子校に通う高校生で、亡き東雲騎一郎の異母妹という境遇にあります。当初は自分を疎外した両親への復讐を目的として、兄の恋人である中眞聖へ意図的に接近しました。物語の終盤では、兄が遺した日記を通じて家族の真実と向き合い、自らの意志で聖を守り抜く決意を固めています。
中眞 聖(なかま ひじり)

東雲騎一郎の恋人であった美貌の小説家で、儚げな雰囲気を纏っています。幼少期に叔父から受けた性的虐待が原因で深い心の傷を負っており、自己否定感から周囲を破滅させる「毒」のような魔性を有していました。自身の罪悪感が生み出した怪異に苛まれながらも、鹿ノ子との交流を経て「生きる理由」を見出します。
東雲 騎一郎(しののめ きいちろう)

鹿ノ子の異母兄であり、聖の最愛のパートナーであった男性です。生前は家族や友人の前で「理想の人物」を演じ分ける複数の仮面を使い分けていましたが、病による死を悟り、聖を現世に繋ぎ止めるための計画を遺しました。
脇を固める重要人物たち
藤原 頼豪(ふじわら らいごう)

本業のデザイナーの傍らで僧侶を務めており、高い霊能力を駆使して一行を支えます。物語の最終局面で聖を現実世界へ連れ戻す際、右目を失明するという大きな代償を払いました。
南 カンナ(みなみ かんな)

東雲騎一郎の大学時代の元恋人であり、現在は会社員として働いています。当初は鹿ノ子と対立する場面もありましたが、聖を守るという共通目的のもと、最も信頼できる協力者として奔走しました。
西迫 正義(さいさこ まさよし)

聖の高校時代の元恋人で、かつては彼に暴力を振るうなど支配的な関係にありました。彼自身も血の繋がらない姉からの不当な訴えという過去を抱えており、聖への歪んだ執着から物語に深く介入します。
犬上 静真(いぬがみ しずま)
中眞聖を担当する編集者で、彼を神のように崇拝し異常なまでの庇護欲を抱いています。聖を傷つける存在を排除するためには手段を選ばず、西迫を刃物で刺すという凶行に及びました。
鬼頭 虎次郎(きとう こじろう)
聖の熱狂的なファンを公言する現代アーティストであり、神出鬼没な行動で一行を翻弄します。生前の騎一郎と面識があり、彼が隠していた「修羅の一面」を指摘するなど、物語の核心を突く役割を担いました。
読者の評価と反響 ー 「夏の衣」を纏い続けた読者たちの叫び
本編を超えた「後書き」の熱量と文学的称賛
本作の完結に際して、SNSやコメント欄では「夏の衣を失っても、私は一糸纏わぬ姿でミノル先生の次の作品を待ちつづけます」という、別れを惜しむ烈火のような声が溢れました。この「夏の衣」というフレーズは作中の重要な比喩であると同時に、単行本の販促やファンの間での合言葉として深く浸透した特別な言葉です。
特に、アプリ連載版の最後に添えられるマツダミノル先生の「後書き」への信頼は絶大で、読者の間では「後書きが本編という人までいます」と語られるほどの盛り上がりを見せました。古典文学を現代のサスペンスに織りなす構成力には「令和の「虫愛でる姫君」の登場や!」という最大級の賛辞が送られており、単行本発売時には多くの書店員が文芸棚に並べることを選ぶという異例の事態も起きています。
自分の闇を抉られる「痛み」と共鳴
読者が感じたのは、単なるホラーの恐怖ではなく、自分自身の内面にある醜い部分を突きつけられるような鋭い「痛み」でした。「聖くん、メンヘラ製造機ってことやん。わたしもメンヘラ製造機なんで、わかるーって思いましたよね」といった、登場人物の歪な性質を「自分のこと」として受け止める声が数多く寄せられています。
物語の中盤では「「アレ」の、「トルナ」って言葉が、誰に向けてるのか、わからないんですよね」という、正体不明の怪異に対する考察が活発に行われました。当初は読むのが辛いという反応もありましたが、読了した人々の間では「騎一郎、キモいと思っていたんだけど、違ってよかった」という安堵と共に、自分自身の抱える孤独や生きづらさが肯定されたような、深い納得が広がっています。
疑問を解消(Q&A)
作品を読み進める上で、読者が抱きがちな不安や物語の複雑な設定について、事実に基づいた情報をお届けします。正しい情報を整理することで、物語への理解を深める一助となれば幸いです。
みさき「兄だったモノ」を一番お得に読む方法・まとめ
仮面の下の素顔と対峙し、あなただけの「救い」を見つける旅へ
「兄だったモノ」は、死者と生者の境界線が曖昧になるほど研ぎ澄まされた物語です。
マツダミノル先生が描く、今にも消えてしまいそうなほど細く、それでいて意志の強さを感じさせる線の重なりを追うことは、キャラクターたちが抱える心のひだを一枚ずつめくっていく行為に他なりません。特に、中眞聖の瞳に時折宿る、光を拒絶するような透明な暗がりに触れた時、私たちは自分自身の内側にある「誰にも言えない孤独」を見つめ直す機会を与えられることでしょう。解像度の高い公式版で背景の小道具にまで目を凝らすことで、言葉にされない登場人物たちの悲鳴がより鮮明に響いてきます。
本作は、誰かの期待に応えようと自分を押し殺して「役割」を演じている人にこそ、雨上がりのアスファルトのようなしっとりとした余韻と、歪であっても「生きていていい」という静かな肯定を届けてくれるはずです。
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